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☆教員養成大学 再編統合と言う前に 
. [he-forum 2962] 東京新聞社説11/24up11/25.-

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『東京新聞』社説  2001年11月24日付

教員養成大学 再編統合と言う前に

 文部科学省の懇談会が、国立の教育大学や教育学部の再編統合を進めるよう
提言した。学力低下や学級崩壊に対応するためには、教員の質と量を確保する
ほうが先ではないか。

 「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」の報告で注目され
るのは、都道府県ごとに設けられている国立の教育大学や教育学部の再編統合
を提言したことだ。

 子どもの数が減る中で、教員の採用も先細りだ。二〇〇〇年度の国立教育大
学・学部の卒業生で、教職に就けたのは平均34%、少ないところでは20%
そこそこにとどまる。教員になれたといっても、三人に二人は産休や病休など
の代替教員だから、いかに教職が狭き門か分かる。

 ところによっては教育学部といいながら、国際文化や地域政策といった教員
養成以外の課程のほうが目立つところもある。こうした実態から、すべての都
道府県でこれまで通り国立の教育大学、学部を維持しなければならないのか、
という疑問が生じるのは当然かもしれない。

 とはいえ、再編統合論の前提になっているのは、現在の四十人学級である。
基礎学力の向上、進度別のきめ細かい指導、「考える力」の伸長、学級崩壊や
いじめへの対処を考えれば、児童、生徒数は一学級二十人程度が望ましい。

 文部科学省も基礎教科については少人数学習の効果を認めている。少人数学
級を実現するには優れた教員を数多くそろえなければならない。定年後の再雇
用者や非常勤講師ばかりでなく、教育に情熱と専門知識を持つ若い人材を集め
るべきだ。

 分権の時代にふさわしい学校教育は、全国一律の基本教科に加え、それぞれ
の地域の特性を踏まえ、地域の産業や文化の担い手を育てる教育課程を用意し
たい。そのための人材育成を考えると、教育大学、学部があまり地域から遠く
へ離れるのはどんなものか。

 教育学部の役割は教員養成にとどまらない。社会教育や生涯学習の運営、地
域文化施設の経営に当たる職員の養成や研修もある。こうした機能は、これか
ら一層、充実が求められるはずだ。

 教育大学、学部の再編統合を進める前に、近い将来、教員養成に求められる
であろう状況を踏まえ、適正な規模や配置、教育内容について、住民参加で十
分議論してほしい。

 小泉純一郎首相のいう「米百俵」の精神をいまの時代に生かすには、教育、
なかでも子どもと直接かかわる教員の養成は大切だ。なるべく広い視野から考
えてもらいたい。