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☆弘大教育学部、生き残りへ危機感 
. [he-forum 2912] 東奥日報11/19-up11/19 .-

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『東奥日報』2001年11月19日付

 弘大教育学部、生き残りへ危機感

 弘前大学教育学部が揺れている。国立大の統合・再編を柱とした文部科学省
の方針(遠山プラン)に加え、文科省の懇談会は今月、一県一教育大(学部)
の大原則を崩し、再編を進めるという最終報告案をまとめたからだ。学部内で
は「北東北で残るのは、弘大か、岩手大か、秋田大か」「統合されたら付属学
校はどうなるのか」とさまざまな憶測、思惑、危機感が飛び交う。学部の存亡
は地域の教育、文化、経済に影響を与えるだけに今後、弘大を含めた各大学、
各県が水面下で激しい綱引きをするのは必至だ。

 懇談会の最終報告案は、近隣する複数の都道府県を単位として学部単位で統
合することを原則としている。少子化に伴う教員採用の減少傾向が背景にある。

 具体的な案はまだ示されていないが、北東北で統合・再編案を当てはめた場
合、弘大、岩手大、秋田大の三大学が統合の対象となりそうだ。

 「あらゆる面で不便を来す」と小澤熹教育学部長は報告案に強く反対する。
「地域から学部がなくなれば、郷土に根差した教育や研究ができなくなる。高
校生の進学の選択幅も狭まる」と強調。

 約一万五千人の卒業生が在籍する弘大教育学部同窓会の木村清之助会長は
「教育のプロ養成という点で、学部の存在は大きい。統合は慎重に考えてほし
い」と話す。

 報告案によると、教員養成学部には付属学校を置くが、そのほかは「原則不
必要」。つまり学部がなくなると、特別の理由がない限り付属幼稚園、付属小・
中学校、付属養護学校もなくなる。

 付属小の斎藤捷一校長は「付属学校は今後一層、ユニークできめ細やかな新
しい教育を進めていく。地域には絶対メリットがある」と学校存続の必要性を
訴えると同時に危機感もにじませた。

 一方で弘前市のある教育関係者は「付属学校がなくなっても、市内の公立学
校でも十分対応できる。ダイナミックに学部を統廃合した方が、学生は他地域
の文化を学ぶことができる」とも。

 学内では「統廃合は時代の流れ」という意識もあり、学内の検討委員会で統
合を視野に協議せざるを得なくなっている。一部では「教育学部を統廃合する
ことで遠山プランを乗り切ろう」という論調もあるという。

 現実的に弘大教育学部は北東北の中心校として残るのか−。三大学の学部定
員は秋田大二百九十人、岩手二百五十人、弘大二百四十人。規模から言えば弘
大が一番不利。しかし、定員のうち生涯教育課程などのいわゆる「新課程」を
除いた教員養成課程の定員を見ると、弘大が百七十人、岩手大百六十人、秋田
大百人と逆転する。小澤学部長は「弘大には東北で唯一の養護教諭養成課程が
ある。弘大が残る可能性は十分ある」と強気だ。

 報告案の予定では、文科省は二〇〇二年度中にも再編計画を確定する。統合
によって学部の教官が大移動し、地域の教育、経済、文化に影響を与えること
は間違いない。それだけに「政治など水面下で動きが始まるのは確実。これか
らが大変だ」。弘大幹部が声を潜めて言った。

(弘前支社・菊谷賢)