北大ネットから総長への公開質問状
「北大ネット」では、先にお知らせした「声明」と併せて、以下の公開質問状を総長
宛に提出しましたので、お知らせします。
北大ネットワーク世話人
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2001年10月23日
北海道大学総長 中村 睦男 殿
独立行政法人化問題を考える北海道大学ネットワーク
公開質問状
大学を巡る状況が激動するなかで、多くの公務において、大学のために尽力されてお
られることについて、深く感謝の念を表明します。 さて、9月27日に文部科学大臣の私的諮問機関が「新しい「国立大学法人」像につ
いて」(以下、中間報告)を発表し、独立行政法人化問題が大きな節目を迎えておりますが、いまなお重要な争点は未定のままであり、マスコミ報道の中にも大学人の意
見表明を促すところが少なからず出てきました。 国立大学の独立行政法人化を危惧する北大の教官有志による当ネットワークは、新法人案による法人化は独立行政法人化以上に大学の機能を損なうものと危惧し、本学の対応に関して、以下の点について公開で質問することに致しました。お忙しいなかで
はございましょうが、今週中に世話人服部までご回答いただければ幸いです。
公開質問状とその回答について、10月24日に報道発表する予定です。 尚、本日、本学教職員各位に対しまして声明を表明いたしましたので、併せて送付さ
せていただきます
北海道大学ネットワーク世話人 服部 昭仁
内線 3881 e-mail address: hattori@anim.agr.hokudai.ac.jp
質問状
本学の法人化問題検討ワーキンググループが評議会(5月16日)に提出した「検討過程の中間報告」(以下、北大WG報告)にも、種々の問題点があると私たちは考えておりますが、今回は、北大WG報告の考えに立った場合に問題となる中間報告の内容についてのみお聞きしたいと思います。
北大WG報告の序文には「教育研究の質的向上という方向に合致するならそれに賛成
し,そうでないなら,それに反対し批判を加える」立場を明らかにし、中村学長ご自
身も、私たちの公開質問状に対する6月7日の回答の中で、北大WG報告を重要な参考資料として活用する意思を表明されておられます。そこで、中間報告についての以
下の質問に御回答下さいますようお願い致します。
(1)北大WG報告の【7.人事(2)職員の身分と教員にかかる特例】のところでは、
「大学の自治の基本は教員人事の自律的決定にあることに鑑み,教員の任免,分限,
服務等の法定に際しては,教育公務員特例法の精神を取り入れるとともに,それらの
具体的制度については,各大学の自主的決定に委ねるべきである。」と表明されている考えに立つとき、中間報告が、教員の任免は部局長と学長が行い、部局長の任免は学長が行うことを明確にし、教育公務員特例法の内容を継承しないことを明確にした
ことをどのように思われますか?
(2)北大WG報告の【4 基本的な考え方.(2)「学問の自由」の確保と大学の自
主性・自律性の拡大】のところでは「大学における,(i)「具体的研究の内容と方法
における自由」,(ii)「全ての判断を超越した神のような絶対者や独裁的権威の否定」
, (iii)「社会からの価値的自立」を確認し,教育研究は内発的自由に依って立つと
いう大学の特性を担保する機関として,教授会,部局長会議,評議会を,国立大学法
人の運営体制のなかに適切に位置付けるべきである。」という考えに立つとき、中間
報告が、学長・副学長・学外有識者などからなる少人数の「役員会」に大学運営の全
権を持たせ、従来の評議会・学部教授会のような「最高審議機関」を継承しない設計
がされていますことをどのように思われますか?
(3)北大WG報告の【8 財務と会計. (1)基本原則】には「大学法人の設置者たる
国は,中長期的に安定した大学の財政基盤を形成しなければならない。」という考え
が示されています。中間報告では、標準的運営費交付金は評価に依存するという解釈
ができる部分(*1)があります。この点についてどのようにお考えでしょうか?
(4)中間報告では、目的・業務の項に「産学官連携を推進することが重要である」
と強調されていますが、北大WG報告では、この点についての言及はありません。法
人化を産学官連携の推進と結びつけることについては、どのようにお考えでしょうか。
(5)北大WG報告の【4.基本的な考え方(4)社会に開かれた大学】には「どのよ
うな学外者をどのような範囲で大学運営に加えるべきかは,それが何を目的とし,ど
のような機能を期待するかによって異なっているため,それが何のためであるかを明
確にした上,それに適切な形で制度設計される必要がある。」という立場が表明され
ています。中間報告では、学外者の大学運営参加を広範囲に認める一方、学外者が携
わる運営活動の内容については明確にはしていないと思われます。この点を、どのよ
うにお考えでしょうか。
以上の点について、よろしくご回答をお願い致します。それと同時に、学長選挙候補者の公開討論会で「独立行政法人化についての情勢は厳しくなるので大学はしっかり
抵抗していかなければならない」と発言されたことを思い起こされ、国立大学の行く
末に大きな影響力のある大学の一つとしての北大の責務を重視し、北大の自立性を示す独立した見解と毅然とした態度を、国立大学協会・調査検討会議・マスコミ等、あ
らゆる場において、とられますよう、お願い致します。
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(*1) 中間報告 V 財務会計制度 2.制度設計の方針(2)運営費交付金 ○ 各大学に対する運営費交付金は、予算配分における透明性の確保や各大学の自主
性・自律性の向上の観点、及び、特定の事業等の実施に適切に対応する観点から、次
の(i)及び(ii)の額を加えたものとする。 (i) 学生数等客観的な指標に基づく各大学に共通の算定方式により算出された標準
的な収入・支出額の収支差額(=標準運営費交付金)。 (ii) 客観的な指標によることが困難な特定の事業等に対する所要額(=特定運営費
交付金) ○ 運営費交付金には、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点
から、中期計画終了後の各大学に対する第三者評価の結果等を適切に反映させるもの
とし、その具体的方法や手続についてさらに検討する。 また、各大学・学部等の理念・目標・特色・条件等を踏まえた弾力的な運営費交付金
の算定方法の可能性を考慮する。 なお、運営費交付金の算定に用いる第三者評価の項目については、適切なものとなる
よう慎重に検討するとともに、各大学の自主性・自律性が結果として大きく制約され
ることのないよう配慮する。 また、運営費交付金等の算定の基準や方法を予め大学及び国民に対して明確にする。
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服部 昭仁(Dr. Akihito Hattori )
北海道大学大学院農学研究科 生物資源生産学専攻 畜産資源開発学講座 畜産食品開発学研究室
Meat Science Lab. Division of Bioresource & Product Sci. Graduate
School of Agriculture Hokkaido Univ. 060-8589 Sapporo, JAPAN (tel) 81-11-706-3881
(fax) 81-11-716-0879 e-mail: hattori@anim.agr.hokudai.ac.jp
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