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☆ 鹿児島大学教職組・『新しい「国立大学法人」像について(中間報告)』に対する意見
  2001.[he-forum 2779]  鹿児島大学教職組・『新しい「国立大学法人」像について(中間報告)』に対する意見
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鹿児島大学教職組は本日、下記の意見を文部科学省に送付しました。

文部科学省高等教育局大学課大学改革推進室御中


『新しい「国立大学法人」像について(中間報告)』に対する意見

1.氏 名: 鹿児島大学教職員組合
5.意 見: 以下の通りです。
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私たちは、「独立行政法人通則法を前提とした国立大学の独立行政法
人化には反対する」という基本的な立場をとっております。しかしな
がら、現在の国立大学にも解決・克服すべき課題が山積していること
も事実です。これはひとり国立大学に限定された問題ではなく、日本
の大学・高等教育制度全体を貫く問題群の一部といわざるを得ません。
この点に鑑み、より高い自律性を有する大学像を目指すという観点か
ら、文部科学省より提示された『新しい「国立大学法人」像について
(中間報告)』(以下では「中間報告」と呼ぶ)を検討し、意見を提
出するものです。
1.組織業務について
「産」、「官」、「学」のお互いの間には、予算的・人的に密接な関
係があり、相互批判が不可欠ではあったとしても、相互の存
在意義を、また立場の違いを認め合うことが必要だと考えます。高等
教育および研究を担う機関である大学は、それを構成する一部分を社
会的な要請に応じて機動的に変化させることはあるとしても、全体と
しては、教育・研究の理念に基づいて、「産」あるいは「官」とは独
自の立場、すなわち自律性・自主性を貫くことができなくてはなりま
せん。「中間報告」では、3案併記の形ではありますが、経営に関す
る運営体制、さらには教学に関する運営体制において、相当程度の学
外有識者を含めることと記されております。いずれの案も、学長が最終
的な意思決定をするとはなってはいますが、結局のところ、相当数の学外
者を含めた組織が大学運営を主導することになります。学外者が大学
経営を主導するようになれば、そもそも教育と研究を担うべき大学の
アイデンティティが不鮮明になり、自律性・自主性という言葉すら意
味をなさなくなってしまいます。すなわち、「大学経営責任」の所在
は、最初からないも同然といえます。国立大学が国民によって支えら
れている機関である以上、社会へのアカウンタビリティの要請に応え
ることが極めて重要であることは論を待ちません。しかし、教育と研
究を普遍的に行うという大学の本来果たすべき役割を守り育てるため
に必要な、「自律的・自主的な運営組織の設計」に向け熟慮していた
だくことを希望します。



2.中期目標について
中期目標は、教育研究の具体的方向性を定め、大学の業績を評価する
際の主な基準とされているものですが、中間報告では、中期目標を
「大臣が策定」し、これに基づいて大学が作成した中期計画を「大臣
が認可」するものとされています。この制度は、大学における教
育研究を「許認可事業化」することであり、憲法第23条の「学問の自
由は、これを保障する」に違反します。国立大学法人とは名ばかりであ
り、その内容は独立行政法人そのものと言わざるをえません。高等教
育と学術研究を担うという、大学固有の機能を勘案いただき、中期目
標の策定に関しては、教育研究者の自由な発想や、大学人自身による
企画立案を尊重して「各大学自身が作成する」としていただきたい。



3.目標評価について
基礎科学の長期的な進歩のためには、基盤的な研究資金が保証される
ことが不可欠です。しかし、中間報告では、大学評価委員会が大学に
対する評価を行い、「評価結果は次期以降の中期目標期間における運
営交付金の算定に反映させる」となっています。大学における教育と
研究の評価の方法は、我が国においてはまだ確立しておらず、試行錯
誤の段階であると言っても過言ではありません。このような状況のもと
で、特に研究者あるいは研究機関の間に競争原理が持ち込まれ、短期
間における論文数などといった数値的基準のみに依存した評価が行わ
れるならば、研究が短期的な視野に偏り、基礎科学の研究にとって大
きな弊害が起こり得ます。これは、我が国の科学・技術の発展を長期
的な視野に立って見た場合、大きな損失であると言えます。
私たちは、研究者が息の長い基礎研究を持続することができる安定し
た研究費が確保されることを強く要望します。競争的な研究資金と
しては、科学研究費補助金などの制度が、現在、確立しており、これ
らを充実させることが最も大事であると考えています。



4.人事制度について
教職員の身分について、「公務員型」か「非公務員型」かという点が
不明確なまま残されていますが、この点については公務員型の選択を
すべきであると考えております。仮に、非公務員型を採用する場合に
おいては、争議行為まで含めた権利の保証が前提となりますが、この
場合においては、紛争時における十分な当事者能力を確保するため、
運営体制において中間報告が示している範囲より更に進んだ自律性・
自主性を有するシステムを提示する必要があります。なお、中間報告
の中では、産業界などからの批判が強い教育公務員特例法についてあ
えて触れていないように見うけられますが、学問の自由を、また大学
における教育・研究の基盤を保証するという基本的な立場から、教員
の採用、昇任,分限、懲戒、服務等に関して特例を設けたこの法律を
尊守すべきだと考えます。
学長の選考に関し,中間報告では「選考機関の下に学外の有識者を含
む推薦委員会を設置し、広く学内外から候補者を調査し、候補者を
絞った上で投票を行なう等の方式を導入することや、投票参加者の範
囲も大学・法人運営の最高責任者を選ぶ上で適切なものとすることが
必要である」と述べています。学長は、大学の教学および経営面の最
終的な意思決定を行なうという立場にあることから、その選考におい
ては大学構成員による投票を基本とし、また投票参加者についても大
学構成員のできるだけ広い範囲とすべきです。また、候補者の絞込みが投
票の前に行なわれることは大学構成員による投票の意義を著しく損な
うことになり避けるべきだと考えます。
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  Masanori Nishio
  nishio@sci.kagoshima-u.ac.jp
  http://www-space.cla.kagoshima-u.ac.jp
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