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☆教員養成大の統合/地域からの視点が欠けている 
. [he-forum 2947] 山陰中央新報社説11/23up11/23.-

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『山陰中央新報』社説  2001年11月23日付

教員養成大の統合/地域からの視点が欠けている

 文部科学省の検討会議が、全国に四十八ある国立の教員養成大・学部の再編・
統合を打ち出した。隣接する複数の大学・学部の統合を「基本とすべき」とし
ており、実現すれば養成大学・学部が半数以下になるとみられている。

 当然ながら、養成学部のなくなる県が出てくる。どの県にも教員養成機関を
置くという明治以来の方針の大転換である。

 少子化に伴う教員採用数の減少で、規模の小さい養成学部が増え、学生の活
力が引き出せなくなっている。養成学部に入りながら教員になれる割合も34
%にとどまる。充実した養成のためには、統合により学部としてふさわしい規
模を確保しようと考えるのは、自然な流れにも見える。

 だが、養成大・学部の機能は、単に教員養成だけにあるわけではない。現職
教員の質を向上させるための大学院などでの研修や、地域の特色に応じたカリ
キュラムづくりなど地域の支援という役割も持っている。

 先生が、大学で学んだだけの知識で、一生通用する時代は終わった。教育環
境が激しく変わる中で、先生も学び続けなければ、子どもの変化についていけ
なくなっている。三年前、教員養成審議会が二次答申で「可能な限り多くの現
職教員に修士レベルの教育機会を」としたのもそうした思いが背景にあるから
だ。

 二次答申は、今後十年間に四十歳未満の15−25%、毎年五千−九千人の
教員に修士の機会を与える試算まで示しているが、養成大・学部は、働きなが
ら学ぶ現職教員再教育の場として重要な機能を担っている。

 地域や学校支援機能も忘れてはならない。

 先ほど東京で教員養成大と都道府県教委の関係者が一堂に会した「教員の資
質向上連絡協議会」が開かれた。大学・学校・教委がどう手を結ぶか、という
テーマで、大学が、学校や地域に支援講師を派遣して授業実践や課題解決にア
ドバイスしているケースや教委と連携したカリキュラムづくりなどの報告を聞
くと、大学の地域支援の動きが次第に広がっていることがよく分かる。

 これまで教員養成学部が、実践と離れた研究に目を奪われ、学校現場や地域
に十分目を向けてこなかったことは厳しく批判されなければならない。だが、
不登校、学級崩壊など学校現場が抱える困難な課題を考えれば、養成大・学部
を地域を支える資源として再生させなければならない。

 教委・学校・大学が手を結ぶためには、三者が近くに存在して日常的に支え
合うことが不可欠だ。検討会議は、養成大・学部がなくなる大学には、一般学
部での教員免許取得や教委との連携のため「教職センター」を置く、としてい
るが、十分な地域支援機能を想定しているとも思えない。

 教育を取り巻く今日的状況を十分踏まえたというよりは「はじめに再編・統
合ありき」の議論と言わざるを得ない。何よりも地域からの視点が欠けている。
養成機能の統合という理由だけで、地域支援や現職教員の研修機能まではぎ取
るのは乱暴すぎる。

 地域の教育支援機能をつぶすようなことでは将来に禍根を残す。教員の質向
上への投資は、未来を担う子どもへの投資である。少子化を教育条件改善のチャ
ンスと考る心意気を望みたい。