『日本経済新聞』2001年11月21日付
来れ学生 策競う大学、ネットで出願、通学用タクシー手配――少子化進み生き残り探る
少子化を背景に、大学の学生獲得競争が過熱している。インターネットのホームページで入試の出願を受け付けるサービスが広がっているほか、ファクスで募集要項を受け付けるケースも。極端な例では、新入生全員にパソコンを無償で配布したり、学生の通学の便宜を図るためジャンボタクシーをチャーターする大学が登場。受験生を持つ親からは「肝心の授業のカリキュラムの充実にも力を入れて」との声が聞こえそうだ。
名古屋商科大学は昨年からインターネットで出願の受け付けを始めた。大学のホームページの願書に住所や出身高校など必要事項を記入して送信。受験料の振り込みなどが確認された後、受験票が届く仕組みだ。「夜間や締め切り直前での応募が可能になるほか、地方の受験生の便宜を図ることにもつながる」(同大)という。さらに銀行のほか最寄りのコンビニエンスストアで受験料を支払えるようにした。
出願前に、大学を訪れて施設や教育内容などを知ってもらう「オープンキャンパス」も活発だ。愛知県東海市に来春、開校する星城大学では高校生や保護者らを対象に、これまでに計6回のオープンキャンパスを開催。模擬講習のほか、個別相談や寮の見学なども実施し、合わせて1500人が参加したという。
国公立大も受験生向けのサービスに力を入れている。京都教育大は「センター試験の結果次第で志願校を変更する受験生もいる。従来の郵送による申し込み方法だと、時間がかかる」という理由で、昨年の入試から募集要項の申し込みをファクスで受け付けるようになった。奈良女子大ではファクスのほか、電子メールでもOKだ。
大学関連の出版物を扱う東京・神田神保町の書店「大学書館」に行けば、一部の国公立大の募集要項が無料で手に入るようになった。小池正範社長は「独立行政法人化論議などの影響で、サービスの一環として募集要項を提供してくれるケースが増えた」と話す。
一方、文部科学省が先月まとめた学校法人の経営に関する調査では、生き残りをかけたなりふり構わぬ一部の私立大の実例が並んだ。いずれも大学名は公表していないが、特別講師に芸能リポーターを招いて話題づくりに努めたり、新入生全員にパソコンを無償配布する大学や、公立高校の校長OBを採用し、同窓会などのツテを頼りに募集活動を展開する短大も。
ゼミ合宿、OB会などのため海外の提携施設も利用できるリゾートホテルの会員権を取得するなどの例もあった。