☆教員養成系大学・学部の統合・再編が動き出す段階
200110.29[reform:03816-7] 教員養成系大学・学部の統合・再編が動き出す段階
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以下は、10月23日に開催された文科省の「国立の教員養成系大学・学部の在り方
に関する懇談会」(在り方懇、第17回)に提出された報告書案の統合再編に関す
る部分です。2回に分けて送ります。26日開催の教育大学学長・学部長会議におい
て、石井教育大学室長が報告している予定です。文科省は「設置者行政を行う」と
述べていると言われ、いよいよ教員養成系大学・学部の統合・再編が動き出す段階が
来たようです。国立大学の統合再編がより上位の動きとしてあり、実際には、複雑な
展開が予想されます。文科省は破綻した計画養成政策に固執し、一方では「教員養成
担当大学」における極端な目的大学化の推進、他方では「一般大学」における教育系
学部、教育学研究科の解体を進めようとしています。教員の再配置の問題は深刻な
混乱をもたらす危険があります。「大学における教員養成」の原則からの批判が今こ
そ必要なのではないでしょうか。
10月28日 大学改革情報ネットワーク世話人
「今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について(案)」
III 今後の国立の教員養成大学・学部の組織・体制の在り方
1 再編・統合の必要性について
○ 現在、学校現場には早急に取り組まなければならない様々な課題があり、教員
養成学部には、その専門性に立って、これらの課題への積極的な取り組みや学校現
場で必要とされる優れた教員の養成がますます求められている。他方で、教員養成
課程の入学定員の減少が、日常の教育研究活動や大学・学部の運営に様々な問題を
投げかけている。
○ 教員組織についても、義務教育諸学校の教員養成に必要な教員組織を編成する
と、ほとんど余裕のない定員規模の大学が多く、そのような学部では新たな教育課
題に対応するための教育研究体制を組むことが困難な状況にある。
○ また、現在、ほとんどの教員養成学部に新課程が設置され、一定の評価を受け
ている一方、教員養成学部自体の性格が揺らいできている。新課程は独自の目的と
教育課程を持ちながら、ほとんどの教員は教員養成課程と兼ねて担当している状況
である。
○ このような状況を考えると、教員養成学部を現状のまま置いておくことは、教
員養成という本来の目的をあいまいなものとするばかりでなく、長期的にみた場合、
教員養成学部の発展が望めず、その活力が次第に失われていくことが懸念される。
○ 新課程については、教員養成学部が独自の専門性を確立していく観点からも、新
課程の学生の教育指導体制の明確化を図っていく観点からも、教員養成学部から独立
したものとすることが適当と考えられるが、ほとんどの大学では新課程と教員養成課
程を別々に編成するだけの教員数がない状況にある。仮に教員数からみてそれが可能
であったとしても、単純に区分することは教員養成課程の弱体化を招くこととなる。
○ 教員養成学部が、今後様々な新たな教育課題に積極的に取り組むことが可能とな
るよう、1学部当たりの教員組織を充実するとともに、教員養成学部に置かれている
目的の違う2種類の課程の、それぞれの特色を発揮できるようにしていくことが求め
られる。
○ 一方、交通網の発達等による、県域を越えた流動性の高まりや、情報通信技術の
発展に伴う遠隔教育の導入・普及などにより、教員養成を現状のまま、すべての都道
府県において行うことの必要性は薄れつつある。
○ このような背景を総合的に勘案すれば、教員養成学部を小規模なまま各都道府県
に置くのではなく、この際、1都道府県1教員養成学部の体制を見直し、学生数や教
員数がある程度の規模となるよう再編・統合を行うことによって、個々の学部の組織
の充実強化を図るとともに、教員養成に特化し、活力ある教員養成専門の教育研究機
関として、その特色や機能を十分に発揮できるよう体制を整えていくことが必要と考
える。
2 再編・統合の考え方について
(1)再編・統合の基本的な考え方
(1)検討の前提
○ 現在、大学(国立大学)の構造改革の観点から、大学間の再編・統合や大学自体
の改革の検討が進められている。教員養成学部の組織・体制の具体的な在り方は、こ
れらの動向と密接に関係していくものと考えられるが、本懇談会としては、教員養成
の在り方という観点から検討を行った。
(2)教員養成課程全体の入学定員及び今後の教員需要への対応
○ 教員養成課程全体の入学定員については、少子化に伴う教員就職率の低下を踏ま
え、平成10年度から12年度までの3年間に約5千人の削減を行い、現在約1万人
の規模となっている。
○ 今後、公立学校の教員の定年退職者の増加や都道府県における教員配置基準の改
善に伴い、教員採用数の増加が見込まれるため、それに対応して、むしろ教員養成規
模を拡大すべしとの意見がある。
○ これに対しては、教員採用試験受験者数と教員採用数に大幅なギャップがあり、
