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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大改革にもっと注目を 
. [he-forum 2815] 東奥日報社説11/02.-up11/3
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『東奥日報』社説  2001年11月2日付

 国立大改革にもっと注目を

 国立大学、とりわけ地方の大学に、再編・統合の波が押し寄せようとしてい
る。本県唯一の国立である弘前大学も、例外ではあり得ないだろう。

 十月中旬、重要な動きが報じられた。教育学部など、国立の教員養成系大学
の再編について検討している文部科学省の懇談会が「近隣都道府県の複数の大
学・学部を統合する」方針を固めたという。

 当面、具体名は出ないようだが「一県に最低一教育大(学部)」の大原則が
崩れることになる。

 先日開かれた弘前大学運営諮問会議の席上、吉田豊学長は「すぐ目前の大き
な問題」という認識を示し、県教委などとも相談していきたい旨、述べている。

 また、再編・統合の全体の流れに対しては、「荒波に乗り出すような状況。
地域との連携が大切」と、率直に語っている。

 まさに、大学だけでなく、弘前市、あるいは県民全体が関心を持つべき問題
だと訴えたい。大学が地元にその都度の情報を伝えるなど、緊密な連携を求め
たい。

 以前から論議されてきた法人化は、ほぼ固まりつつあるようだ。一般の独立
行政法人とは少し異なる“国立大学法人”で、早ければ二〇〇四年度にも誕生、
という日程が浮上している。

 そして次は、いよいよ大学の大幅な削減なのだという。文科省が六月に提示
した「国立大学の構造改革の方針」のことである。遠山敦子大臣が、陣頭に立っ
てまとめたとされ、通称「遠山プラン」。報道によると、小泉純一郎首相の厳
しい叱責(しっせき)を受け、急きょ作成した経緯があるという。

 硬直化し非効率的と指摘される国立大学の運営に、改革の必要なことは大方
が認めている。

 しかし今回は、高等教育でさえも「聖域」ではあり得ない−という、小泉内
閣の金看板の誇示といった側面も否定できまい。

 それだけに唐突であり、「教育理念」より「経済効率」に偏り過ぎとの批判
も、理解できる。

 プランの眼目は、親方日の丸的発想の排除と競争原理の導入である。それに
より国立大九十九校の選別を図り、再編・統合を大胆に進めるとしている。

 「一県一国立大も未来永劫(えいごう)ではない」(工藤智規・文科省高等
教育局長)などの過激発言も飛び出して、全国の国立大学に動揺が広がった。

 特に国公私立を通じて「トップ30」大学を、世界最高水準の大学に育成する
という構想は、極めて刺激的、挑発的だった。

 「他大学の切り捨て」「地方大学の教育研究レベルが低下する」と反発を呼
んだ。弘前大でも「虚を突かれた」と批判が噴出した。

 と同時に、大学の存在価値を高めるさまざまな努力が行なわれている。今後
は外部評価が一層重要になってくる。その向上を目指して、従来から改善も進
めてきた。

 医学部が教員任期制や“逆通信簿”を導入。全学で授業評価アンケートを実
施している。

 大学院の設置にも積極的で、来年度、東北では東北大に次ぐ二番目の文系院
となる「文理融合型」博士課程など開設の見込みだ。

 九月の定例記者会見で吉田学長は、「再編統合も視野に入れて、岩手、秋田
大学との協力体制を検討する」と語った。

 「統合せず」を前提に三大学が連携の話し合いを進めていたのだが、統合も
視野に入れて検討せざるを得なくなったのだという。

 ただし運営諮問会議の席上、遠山プランのいう「統合」が、大学をそっくり
移転する意味ではないことを説明。「弘前大学はなくならない。さらに良い大
学にしていきたい」と答えている。

 とはいえ、何らかの影響は避けられないだろう。地元弘前など真剣に考えて
おくべきと望みたい。