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独行法反対首都圏ネットワーク

☆教育学部再編 明確な理念と基準を示せ 
. [he-forum 2958] 毎日新聞社説11/23up11/24.-

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『毎日新聞』社説  2001年11月23日付

教育学部再編 明確な理念と基準を示せ


 各都道府県に必ず教員養成大学・学部を置くという体制が、崩れる見通しに
なった。国立教員養成大学・学部の在り方を検討していた文部科学省の懇談会
は22日、「教員養成を全都道府県で行う必要性は薄れつつあり、学生数や教
員数がある程度の規模となるよう再編・統合することが必要」との報告をまと
めた。 教育の基盤である教員養成システムの変革であり影響は大きい。教員
養成機関が消える可能性のある県には、切実な問題だ。だがそれにしては、報
告は漠然としている。再編・統合の理念や基準は、はっきりせず、どのくらい
の数が消えるかはうかがえない。空白県での教員養成や研修の支援体制も見え
てこない。具体化していくにはさらに詰めた議論が必要だ。

 教員養成大学・学部は、今、逆風にさらされている。少子化に伴う新規採用
者の減少で、かつては80%近かった卒業生の教員就職率が、昨年度には34
%にまで落ち込んだ。教員養成課程の定員は、86年の約2万人から、現在は
1万人弱へと半減している。

 さらに、先生の質も問われている。わいせつ行為などの不祥事で処分される
先生が増えた。いじめや不登校、学級崩壊など、教育の現代的な課題に対応で
きないケースも目立つ。子供とのコミュニケーション能力に欠ける先生が少な
くないとの指摘も聞かれる。

 教員養成システムが、時代の変化に対応できていないということだろう。戦
後しばらくは、先生の数をそろえることが先決だった。教科書通り教えられれ
ば何とかなる、という側面があった。

 しかし、成熟社会に入った今、それでは済まない。子供の個性を伸ばし、生
きる力をはぐくむ教育が求められる。それには深い教養と子供の発達過程に応
じた教科教育をする専門性が求められる。従来のシステムのままでは、この新
しい時代に適応した、質の高い先生の養成は難しい。

 報告は、教員養成システムの強化充実の視点から改革に取り組むべきだとし
て、カリキュラムの抜本的見直し、大学院整備などに加えて、教員養成大学・
学部の再編・統合などを提言した。妥当な視点であり、有意義な提言だ。再編・
統合も改革のための選択肢の一つだろう。しかし、気になるのはその理由付け
だ。学生規模の適正化、教員組織の充実などを挙げるのだが、現状ではどこに
支障があり、どの程度の規模なら適切かの分析はない。説得力に欠ける。

 懇談会は、「初めに再編・統合ありき」とはしないとしてスタートした。だ
が途中で、「国立大学の再編・統合を大胆に進める」とし、教員養成系をその
筆頭に掲げた「遠山プラン」が示された。結局、初めに結論ありきになった印
象が否めないのである。

 ところで懇談会の議論は、40人学級の維持を前提にしている。発想を変え、
少人数教育に踏み切ることで先生の採用数を大幅に増やすことも検討すべきだ
ろう。未来を担う子供の教育への投資は、優先度の高い施策であるはずだ。