『日本経済新聞』2001年10月20日付
「地域貢献へ研究交流―学長提言 再編再考求める―地方28国立大」
地方の28国立大の学長は19日、環境問題や地場産業の振興など地域杜会の課題を共同で研究する「国立大地域交流ネツトワーク」を立ち上げることなどを柱とした政策提言を公表した。国立大の法人化を機に、文部科学省は「一県一
国立大」の原則にこだわらず大学の再編、統合を進める方針だが、地域杜会に貢献することで地方国立大の存在意義をアピールしている。
提言は、九州、四国、中部、東北、北陸地区などの28の地方国立大の学長有
志がまとめた。田中弘允・鹿児島大学長、佐藤博明・静岡大学長、鮎川恭三・
愛媛大学長が同日都内で会見して明らかにした。
研究成果や人材を各大学が囲い込む形で競い合うよりも、環境、医療、生涯
学習など地域杜会の課題を協力して解決するネットワークの構築を大学改革の
基本姿勢にしているのが特徴。
「(地域間で)情報格差がある中での競争原理の一方的展開から地域社会を
守ることが地方国立大の使命」と訴えている。
具体的には、各大学のキャンパスに高速、大容量の通信インフラを整備した
「地域交流センター」を設置。教育や研究成果を大学間だけでなく、地域の企
業や学校、自治体に提供するテレビ会議ネットワークなどを構築するほか、個
人のパソコンや携帯電話からも接続可能な相互交流を目指している。
例えば、有機農法や樹木の立ち枯れ現象などに関するある大学の研究成果を
各地の地域交流センターに放映。農家や自治体関係者に直接データを提供し、参加者同士も各地域の取り組みなどを情報交換することを想定している。
文科省は、トップ30大学への重点投資や大学数の削減など競争原理の導入を
重視した政策を打ち出している。鹿児島大の田中学長らは同省に提言書を提出。
「競争は当然だが、地域社会全体の活性化も必要」と一県一大学の有用性を強
調し、国立大の再編や地方移管の動きの再考を求めた。
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