大量の教員資格者が存在すること、採用の側も各学校における教員の年齢構成のバラ
ンスを確保するという観点から社会人登用等新規卒業者だけでなく、幅広い年齢層か
ら採用するような措置をとってきていること、公務員の再任用制度が導入されたこと
などから、退職者の増がそのまま新規卒業者の採用数の増につながっていくとは考え
られない状況がある。
また、退職者数は一時期増加した後、また減少に転じていくことが見込まれること
等から、教員養成学部の養成規模を、今後の定年退職者んp増加見込み数に応じて増
加しなければ教員、とりわけ小学校教員の確保に支障が生じるようなことにはならな
いと考えられる。
○ このようなことから、今回の再編・統合の検討に当たっては、現在の1万人体制
をもとに、優秀な教員を養成していくための教員養成学部の組織・体制の在り方を検
討していくことが適当である。
○ これからの教員養成における国の役割を考えた場合、義務教育諸学校、特に小学
校教員を一定数、計画的に養成していくことは、今後とも重要なことであるが、それ
とともに、様々な課題を抱える学校現場にリーダーとなって活躍していく力量ある教
員を養成していくシステムづくりが、強く求められている。
(3)再編・統合の基本的な考え方
○ 活力ある大学・学部を実現し、新たな教育課題に積極的に対応するとともに特色
ある教育研究を推進していくため、1学部当たりの学生数や教員組織が学部としてふ
さわしい規模となるよう再編・統合することが必要である。
その際、当該地域の教員需給の見通しや学生の流動状況等も勘案しつつ、近隣都道
府県を単位として教員養成学部を再編・統合することが適当である。
○ 再編・統合に当たっては、国立の教員養成学部の役割、とりわけ小学校教員の養
成に果たす役割を勘案しつつ、特定の地域の偏在を避け、全国的にバランスのとれた
養成体制になるよう考慮する必要がある。
○ 再編・統合の際、総合大学の学部として統合する方法と単科の教育大学として統
合する方法が考えられる。
総合大学の場合には、
・ 多様な学部の学生と一緒に学んだり交流を持つことを通じて、より幅広いもの
の見方・考え方に触れることができること
・ 教育や教職の在り方を客観的な目でとらえる機会がより多く持てること
・ 他学部との連携により幅のある教育研究の展開が期待できること
などの利点があると考えられる。
他方、単科大学の場合には、
・ 学生が教職という共通の目的意識をもって学べること
・ 教育理念や目指す教師像に向かって大学全体での取り組みがしやすいこと
などの利点があると考えられる。
○ 教員養成という観点からみれば、いずれかに特定するのは適当でなく、地域におけ
る配置や各大学の状況等に応じ、いずれの場合もあり得ると考えられる。実際上は、現
在進められている国立大学の構造改革の一環としての再編・統合とも密接に関係してく
るものであり、各大学の将来構想等も踏まえつつ、個別具体的に検討を行う必要がある。
○ 新課程は、今後教員養成学部が教員養成の専門学部として特色を発揮していくため
にも、新課程における教育の在り方やその体制を明確にしていくためにも、教員養成学
部の再編・統合を契機に、教員養成学部から切り離していく方向をとることが適当であ
る。
その際、新課程のこれまでの実績等を勘案し、教員養成学部がなくなる大学にあって
は、各大学の新課程がこれまで目指した理念、目的、成果等を十分踏まえ、それらを継
承し、発展させていくことが適当な場合があると考えられる。
なお、環境教育、情報教育、国際理解教育、カウンセリング能力の育成等本来教員に
求められる分野については、そのカリキュラムを教員養成課程に取り込んでいくことが
望ましい。その場合は、修得単位数が過大にならないよう、カリキュラム編成に工夫を
加えることが必要である。
○ 教員養成学部の再編・統合によって、教員養成学部がなくなる都道府県については、
それらの都道府県等の教育委員会との連携協力の体制や現職教員の大学院での再教育の
体制に十分留意する必要がある。
○ なお、今回の再編・統合による新たな教員養成の組織・体制については、一定期間
の後、その成果について評価を行い、必要な場合には見直しを行い、更なる改善に努め
ていくべきである。
その際、教員養成学部が設置されている都道府県だけでなく、幅広く他の都道府県の
教育委員会等の関係者から意見を聞くことにも配慮すべきである。
(続く)fsdbn
続報です。
10月28日 大学改革情報ネットワーク世話人
(2)再編・統合の形態
○ 再編・統合を実施する場合、様々な形態があると考えられるが、本懇談会として
は、基本的に次のような形態を検討した。
A 複数の大学・学部を統合するケース
この形態は、再編・統合後の個々の教員養成学部の充実強化が最も明確に表れ
る方法である。一方、教員養成学部がなくなる都道府県が生じ、現職教員の再教
育や教育委員会との連携などの面で工夫が必要となる。また、教員養成学部の教
員の大幅な移動が行われることになる。
B 小学校教員養成機能は各大学に残し、中学校10教科を例えば文系、理系、技術
