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『熊本日日新聞』社説  2001年10月22日付

  <社説> 国立大法人化 運用次第で国の関与増す

 少子化時代を迎え、国立大学を取り巻く環境も大きく変わろうとしている。
加速する再編・統合の動きと並行して、法人化移行の構想も具体化しつつある。

 文部科学省の調査検討会議が、国立大学を法人化する際の基本的枠組みを示
す中間報告をまとめた。大学ごとに法人格を付与し、民間の経営手法を導入し
て開かれた大学にすることを強調した内容だ。

 基本的な考え方としては、予算や組織などに関する国の規制を緩和、大学の
裁量を大幅に広げる一方で、評価結果を予算の配分に反映させるなど経営責任
を明確化する―という方向を示している。

 これまで国立大学は、文科省の下部機関として位置づけられ、予算、人、教
育研究の組織・施設などさまざまな面で、国の事前規制を受けていた。それを
緩めて、基本的な運営は大学側に任せる。大学の自主性・自律性が、より広が
るのであれば歓迎すべき改革といえる。

 報告では、各大学に対する第三者機関の評価によって、国からの運営費交付
金等を増減することになっている。だが、評価を配分にどう結び付けるのか、
肝心な部分は明確でない。各大学が中期目標に基づいて作成した中期計画を
「文科相が認可する」としている点などを含め、運用次第では、逆に国の規制・
関与が強まりかねない点が憂慮される。

 さらに、学外の有識者や専門家を役員にする「学外役員制度」を導入し、大
学の運営に直接参画する道を開いたが、評議員会、役員会に相当程度、あるい
は評議会に若干名などと、国が細部にわたって指示しておく必要があるのだろ
うか。

 大学の自主・自律性が守られることこそ法人化移行の前提である。それをど
のように具体的に盛り込むのか。調査検討会議は年度内に最終報告を取りまと
める予定だ。制度運用の在り方や、関与の歯止め策まで踏み込んだ提示を求め
ておきたい。

 もともと政府は、国立大学の設置形態見直しに当たり、行政改革の一環とし
て独立行政法人化する方針を打ち出していた。独立行政法人化すれば、定員法
の枠からはずれることになる。つまり公務員定数削減のつじつま合わせに、大
学を使おうというものであった。

 しかし、行政の企画立案機能と実施機能を分離して効率化を図るという、独
立行政法人化の基本的枠組みが、自ら企画も実施もする大学になじまないこと
は明白である。

 中間報告が「行革の視点を超えて検討」し、この枠組みに修正を加えたこと
は一定の評価ができる。

 国費による運営という国立大学の基本形態は残されるが、人事面では任期制
や公募制が導入され、人材の流動化を促すことになろう。学科や組織の改編、
教職員給与や学生納付金の設定なども各大学の裁量に任せる。これにより大学
の再編・統合に拍車がかかることも予想される。

 ただ、中間報告では(1)教育研究面と経営面に関する意思決定機関を分離
するか一体とするか(2)法人化後の教職員の身分を公務員、非公務員のいず
れにするかなど重要な点が両論併記で先送りされた。大学改革に向けた明確な
将来像が見えないことに不満も残る。

 これまでに経験のない法人経営の導入により、地方大学や、職員の少ない小
規模大学は厳しい対応を迫られることだろう。バランスよく各大学を発展させ
るためには、現状の予算規模を保証するなどの配慮が、当面欠かせぬ条件では
あるまいか。大学全体を対象にした競争基盤の整備が今後求められることにな
る。

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☆ <社説> 国立大法人化 運用次第で国の関与増す
  2001.10.27 [he-forum 2763] 熊本日日新聞社説10/22
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