☆研究所長会議の中間報告に対する意見書
.up11/6
---------------------------------------------------------------
「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」に対する意見
2001.10.29
文部科学省所轄ならびに
国立大学附置研究所長会議
文部科学省所轄ならびに国立大学附置研究所長会議は「新しい「国立大学法人」
像について(中間報告)」に対して、以下の意見を表明する。
「国立大学法人化後も、大学附置研究所・センターが自発的な研究活動を通して
調和のとれた学術研究と科学技術の発展、ならびに高度な研究者の育成に一層の貢
献が可能となるよう、研究体制の発展と財政的基盤の確保が担保されるよう要望す
る」
さる9月27日に「文部科学省国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会
議」から公表された「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」は、我が
国における21世紀の国立大学の新しい姿を提示し、現在パブリックコメントを求
めている。この中で、これまで我が国の学術研究の推進と研究者養成の中核として
の役割を果たしてきた国立大学が、教育・研究のさらなる展開を通して世界水準の
個性豊かな大学となるために行うべき改革の具体的方法が提示されている。すなわ
ち、国立大学に民間的発想の経営手法を導入し、国民に支えられ、社会に開かれた
大学として、国民や社会に対するアカウンタビリテイを重視すると同時に、経営責
任の明確化による機動的・戦略的な大学運営を実現すること、である。
本「中間報告」は大学の経営面についての改革を具体的に提言し、産業技術への
貢献を通して社会に役立つ大学としての役割を明確にしている。しかしその反面、
これまで基礎科学の裾野を営々と開拓しつつ人材を育成し、現在の我が国の高い科
学技術水準の実現に貢献してきた大学の研究機能に対する評価と、それを踏まえた
今後の長期的な展望と施策に対する言及が不十分である。
もとより大学は、教育による人材育成と共に国際社会の一員としての我が国が世
界に向けて「知」を発信する役割を担っている。もちろん、エネルギーや資源の乏
しい我が国が、21世紀のグランドデザインを「科学技術創造立国」とすることは極め
て適切なことであり、我が国の研究機能の中枢を担う大学の責任はますます重く、
社会の大学への期待もますます大きなものとなることは論を待たない。その中にあ
って、学部・研究科とともに大学を構成する附置研究所・センターは多数の国際的
な研究者を擁する研究中枢であり、今日まで大学共同利用機関ともども、我が国の
学術研究の発展と高度な研究者の育成に多大の貢献を果たしてきた。実際、これら
の機関は、重要な研究成果や社会の強い要請に基づいて設置されたもので、いわば
「大学の顔」あるいは「国の顔」ともいえる存在であり、我が国の学術研究の中枢機
関として、さらに大きな貢献が期待されているものである。しかしながらこの「中
間報告」においては、大学共同利用機関についての議論はあるものの、大学法人内
での附置研究所・センターの役割については各法人の自主的な判断に委ねるとの観
点からほとんど言及がない。
いうまでもなく大学における最前線の研究を担っているのは、学部・研究科や附
置研究所・センターといった学内組織であり、これらがそれぞれの役割を果たし統
合的にその機能を発揮することで、大学としての研究機能を最大限に強化すること
が出来る。なかでも附置研究所・センターは、大学内にあって学部・研究科と密接
に協力しながらも研究面に大きな力を注いでおり、学部・研究科では困難な特定領
域の研究の総合的な推進や、複数領域に跨る学際的・先端的な研究の開拓、大型研
究装置・機器の開発研究、先導的知的基盤整備などを行っており、それらを駆使し
て世界的な研究を強力に進めるとともに、高度な研究者育成のための大学院教育を
行っている点に大きな特徴を持っている。
我が国が「科学技術創造立国」を成功裡に推し進め、かつ国際社会の一員として世
界最高水準の学術研究を発信するためには、大学共同利用機関の拡充・強化と共に、
大学を構成する学部・研究科、附置研究所・センターの機能と役割を一層強化拡充
し、先鋭化させることが重要である。以上の観点より、ボトムアップ的な「知の創
造」組織として機能してきた大学附置研究所・センターの立場から冒頭の意見を表
明するものである。
[付帯要望事項]
「研究体制の発展と財政的基盤の確保」に関わる要望事項。
1)大学附置研究所・センターが目指す先端・学際研究領域における「ボトムアッ
プ的な研究」が行える財政的基盤の確保。すなわち、極めて基礎的・萌芽的な研究
活動を担保するための経費を、特定運営費交付金で措置すること。
2)大学附置研究所・センターが大型プロジェクトを推進するために必要な経費
については、運営費交付金とは別にこれら研究機関を対象とした新たな助成制度を
創設すること。
以上