系のように複数の大学で分担するケース
この形態は、教員養成学部は各都道府県に残るが、これまでの教員養成学部の
ように中学校10教科に対応した幅広い分野を対象とする学部とは性格が異なり、
特定の分野に偏った学部となる。また、いわゆるピークが限定されるなどの課題
がある。また、分野により、教員養成学部の教員の移動が行われることになる。
C 基幹大学とその他の大学に分け、基幹大学は一定のブロックごとに1校程度とし、
当該大学ではすべての学校種の教員養成を行い、その他の大学は小学校教員養成
に特化するケース
この形態は、各都道府県では少なくとも小学校教員の養成は行われるが、その他
の大学の教員養成学部は、学生数や教員数においても教育内容においてもますます
小規模化するとともに、学生にとっては当該学部で中学校教員免許状が取得できな
くなる。また、取得できる教員免許状の種類について基幹大学とその他の大学とで
較差が生じることになる。また、中学校教員養成を担当する教員の移動が行われる
ことになる。
○ 上記再編・統合の形態にはそれぞれメリット、デメリットがあるが、今回の再編・
統合の理念が個々の教員養成学部の充実強化にあることにかんがみ、上記Aの形態によ
り再編・統合することを基本と考えていくべきである。
なお、教員養成学部の実際の再編・統合やそれに伴う組織の設計は、大学全体の組織
体制の在り方や大学間の再編・統合とも深く関係することから、大学や地域の実状も勘
案しながら弾力的に検討していくことも必要である。
(3)再編・統合後の基本的な枠組み
○ 教員養成学部は学芸学部と教育学部で発足し、その後教育学部に統一され、近年ま
た新課程の設置や複合名称の学部への改組が行われるなどの変遷をたどってきており、
現在は教員養成にとどまらず、幅広い機能を併せ持っているのが実状である。
○ 再編・統合後の基本的な枠組みとしては、教員養成課程の1万人体制の中で、教員
養成課程を担当する大学(以下「教員養成担当大学」という。)と教員養成学部がなく
なる大学(以下「一般大学」という。)とで、これまで担ってきた役割を分担し、それ
ぞれの大学が個性や特色を発揮していけるようにすることを基本とすべきである。
○ それを前提とした上で、再編・統合した場合の各大学・学部の基本的な枠組みを上
記Aの形態をもとに整理すると次のようになる。
ア 教員養成担当大学の学部の機能
・ 教員養成担当大学に置かれる教員養成学部の入学定員は、原則として統合前の各大
学の教員養成課程の入学定員を合計した規模とする。
・ 教員養成の専門学部としての独自性を高め、教員養成に徹するため、統合して置か
れる教員養成学部には教員養成課程のみを置き、新課程は置かないものとする。
・ 教員養成担当大学の新課程については、必要に応じ、当該大学や一般大学の充実に
資するよう再編成する。
・ 一般大学における新たな組織の充実に充てるため、必要な教員を一般大学に振り替
える。
・ 統合後の教員養成学部には、原則として幼稚園から高等学校までの全学校種、全教
科の教員免許の課程を置くものとする。
・ 教員養成担当大学は一般大学と協力し、教員養成学部がなくなる都道府県までを対
象とした教育委員会との連携を図り、教員養成の係る様々な工夫と仕組みを整備する
必要がある。
・ 教員養成担当大学には、今後の我が国の教員養成を支える大学として、教員養成の
在り方やそれを実現していくための組織体制やカリキュラムの編成等について、格段
の努力や不断の見直しが求められる。
イ 教員養成担当大学の大学院の機能
・ 学校教育専攻、教科教育専攻(中学校10教科)を置くほか、必要に応じて新たな
教育課題に対応するための専攻を設置するものとする。
・ 原則として全学校種、全教科の専修免許状の取得が可能となるようにする。
・ 統合により教員養成学部がなくなる都道府県の現職教員も視野に入れ、カリキュラ
ム開発を含め、現職教員の受け入れ体制の整備を図る。
・ 教員養成学部の大学院における通信教育の適否を含め、その在り方を検討する。
ウ 一般大学の機能
・ 教員養成学部を置かないこととなる大学にあっては、必要に応じ、例えば新しい時
代に求められる教養教育を担当する組織や地域の求める人材養成を行う組織を設置す
るなども検討する。
・ 必要に応じ、教員を教員養成担当大学に振り替えるほか、上記新組織や学内の既存
組織の充実に充てる。
・ 他学部における教員養成の効果的なカリキュラム編成や地域の教育委員会との連携
等のために必要な体制を整備する。
・ 現職教員の再教育に支障が生じないよう、教員養成担当大学とも協力し、必要な措
置を講じる。
エ 現職教員の再教育への対応
・ できるだけ現職教員の学習の機会の確保に努めることとし、特に教員養成学部がな
くなる都道府県においては、教員養成担当大学のサテライト教室の開設や遠隔教育の
充実等体制の整備を行っていくことが必要である。
・ 教員養成担当大学と一般大学は協力して、関係都道府県と協議しつつ、修士課程に
おける教育に限らず免許法に基づく認定講習の実施など様々な面で現職教員の再教育
への適切な支援を行う。