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☆[産学官連携]「大学発ベンチャーは時代の要請」 
. [he-forum 2957] 読売新聞社説11/24up11/24.-

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『読売新聞』社説  2001年11月24日付

[産学官連携]「大学発ベンチャーは時代の要請」

 将来の新産業の芽を育てる努力を怠っては、日本経済の未来は開けない。

 知的成果が集積する大学や公的研究機関にその芽を求め、効果的に民間に移
転する「産学官連携」の必要性が叫ばれている。

 特に期待されているのが、二十六万人の研究者を擁する大学だ。政府は、三
年間で「大学発ベンチャー」を一千社にすることを目標に掲げている。

 その総決起集会ともいえる「第一回産学官連携サミット」が今週、大学学長
や企業トップ、政府系研究機関の長など三百人余りが集まって都内で開かれた。

 産学官連携については昨年来、環境整備が急速に進みつつある。「助走」を
終えて、「飛躍」を目指す時期にきたことを、関係者は自覚すべきだ。

 支援の一環として文部科学省が、大学発のベンチャー企業立ち上げ資金を助
成するなど、関係府省が来年度予算要求で様々な施策を打ち出している。

 政府は三年前に、連携強化のための技術移転促進法(TLO法)を定めたが、
思うような成果を上げられなかった。

 この教訓を生かし、現場実態を考慮したきめ細かな施策が出てきたことは評
価できる。だが、まだ課題が残っている。

 大学人の本業である教育・研究と技術移転活動の均衡を、どう図るべきか。
後者に偏ると、「社会から指弾を浴びる」という不安が、現場にはある。

 不安を除くために各大学がルールとチェックシステムを作る必要があるが、
取り組みが遅れている。標準的ルールを国が作り促進することも検討すべきだ。

 民間がいくら望んでも、大学内にどんな技術の芽があるか分からなければ連
携は進まない。研究者ごとの研究課題や成果などを網羅したデータベース作り
や、仲介する人材の養成も緊急の課題だ。

 問題の多くは、大学当局の取り組みと国などの支援にかかっているが、大学
人の意識変革も求められている。

 産学連携は、「学問を追求する大学人にとって邪道」とする意識がまだ根強
いというが、本当にそうだろうか。

 ノーベル化学賞受賞が決まった野依良治・名古屋大学大学院教授の特許申請
数は日米欧で二百七十件と、近年の各国受賞者の中でも群を抜いている。

 基礎研究と応用、実用化研究の連携が欠かせない分野が、急速に増えている。
野依教授のケースは、真に有能な研究者は応用面にも強いことを示す好例だ。

 経済力が衰退しては、自由な研究のための資金も思うにまかせなくなる。産
業活性化への協力も、大学の社会貢献の重要な柱であることを再認識したい。