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☆「これからの理系」は第三者評価がカギになる 
.[he-forum 2956] サンデー毎日11/22up11/23 .-

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『サンデー毎日』2001年11月22日

「これからの理系」は第三者評価がカギになる

 国が定める「科学技術基本計画」によると、産官学の連携による科学技術の
発展なしに、明るい日本の将来はないという。とりわけ、不況の影響で企業に
おける研究開発がままならない昨今、大学の研究にかかる期待は実に大きい。
今こそ「理系学部の時代」なのか。

 来年−−2002年の入試でも理系人気は持続し、理系学部は総じて難化す
ると予想されている。特に、難関大でその傾向は顕著だという。

 河合塾・東日本大学情報部の別府正彦部長は分析する。

 「不況の影響で、就職に有利な難関大の理工系学部人気は相変わらず高いも
のがあります。18歳人口の減少がわずかにとどまり、受験者数は昨年並みと
いうことを考え合わせると、上位大の難化傾向は避けられない。いわゆる『遠
山プラン』によるトップ30大学に旧帝大などが選ばれることがほぼ確実視さ
れていることも、難関大人気に拍車をかけています」

 ちなみに、遠山プランの遠山とは遠山敦子・文部科学相のこと。理系を中心
に10の研究分野を国が指定し、それぞれの分野でトップ30に入る研究室を
世界水準に引き上げるため、予算を重点的に振り分けるというものだ。

 研究室単位の指定なので、大学の“格付け”とは基本的に無関係だが、

 「トップ30に選ばれた大学というブランドイメージは実に大きいでしょう」
(前出・別府氏)

 つまり、受験生の志望校選びに少なからず影響を与えると見られているのだ。

 次に、学部ごとの志望動向はどうか。

 基本的に、ここ数年の流れと大きな違いはない。ただ、学科まで掘り下げて
いくと、大きな動きが出始めている。

 卒業後の進路と学科の内容が直結する傾向が強い理工系学部の場合、社会の
動き(就職状況)に敏感に反応して、進路選択する受験生が多い。

▽学力低下に歯止め5教科7科目課す

 「昨年まであれほど高かった情報工学系が、IT不況に引きずられて急落し
ているのが来年入試の大きな特徴です。昨年と比べると1割近く志望者を減ら
しています。一方、人気が高いのは、応用物理や材料系などナノテクノロジー
を学べる分野です」

 と話すのはベネッセコーポレーション高校事業部情報本部の木野内俊典統括
責任者。

 「ナノ(10億分の1)メートル」という原子・分子レベルでの研究は、未
来技術として各産業から大きな注目を集めており、同時に、就職を気にする受
験生の心をくすぐるに十分すぎるほどの魅力を持っているようである。

 その一方で、学力低下を危惧(きぐ)する大学が昨年から始めた入試科目の
増加傾向は来年も続きそう。国立大学協会も、2004年度からセンター試験
で一律5教科7科目を課す方針を打ち出している。

 入試科目を増やすと、志願者は確実に減少する。だが、大学にとって学力低
下に入試科目増で臨むしかないのが現状なのだ。

 例えば、来年、入試科目を増やす私立大は立命館大・理工、拓殖大・工(全
国試験)、芝浦工業大・システム工(環境システムを除く)などがある。これ
までの2科目(英語、数学、物理から選択)から、3科目すべてを必須にする
方式に変更する芝浦工業大の山下修入試課長が、導入の経緯をこう説明する。

 「確かに、志願者の数ということを考えるとリスクのある入試改革です。し
かし、学際的な学問を学ぶシステム工学部で学部教育を円滑に進めるためには、
総合的な学力を持った学生が必要だと判断したからです」

 国公立大でも、九州地区の理系学部や電気通信大、横浜国立大など入試科目
を増やす大学が増えている。ただし、将来的にはスタンダードな入試方式にな
るであろう多数科目入試だが、現時点では多くの大学で志望者が減少している
ようだ。

 なかでも、電気通信大は、これまでセンター試験の受験科目が3教科(英語、
数学、理科)4科目で、私立大志望者も受験可舘だったが、来年から5教科
(英語、数学、理科、国語、社会)7科目に変更し、2次試験でも科目を増や
すため、志望者が半減しているという。

 しかし、だからといって、決してやさしくはならない。「受験倍率は下がり
ますが、多くの教科を学んだ国公立大志望者の争いになるので、決して楽な入
試にはならないでしょう」(前出・木野内氏)

 遠山プランに代表されるように、これからの理系大学の生き残りは研究内容
の第三者評価がカギをにぎる。良質な研究を進めるためには良質な学生が必要
だ。そのためには「入り口」の入試でしっかりと選抜しなければならない。

 これからの理系入試は厳しいものにこそなれ、やさしくはなりそうもない。

【大学通信・井沢 秀】