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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大法人化 地域に密着した将来像を 
. [he-forum 2848] 徳島新聞社説11/07−うp11・8.-

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『徳島新聞』社説  2001年11月7日付

 国立大法人化 地域に密着した将来像を

 東京水産大と東京商船大、筑波大と図書館情報大、四国では香川大と香川医
科大、高知大と高知医科大など、国立大の再編・統合計画が進んでいる。

 国立大の法人化に向けて、組織や運営制度を検討している文部科学省の調査
検討会議が、学科設置改廃の自由化など大学の裁量の拡大や大学間競争を促す
などの中間報告をまとめており、国立大の再編・統合が現実味を帯びてきた。
こうした動きが、大学独自の運営や教育、研究環境を充実、発展させるのであ
れば歓迎すべき改革である。

 だが、報告の柱の一つである評価制度の導入には、文科省の管理が強まり、
財政効率が優先され、地方大学の切り捨てにつながる恐れがある。

 徳島大や鳴門教育大など、地方の大学は地域と密接に結びつき、果たしてき
た功績も大きい。大学側には、国任せではなく、自ら知恵を絞って、地域に密
着した改革案の提示を望みたい。

 調査検討会議は年度内に最終案をまとめる。十分な論議を重ね、将来の新し
い大学像を描いてもらいたい。

 中間報告は、法人化案の柱として▽学長を補佐する役員に学外者を登用する
▽教員に任期制や公募制を導入する▽各大学の目標達成度を文科省の「国立大
評価委員会」が評価し、交付金算定に反映する−などを挙げている。

 いずれも各分野への競争原理の導入を眼目とし、外部の人材によって組織を
活性化することを期待しているし、能力主義や査定を厳しくすることで横並び
意識からの脱却を狙っている。兼業や外部資金の寄付を受けやすくするなどの
大幅な規制緩和も特徴だ。

 背景には、少子化に伴う学生数の激減、公・私立大の拡充がある。遠山敦子
文科相がまとめた、各分野のトップ三十大学に予算を重点配分し「一県一大学」
の原則にこだわらない国立大の大幅削減案「遠山プラン」も再編・統合の流れ
に拍車を掛けている。

 しかし、法人化も遠山プランも、国立大の民営化に積極的な小泉純一郎首相
の指示で、行政のスリム化の一環として出てきた論議である。大学自体の危機
感から生まれたものではない。

 評価制度も問題がある。予算配分権を持つ文科省の委員会で、公平な大学評
価が可能だろうか。地方大学に、トップ三十大学の目先の成果が優遇されはし
ないか、との懸念が広がるのも当然だ。競争原理の導入や効率化に異論はない
が、それだけでは大学の将来像は描き切れない。大学は人材育成と基礎研究こ
そ保障されるべきだろう。

 鳴門教育大は、香川、愛媛、高知の三大学教育学部を統合した「四国教育大
学」構想を打ち出している。このほか▽徳島大と統合▽兵庫、上越両教育大と
統合−などの案もある。

 鳴門教育大は、徳島大教育学部を母体に創設されて二十年。近年、学際的な
研究の広がりにとどまらず、徳島大総合科学部との単位互換協定が結ばれるな
ど相互協力が深まっている。これまで地域とどうかかわり機能してきたか、あ
らためて見直す必要があろう。

 県民の間には、徳島大に経済学部、法学部、文学部など文化系学部創設を望
む声は根強い。大学の転換期を機に、法人化の将来像と併せて検討してもらい
たい重要課題である。

 国立大の存在は重い。関係者は地域に密着した将来像を一丸となって練り上
げてほしい。県民も注目している。