経団連の重要な意見書
神沼(北大)です。さる10月16日づけの[he-forum 2704]で千葉大学の小沢さんが、
公表されたばかりの経団連の新しい意見書をお知らせしてくれました。ありがとうご
ざいました。
「国際競争力強化に向けたわが国の産学官連携の推進 〜産学官連携に向けた課題と推進策〜」
2001年10月16日 (社)経済団体連合会 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/048/index.html
早速それを読んでみましたが、内容は産学連携問題であり、また大学問題です。と
にかく強烈な内容、あっと驚くような内容などがたくさん盛り込まれています。この
意見書が現実の大学政策に大きく反映するのかと思うと、空恐ろしくなります。多方
面からのいろいろな批判が必要と思いますが、とにかく大勢のかたが早期に一読され
るようおすすめします。 この意見書を読んでいて、さらに意見書のなかに出ている次の二つの文書も読んで
みました。
科学技術戦略の変革に向けて 2001年6月11日 (社)経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/028.html
「構造改革を進め民主導の活力ある経済社会を実現する」― 総会決議 ― 2001年5月25日 (社)経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/026.html
どちらもそれほど長い文章ではないので、この二つもぜひ読んでみるべきでしょう。
特に驚いたのは「科学技術戦略の変革に向けて」(2001年6月11日)です。
今年、出された第2期の「科学技術基本計画」が「科学技術の戦略的重点化
」と して (1) ライフサイエンス分野 (2) 情報通信分野 (3) 環境分野 (4) ナノテクノロジー・材料分野
の4分野をあげ、さらにそれに準ずるような形で次の4分野もあげていることは周知
の事実です。 (5) エネルギー分野 (6) 製造技術分野 (7) 社会基盤分野 (8) フロンティア分野
ところが「科学技術戦略の変革に向けて」は(1)−(4)は取り上げているものの、
(5)−(8)についてはひと言もふれていません。最近、とある人が要旨、次のようなこ
とを教えてくれました。
「このような政府関係の文書が出てきた場合、最初に書かれている分野だけが重点
だ。そのあとに書かれている分野は、審議会委員のなかにその分野に関係ある人がい
たりしたために、その人の顔をたてる単なる作文に過ぎない。あとから出てくる分野
は重点分野などではなく、全く関係ないと見るほうがよい。」なるほど、「科学技術
戦略の変革に向けて」を読んで、この人の発言がよくよく納得できました。「科学技
術戦略の変革に向けて」は(5)以下については見向きもしていない感じです
ついでに紹介しますと、「科学技術戦略の変革に向けて」は「 重点4分野の予算
配分について」の項目で「科学技術基本計画において、重点4分野に掲げられたライ
フサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の各分野の予算配分にあた
っては、以下の重点化が重要である。」として、それぞれ目標内容を書いています。
社会科学を専攻する私には、4分野における細かい研究課題の中身をよく理解できな
いのですが、それでも「環境」についてはそれなりに理解できます。ところが「環境」
は次のことしか書かれていないのです。 「持続可能な経済社会の発展をはかるべく、ゴミゼロ社会の実現に向けて、3R(リ
デュース、リユース、リサイクル)を強力に進めるための研究開発が不可欠である。
具体的には、生ごみ、ペットボトル、家電から自動車まで、リサイクル率を一層向
上させる技術を中心に、優先順位をつけて、プログラム選定を行ない、5年から10年
先を見据えた、関係省庁の連携による統合化プログラムを推進する必要がある。その際、政府の都市再生本部が検討を進めている、広域循環都市プロジェクトと十分な連
携をはかることが必要である。衛星を含む環境監視技術も重要である。」
確かにここに書かれている「環境」の個別課題は非常に重要です。私としても、否
定するつもりは毛頭ありません。しかしながら重点分野「環境」の中身がこれだけで
良いのかと、日本の科学技術戦略の一面性にあらためてあきれた次第ですが、林学を
専攻する私のひがみでしょうか。
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神沼 公三郎(かぬま きんざぶろう) 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
森林圏ステーション 〒060-0809 札幌市北区北9条西9丁目 Tel.011-706-3853(ダイヤル・イン)
Fax.011-706-3450 E-mail:kanuma@fsc.hokudai.ac.jp
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*Mailアドレスが変更になり、上記のとおりとな りました。
*2001年4月1日づけで農学部、理学部、水産学部などの計10施設が合体して、上の組織が発足
しました。
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