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独行法反対首都圏ネットワーク

社説=国立大法人化 国民的論議を深めて 
[he-forum 2821] 信濃毎日新聞社説11/05-115up. .-

『信濃毎日新聞』社説  2001年11月5日付

社説=国立大法人化 国民的論議を深めて

 国立大学が大きな転機を迎えている。まず法人化に向け、実施する場合の機
構、運営について文部科学省の調査検討会議が中間報告をまとめた。並行して
再編・統合を促す方針も示されている。将来像をどう描くか、幅広く論議を重
ねるときだ。

 中間報告は、大学の裁量を広げる一方で競争を促した。広く意見を求め、年
度内に最終報告をまとめる。国立大学協会は先週、国の支出削減などを懸念す
る意見書を出した。

 大学改革は急務だ。少子化により二〇〇九年には「大学全入時代」が来る見
通しである。各大学ともこれまで以上に個性化、活性化に力を注がなくてはな
らない。国際競争が激しさを増すなかで教育研究に一段と磨きをかける努力も
求められる。

 国の組織から離れることで大学の自由度が高まり、改革が進むのであれば、
法人化はメリットがある。心配なのは、研究が効率一辺倒に傾くなどひずみを
生じないかだ。最終報告に向け、なお詰める点は多い。

 例えば、中間報告では文部科学省に評価委員会を設け、評価結果を国からの
資金配分に反映させることになっている。大学の自律性をかえって損なわない
か、吟味を要する。

 国立大をめぐっては文部科学省の「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)
も六月に示された。再編・統合による大学の大幅削減や世界に通用する「トッ
プ三十大学」の育成などが柱だ。法人化と合わせ、国民的論議を深めなければ
ならない。

 吟味したい一つは、行財政改革との兼ね合いだ。法人化にしても遠山プラン
にしても大学をどうするかという観点から出てきた方針では必ずしもない。行
政スリム化の狙いで論議が始まったり、経済財政諮問会議に対して示された経
緯がある。

 大学の活動は、単に効率化や経費削減といった発想だけでは割り切れない。
高等教育に対する日本の財政支出は欧米に比べ、見劣りする。財政難ではあれ、
大学への予算はむしろ充実させる考え方もあり得る。

 もう一つ、地方の国立大の重みである。地域の活力にもかかわる。都市部の
大学などに対し不利な状況を生じ、格差が広がるようでは困る。法人化するな
ら、地域貢献なども適切に評価する仕組みが必要である。

 大学の側も存在感を高めなくてはならない。一つには地域密着がカギになる。
信州大学は授業の一般開放など、既にさまざまな試みを重ねている。地域と大
学の連携を深め、確かな道筋をつけていきたい。