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☆国立大教員養成系 半数以下に 1県1つの原則転換 埼大は「存続」の方向
. [he-forum 2951] 埼玉新聞11/23up11/23.-

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『埼玉新聞』2001年11月23日付

国立大教員養成系 半数以下に

1県1つの原則転換 埼大は「存続」の方向


 国立の教員養成系大学・学部の在り方について検討していた文部科学省の懇
談会(主査・高倉翔明海大学長)は二十二日、各都道府県に少なくとも一つの
教員養成系を設置してきた原則を転換、再編統合して現在の半数以下とする最
終報告をまとめた。報告は、少子化で教員採用数が減り教員養成系の定員も減
少していることから、統合して一学部の定員を増やして効率化、教育内容の充
実を図るとしている。文科省は来年度中に統合の組み合わせなどの具体的な再
編計画をまとめる予定で、早ければ二〇〇三年度にも統合が実現する。しかし、
教員養成系がなくなる・空白県・は、教員養成機能や教育研究の核を失って地
域の教育力が低下する懸念もあり、関係者の強い反発を招きそうだ。埼玉大学
は、現時点では「教育学部存続」の意向だ。

 報告によると、再編は地域に偏りが出ないよう隣接する二、三の大学・学部
を一つに統合することを想定。現在の四十八学部の総入学定員約一万人は維持
する。教員養成系がなくなる都道府県には、現職教員の研修などのためにサテ
ライト教室を置いたり、遠隔指導したりして対応する。

 教員免許の取得が目的でない課程(ゼロ免課程)は他学部などに組み入れる。

 現在、二百五十九ある付属校については、教員養成課程が残る大学には従来
通り設置。課程がなくなる大学の付属校は、特に存続が必要な場合を除き、統
合先や地方への移管を検討すべきだとした。

 再編の理由について最終報告は1入学定員が減っている現状のままでは教員
養成系が活力を失う2交通網や情報通信技術の発達で、すべての都道府県で教
員養成を行う必要性が薄れた−などとしている。

 最終報告について加藤泰建・埼玉大学副学長は二十二日、「最終報告を見て
いないので懇談会の結論についてコメントできないが、至急検討すべき事柄で
あると考えている」と前置きしながらも、「埼玉大学としてはこれまでも大学
改革を推し進める努力をしてきており、その中で教員養成についても鋭意検討
してきた。埼玉大学は首都圏の大学としてこれまでも実績があり、教育学部の
規模などを勘案すれば、現時点では、引き続き教員養成を担当していきたいと
考えている」と語った。

 生き残りへ独自色

 教員養成系の再編を見越して一部の大学は生き残りをかけ、独自色を前面に
出した教育、研究活動を展開し始めている。一方で、打つ手が見つからず模索
を続ける大学は、危機感を強めている。

 岐阜大教育学部は今年から、現職の小中高教員を主な対象に、県内三カ所を
テレビ会議システムで結んだ「遠隔夜間大学院」を始めた。五年以上前から学
部内に設置した「将来計画委員会」の発案。学校現場の課題を取り上げて実践
的な研究を進め、地域との結び付きを強めるのが狙いだ。

 地元の高校と衛星回線で結び、大学の講義を同時受講できるようにする企画
も進めている。佐々木嘉三学部長は「これまでやってきたことを考えれば生き
残る自信がある」と胸を張る。

 もくろみが外れてしまった大学もある。北海道教育大の四分校の一つ、函館。
今年九月、廃校を心配して、私立大を含む地域の大学関係者や市担当者らが集
まった。

 しかし大学側は「旧師範学校以来の伝統がある。廃校にはならない」と強気。
参加者が「歴史は通用しない。具体策だ」と指摘しても「各分校と本校の(教
員免許の取得を目的としない)ゼロ免課程を全部集めればいい」と答えるにと
どまった。

 二十二日の文科省懇談会の最終報告は「ゼロ免課程は設置しない」と明記、
この希望を打ち砕いた。関係者の一人は「ここまで何もしてこなかったツケだ。
まだ巻き返せるだろうか」と不安を隠さなかった。

 下村哲夫早大教授(教育学)の話 教員が問題を起こすケースが続発してい
るのは、これまでの教員養成の方法に問題があったからであり、力量のある教
員を養成するには、小人数制にしてしっかり指導する方がいい。統合で学部の
規模を大きくし活性化を狙うよりも効果が上がるだろう。統合のメリットは予
算削減という点しかない。教員養成系の大学・学部は女子学生が多く、その親
は娘に地元で学んでもらいたい意向が強い。県外での生活となる学生は金銭面、
精神面の負担が重くなるだけだ。特に小学校の現場では、地元に詳しい教員が
求められる傾向がある。各都道府県に教育学部が残る方が良い。