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☆『朝日新聞』滋賀版  2001年10月22日付 
. [he-forum 2823] 朝日新聞滋賀版10/22-11/6up.-

『朝日新聞』滋賀版  2001年10月22日付

 国立大学改革
 
 国立大学も改善に取り組んできたが、国民の期待に十分こたえているとはい
えず、産業界から批判も出ている。大学の構造改革なくして、日本経済の再生、
発展はない。

(6月14日、国立大学長会議で遠山敦子文部科学相)


 「学長になって3カ月になるが、再編問題で私の研究は3年遅れた」。滋賀
大の宮本憲一学長(71)は、そうぼやいた。

 7月に就任した宮本学長を多忙にさせたのは、文部科学省が6月に発表した
「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)だ。国立大の再編・統合の大胆な推
進▽民間的発想の経営手法の導入▽第三者評価による競争原理の導入を柱に据
え、優れた実績をあげた国公私立30大学に資金を重点配分して国際競争力を
育てる「トップ30大学」の方針も盛り込んでいる。

 これを受けて、大津市の滋賀大教育学部で8月3日、宮本学長は滋賀医大の
吉川隆一学長(62)と両大学統合の基本方針を話し合う「統合推進協議会」
の設置に合意した。協議会はこれまで3回開かれ、統合した場合の大学の名称、
本部の場所、教養課程の問題などで交渉を続けている。

 ◆   ◆

 滋賀大は49年に誕生した。彦根市に経済学部、大津市に教育学部があり、
博士号を持つ教員は70人を超える。経済学部は産学共同研究で地域経済に協
力し、教育学部も県内の教員養成や児童・生徒への環境教育に努めてきた。
「一県一医大」の国策で74年に開学した滋賀医大(大津市)も地域医療に貢
献してきた。

 現在、全国99の国立大のうち、両大学を含む16大学1短大の8組が統合
に向けて協議中だ。別の12大学6組はすでに統合に合意している。

 国の再編・統合方針に対し、宮本学長は「強制的な基準で再編するのは問題」
と批判的だが、吉川学長は「方向としては賛成」と受け止め方に違いを見せる。
だが、両学長とも「トップ30大学」には反対の立場だ。統合・再編後の高等
教育の将来像が不明確だと不安も感じている。

 滋賀大は11月13日、滋賀医大は同17日、それぞれ全学フォーラムを開
き、教職員や学生に再編問題を説明し、意見を聞いていく予定だ。


再編は自主性に任すべき 滋賀大・宮本憲一学長


 −−再編問題をどう受け止めますか。

 「国が一律に再編を決めるのでなく、大学の自主性に任せるべきだ」

 −−「トップ30大学」の方針については。

 「文科系の研究でどうベスト30を評価するのか。不可能な話だと思う。個々
の教官を評価するのか、組織を評価するのかも明確でない。大学の研究とは何
かが分かっていない人の発想だと思う」

 −−国の大学改革の動きについては。

 「大学の研究の中には基礎研究(天文学、物理学、生物学、民族学など)の
ように、短期的な実利がなくても創造的な技術開発のために重要なものがある。
財政や合理化だけの理由で再編を考えるべきではない」

高等教育に投資を 吉川隆一・滋賀医大学長

 −−「トップ30大学」をどう思いますか。

 「国はすでに一部の大学や学部、講座に集中的な資金投入をしている。トッ
プ30に配分する予算は人材育成や教官の増員に充てるべきだ」

 −−「トップ30」に入りそうな分野は。

 「糖尿病や高血圧といった生活習慣病を予防する福祉保健医学などは世界的
レベルの研究をしていると思う」

 −−大学改革の動きをどう見ていますか。

 「高等教育や研究に対する国の投資額は国内総生産(GDP)比でみると、
欧米諸国より低い。国際競争力のある高等教育を目指すなら、『米百俵』の精
神からしても、今こそ将来のために高等教育に投資すべきではないだろうか