☆国立大学改革 地域に根差した将来像を望む
.『愛媛新聞』社説 2001年11月26日付up11/30 .-
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『愛媛新聞』社説 2001年11月26日付
国立大学改革 地域に根差した将来像を望む
国立大学が改革の大波に揺れている。生き残りをかけた競争原理の渦にいや応なく巻き込まれつつある。
改革の大波は三つある。
その第一は、全国九十九の国立大を国の行政組織から切り離し、それぞれ独立した法人にする計画だ。早ければ二〇〇四年春にもスタートする。
学科設置が自由になり、教職員の給料も独自に決められるなど、大学の裁量が拡大する。その半面、各大学の教育・研究実績を第三者機関で評価し、それに基づいて国の資金配分を加減する。大学間に競争原理を働かせる仕組みだ。
第二は、「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)。大学の再編統合を進めるとともに、世界に通用する研究レベルの「トップ30大学」を重点的に育成する。国公私立を問わず業績が優れた三十大学に限っては予算を特別手厚く配分する。
その一方、国立二十と私立十大学程度が想定される「トップ30大学」から外れた大多数の国立大は割を食い、資金難にあえぐ事態も憂慮される。
第三は、全国に四十八ある国立の教員養成系大学・学部の統合だ。現在の半分以下に減らす構想が具体化しつつあり、明治以来の教員養成機関を失う県がかなり出てくる。
愛媛大の鮎川恭三学長はこの夏、「六学部の統廃合も視野に入れ、他大学との連携を模索する」との方針を示しているだけに、教育学部の行方も県民には強い関心事である。
三つの大波それぞれが重大な変革をもたらす。とりわけ「遠山プラン」は、「こんなに国立大がいるのか」と再編を促した小泉純一郎首相の指示に沿っての急造プランである。
そもそも、こうした国立大の改革が、もっぱら財政改革の視点から効率最優先で進められているのは問題だ。国家予算を削減するのを第一義とした改革であり、小規模大学の切り捨てにつながる懸念が募る。
何よりも、地方の視点を欠いたまま改革論議が進む事態は看過できない。地方大学への容赦ないしわ寄せがおよそ想像できる。将来「一県一国立大」さえも危うくなりかねない。
そうした危機感を抱いた鮎川学長ら二十八人の地方国立大学長が提言を先月公表した。文科省や大学関係者がどう受け止めているか注目される。
提言では、生涯学習から食糧や医療などあらゆる問題で国立大と地域社会が交流する必要性を強調している。とかく学外との交流が少ないために「象牙(ぞうげ)の塔」と指摘される大学側から、地域社会を見据えた活動の重要性を訴え、大学と地域の活性化へ意欲を表明した。多くの県民は期待を寄せるだろう。
県内経済界も産学連携などへの期待は強い。しかし現実は、各大学でどんな研究をしているのかといった情報を知る手がかりも乏しい。大学の生き残り競争には県民の支援が欠かせないだけに、大学側も地域に根差した独自の将来像を明確に描いて県民に示してほしい。