☆国大協は「意見」内容の再検討を!! .
[he-forum 2860] 北大職組、国大協「意見」批判-up11/12-
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北大教職員組合委員長の神沼公三郎です。
北大職組は、さる10月29日づけで国大協が文科省に提出した「意見」を批判し、11
月14日に開催される国大協総会でその再検討を行うよう要求する見解をまとめました
ので、ここにご案内いたします。
(ここから)********************************
2001年11月12日
国大協は「意見」内容の再検討を!!
北海道大学教職員組合
文部科学省の「調査検討会議」が2001年9月27日に公表した「新しい『国立大学法
人』像について(中間報告)」(以下、「中間報告」)に関し、国立大学協会(国大
協)は同年10月29日づけで文科省に「意見」(以下、「意見」)を提出した。「意見」
は「大学の裁量性や創意工夫の余地を拡大する点で、国立大学法人のありうべき方向
を示すものとして評価することができる。」とひとこと述べたあとで、「しかし、な
お、検討を要するいくつかの重要な問題点が残されていると考える。」として具体的
問題点の記述に多くの紙幅を費やし、「中間報告」に一定の批判を加えている。
「意見」のなかで注目されるのは、財政的基盤の充実を主張している点である。そ
もそも国立大学の法人化問題が国の行政改革のなかから出てきた事実を憂慮しつつ、
大学における研究・教育の発展には基盤的経費や国費投入総額の維持、拡大が不可欠
であると強調している。「意見」が「国際競争」や「効率化」という市場原理を前提
にして大学財政を論じている点、市場原理を持ち込む際の悪しきテコになる評価と予
算配分の連動を事実上、肯定している点にはいささかも同意できないが、このような
財政的基盤の充実要求それ自体は国大協として当然の意思表示であるといえる。
1.国大協の自己矛盾
ところで、「調査検討会議」の責任者はほかでもない国大協会長である。そのため
今回、同一人物が国大協の立場から、「調査検討会議」における自分に批判的意見を
述べるという、何とも奇妙な光景が出現することになった。これは国大協の自己矛盾
を露呈したものであり、その原因は2000年6月の国大協総会で「調査検討会議」への
参加を「確認」したことに求められる。ただこの自己矛盾は、一面では、大学破壊と
もいえる「中間報告」の内容に対して国大協内部に批判的意見が少なからず存在する
状況の反映であるともいえよう。
2.国大協「意見」の問題点
「意見」はさまざまな問題点を持っているが、まず何よりも学問の自由・大学の自
治という大学存立の基本理念に何らふれていない態度が問題である。いやむしろ、中
期目標の策定手続きに関わって「国民を代表して政府がその国費の有意義・有効な使
用について、国立大学に関与するのは当然である。」と述べているように、行政権力
の統制、介入を認め、学問の自由・大学の自治を進んで放棄しようとしている。具体
的には、中期目標は大学が「作成」し、それを文部科学大臣が「認可」するとして、
「中間報告」とは異なる形態を提起している。この主張は一見、独立行政法人通則法
の枠組みを否定しているかのようだが、「認可」には「文部科学大臣が個別大学の意
思を全体的・部分的に認めたり否定したりする」ことが含まれるとの理解を示し、通
則法の適用を事実上、認める態度を明らかにしている。
また「意見」は、現在の国立大学に普遍的に見られる学長選挙、部局長等選挙の民
主的形態をはっきり否定するとともに、「中間報告」と同じくトップダウン形式の学
内運営を推奨し、大学の民主主義を自ら葬り去ろうとしている。それとともに、「中
間報告」の意図する役員のあり方はトップダウン体制と関連して大いに問題があり、
あるいは文科省の天下りが就任する可能性が強いためこれまた重大な問題を含むのに、
「意見」は沈黙したままである。
評価について「意見」は、新たに設立予定の国立大学評価委員会の基本性格に不透
明感を表明しているものの、同評価委員会が文科省内に設置されるという根本的な問
題には何の疑問符も示していない。すでに設置されている大学評価・学位授与機構に
関しては、組織廃止も含めてその存立意義が再検討されるべきであるのに、そのこと
には全く言及していない。
「意見」は、「中間報告」において未解決となった職員の身分に関してわかりづら
い解釈を披瀝しているが、なぜはっきりと公務員型を主張しないのか。教育公務員特
例法については何も述べていないが、なぜその適用継続を主張しないのか。
3.“自律的”な組織・国大協
「意見」は、学長、部局長等の選考に当たっては、現在のように多くの関係教官が
参加する民主的選挙を否定し、評議会、教授会などごく限られた範囲での選考とその
手続きの法定化を主張したうえで、次のとおり各大学に異常ともいえるガイドライン
の提示を行っている。
「各大学では、この枠組みに従って、具体の選考において教員による投票を行う場
合であっても投票参加者の範囲について点検するほか、リーダーシップのある部局長
を選ぶための選考方法、学外専門家の意見を採り入れるなど広い視野で優れた教員を
選ぶための選考方法、任期制・公募制など、学術研究と高等教育の高度化・改善・活
性化のための制度設計に努めるべきである。」
国大協がうちに向かって(各大学に対して)これほど強い調子で規制措置を提起し
ようとは、国大協とは何と“自律的”な組織であることか。ちなみに『広辞苑』によ
ると、「自律」の第一義的な意味は「自分で自分の行為を規制すること」である。
なお国大協「会則」をみると、国大協の目的は「協会は、国立大学相互の緊密な連
絡と協力をはかることにより、その振興に寄与することを目的とする。」(第4条)
と定められている。「会則」は単に「国立大学相互の緊密な連絡と協力をはかる」趣
旨を述べているだけなので、今回、提示したガイドラインは「会則」の範囲を逸脱し
ているといわなければならない。あるいは、そもそもガイドラインを示すこと自体が
「会則」に違反しているのではないだろうか。
いずれにしても国大協は、“自律的”なガイドラインによって各大学を拘束しては
ならない。それよりも国大協は、各大学が「遠山プラン」以降の文科省による異常な
締めつけから脱して、長期的展望に立った自由な発想に基づき国立大学の独法化問題
を検討できるよう、「国立大学相互の緊密な連絡と協力をはかる」ことに努めるべき
である。11月14日、15日の総会において議論を深め、「意見」に見られる大学の自治
放棄の姿勢を全面的にあらためることを国大協に強く要求する。
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神沼 公三郎(かぬま きんざぶろう)
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
森林圏ステーション
〒060-0809 札幌市北区北9条西9丁目
Tel.011-706-3853(ダイヤル・イン)
Fax.011-706-3450
E-mail:kanuma@fsc.hokudai.ac.jp
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*Mailアドレスが変更になり、上記のとおりとな
りました。
*2001年4月1日づけで農学部、理学部、水産学
部などの計10施設が合体して、上の組織が発足
しました。