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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学長への要請文 
.[he-forum 2871] 国立大学長への要望文-up11/14-
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he-forum ML 各位

明日の11.14国大協総会要請行動の際に、以下の個人的要望文を会場入口に置く
ことを、主催者である東京大学職員組合が印刷と共にお引き受けくださいました。
深く感謝致します。

また、全国ネットが公表した文部科学省交渉記録*2は、大学の諸問題に対する文部科
学省の本音を明らかにしたもので、驚くべき内容が数多く含まれています。国立大学
予算が多すぎるというのは財務省だけでなく文部科学省自身がそう思っている、とい
うことは言葉を失います。また、ユネスコの「21世紀の高等教育に向けての世界宣
言:展望と行動」を後進国のためのものと文部科学省が考えていることも驚くような
ことです。こういったことを明らかにされた交渉に臨んだ方々のご奮闘に感謝したい
と思います。

14/15の国大協総会で、国大協が「自主性と自律性」を持って行動し始めること
を願っています。

辻下 徹
TEL and FAX 011-706-3823
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst
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                        2001年11月14日

国立大学学長の皆さま

                    北海道大学大学院理学研究科教授
                            辻下 徹         
                   tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp


 国立大学法人化問題は最終的な局面を迎えつつあるように見えますが、時流
を前提とした議論に終始するのではなく、以下の点をご一考頂き、大学のある
べき姿を論じる使命を思い出してくださいますようお願い致します。大学では、
次世代も次々世代も、学び、教え、研究する場であることを忘れないようにお
願い致します。

【高等教育予算削減が不可避の法人化】

 10月29日の国立大学協会臨時総会で承認された意見書に「このような制
度が期待通りの効果をあげるためには、国費投入総額を現在より相当程度大き
くすることが不可欠である」という一節があります。
 ご存知のように、財務省は国立大学法人化を大学予算削減の機会ととらえ、
しかも大規模な削減ができないことについて不満を述べています*1。また、驚
くべきことですが、国立大学所管省自身が国立大学予算は多すぎると考えてい
ます*2。
 このような政府内の現状から判断すれば、法人化が国立大学予算の削減を招
くことは避けられず、法人化が「期待通りの効果」をあげ得ないことは、既に
明らかになているのではないでしょうか。この状況で敢えて国費投入の拡大を
主要な必要条件として主張されるのを知りますと、裏取引があるのではないか
と心配になります。国費投入と引き換えに種々の譲歩を裏で行うことのないよ
うに強くお願い致します。
 また、旧帝大系の学長の方々に特にお願いしたいことは、ご自分の大学の予
算増加ではなく、国立大学全体の予算増加を第一に考えてくださることです。


【世間の国立大学批判への姿勢】

「法人化で国立大学を懲らしめる」という視点が世間で流布しているように思
われます。このことは、国立大学法人化についての一般の認識が

(a)国立大学法人化は国立大学に深刻なダメージを与えるが、
(b)「院生いじめの教員」「何もしない教員」放置への懲罰として仕方がない。

という内容から成っていることを示しています。(a)の認識が広がっている
とすれば「大学改革のための法人化」という体裁を作ることに腐心することは
国立大学の信用を甚だしく落とすことになるでしょうし、国立大学自らが法人
化を選んだことになれば、将来に禍根を残すでしょう。

 1999年以来国立大学協会が主張してきた必要条件が満たされないことが
確実となった以上、いま国立大学に求められていることは、法人化を拒否し社
会からの(b)のような種々の批判に対し、具体的に取組む決意を表明するこ
とではないでしょうか。批判を一つ一つ調査検討し、言いがかりに過ぎない批
判に対しては説得力のある反論を展開し、内容ある批判に対しては非を認め具
体的な対処を提案していくことを社会は期待しているのではないでしょうか。


【日本社会がいま必要としている大学改革】

 しかし、世論の批判に対処するるだけで良いというものではありません。日
本社会が必要としている大学改革は何でしょうか。大学で学ぶ学生、大学で教
育と研究に携わる者の意欲を高めることであり、教育基本法に明記されている
ように、国民全体に対して直接に責任を負った教育が大学で行われるようにす
ることです。

 そのためには、国家予算配分の役割を利用した行政指導により大学の自発性
と自律性が抑えられている状況を打破することが急務ではないでしょうか。税
金の中から教育にどれだけ回すかは省庁の間の力関係が決めるべきものではあ
りません。広汎な国民的議論を喚起して「高等教育予算法」を超党派で立法し、
国公私立大学全体に財政的余裕を与えることを目指すべきです。欧米諸国で多
く行なわれているように、大学予算配分作業を行政から独立させることも効果
が大きいのではないでしょうか。

 こういった施策が行われれば、大学は、真の自律性を獲得し、独自の知見と
知的資源を活かして国民全体に対する直接的な責任を果たすことができるよう
になるだけでなく、国公私の大学全体が、財政的な余裕を背景として、喜びの
ある競争を展開し互いに刺激しあって、各大学の独自の個性を伸ばし進化し続
け、大学社会が百花繚乱の野となって活性化するのではないでしょうか。

 小子化の原因は解明されていませんが、高等教育費高騰も原因の一つである
という指摘もあります。誰でもいつでも経済的な負担なしに大学で学べるよう
な社会が来れば、小子化にも歯止めがかかり日本社会は再び未来に希望を持つ
ことができるようになって真の活気を取り戻すのではないでしょうか。

 国立大学協会は、こういったことを実現することを使命の一つとして認識し、
時流に流されることなく、正しい方向に向けて歩み始めてください。

(註)
*1 財政制度等審議会 財政制度分科会 歳出合理化部会及び財政構造改革部
会合同部会(第3回)議事録 2001.10.10 
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/a10-zaiseishingikai.html

 桑原主計官「財務的な面で、独立行政法人と国立大学法人について、財務と
いうところで、特に国立大学法人だから違ってくるというようなことはないと
思います。・・・・結局、一生懸命努力したところについては、ある程度イン
センティブは必要ですけれども、要するに、運営費交付金というのは、最後の
しりを単に垂れ流すのではなくて、もうこれだけしか、あなたにはあげません
よと、基本的には固定でやって、あとは自由にしなさいという制度でございま
すので、そういうところを突破口にして、財政負担をできるだけ縮小するよう
な方向で運営はしていきたいということでございますけれども、制度的に、今
よりずっと減らせる制度にできるかどうかというと、なかなかそこは難しいと
思います。

 ですから、とりあえず運営費交付金という形をつくらざるを得ないとは思い
ますけれども、それを一体どういう形で、どういう額で出していくのかという
ところが、今後の勝負になってくるのだと思います。それについては、今後の
議論でございます。」

*2 「独立行政法人阻止全国ネットワーク」による文部科学省交渉(10/5)
記録
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/meeting105/koushou.html
文部科学省「本当のことを言うと金額的には結構デカイし、それから私学とい
うことを考えると、日本の特殊な大学のシステムのことを考えると、実は国立
大学には多額のお金が落ちているんですよということも、先生方には分かって
ほしい。外に向かっては、言いませんけど。」
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http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/b14-tjst-kdk.html