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独行法反対首都圏ネットワーク

☆東京大学地震研究所からのパブリックコメント 
. 2001.11.1。UP-

------------東京大学地震研究所からのパブリックコメント--------------------------------

1.大学の自主性・自律性について
 「基本的考え方」の前提3にも述べられているように、教育・研究を主目的とする
大学では、自主性・自律性が重要な要素である。しかし、「検討の視点」の視点3で
は、学内コンセンサスの確保に留意するとの前置きはあるもののトップダウンの意志
決定システムが大学全体のみならず、部局にも確立することの重要性が強調されてい
る。研究という営為は基本的に個人の自由な発想を基礎とする試行錯誤的行為や研究
者間の相互触発によるものである。高度な研究活動を保証する組織に対して、トップ
ダウン的意志決定プロセスを導入する場合には、限定的なものにすべきであり、部局
構成員の意志を重視するものとすべきである。
 また、部局は教育・研究活動を行う基本的組織であり、教員と協力する職員の存在
が必須である。しかし、中間報告に書かれているように、事務組織を「学長以下の役
員を直接支える...集団」と定義すると部局での実際の教育・研究活動に支障が出
る場合もある。学部長(研究所長)を支えるにも副学部長(副研究所長)等の教員だ
けでは不十分であり、各部局の活動に知悉した能力のある事務職員の存在が欠かせな
い。
 (学長の選考方法等)では、学長は強い経営手腕を発揮することが求められてい
る。これがトップダウンによる意志決定の仕組みと結びつくと、大学の自主性・自律
性は完全に形骸化する。

2.学外者の登用について
 大学運営に関して学外者の登用がうたわれているが、その抽象的な資格は記載され
ていても、その人選、任命などに関する手続きなどには中間報告ではふれられていな
い。その人選や選任方法によって、大学自体の自主性・自律性の程度が大きく左右さ
れることもあり得る。学長の意志決定に先立って議決を行い、学外者が相当数入るこ
とを想定しているC案における役員会では、特にこのことについて留意する必要があ
る。また、C案をとった場合、役員会の機能がきわめて強くなり、学長のリーダーシ
ップが形骸化する恐れがある。

3.大学の運営組織について
 C案については前項で述べた問題がある。
 運営組織のB案では経営と教学に関する審議機関が二つに分離しているが、大学に
おける教学と経営は全く独立なものではない。B案では、学長のところで、教学と経
営は融合される仕組みになっているが、これでは学長の独善的経営に陥る恐れがあ
る。執行機関に対する自律的チェック機能を学内に作る必要がある。

4.文部科学省の関与について
 文部科学大臣が中期目標を策定し、中期計画の認可を行い、さらに監事も文部科学
大臣が任命するようであれば、文部科学省による規制が従前以上に強化される恐れが
ある。また、「国立大学評価委員会」が行う評価の結果は運営費交付金にも反映さ
れ、この委員会は大きな権限を持つ。この委員会が文部科学省に置かれるようであれ
ば、「厳正かつ客観的な第3者評価システムを確立」することになるとは思えない。

5.大学法人間の連携システムについて
 中間報告は、個別の大学法人についての検討結果であるが、同時に各大学法人間の
連携方策(人事、財政)についての検討も望まれる。最近の研究は大型化し、多くの
研究者の共同作業が欠かせず、多くの大学を横断する持続的研究活動を保証するネッ
トワークシステムを構築する必要がある。また、このような法人を横断するような持
続的研究活動に対しての財政支援策を別途考慮する必要がある。個別大学が法人化す
ることにより、互いに排他的になることは避けなければならない。特に、地震予知研
究・火山噴火予知研究のように全国規模での共同研究として予算措置がなされている
ようなものは、各大学で確実に実施することが必要である。

6.大学における高度な研究の推進方策について
 大学附置の多くの研究所やセンターは、各分野の研究の推進のための国家的観点か
らの学術政策に基づき設置されたものであり、前項に述べた大学間の研究連携の中核
的組織の役割を果たしてきた。また、同時に、研究に重点を置く大学においては、こ
れらの組織は、関連研究科と連携する、先端的かつ複合領域にわたる高度な研究推進
のための学内拠点ともなっている。法人化後も、附置研究所やセンターのこのような
活動を保証する制度的・財政的基盤が必要である。

7.評価と数値目標について
 中間報告の23ページにも記載されているように、大学における教育研究活動は、
計量的・外形的な基準だけでは適切に評価しがたい面がある。基礎研究の評価は,そ
の評価基準が単純に定められないところに常に困難さを伴う。国立大学評価委員会
は、短期的な成果の評価だけでなく,長期間を見据えた学問の発展と教育への国家的
責任に視点を持つべきである。中期計画作成に際して、数値目標を入れる場合は、純
粋な経営面などに限定すべきである。

8.運営費交付金について
 特定運営費交付金の内容が不明確。中間報告37ページに書かれているように「特
定の事業等に対する所要額」という位置づけならば、学内での再配分を行わず、その
まま事業主体に配分すべきである。
 標準運営費交付金は、客観的指標に基づく算定方式に基礎を置いている以上、それ
に基づく教育・研究活動に対する評価は、競争的経費に基づくものに対する評価とは
質的に異なるべきである。