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『熊本日日新聞』「射程」2001年10月18日付

<射程> 学問への情熱

 ノーベル賞受賞者を五十年で三十人という目標を掲げる政府に「学術活動を 理解していない。不見識きわまりない」、産学連携には「日本の産業が振興しないのは研究者の能力、創造力が足りないから。大学の先生を下僕として使おうというのはけしからん」。ノーベル化学賞を受ける野依(のより)良治・名古屋大教授が政府や産業界にかみついた。
 「産学協同粉砕」をスローガンにした学生運動から三十年余り。産学連携は時流となった。改革を迫られている産業界、大学ともに手を携えなければ生き 残りは難しいとの背景がある。それは地域活性化のためにも有効な手だてであ り、必ずしも否定はできないところだ。
 ただ、野依さんの言葉が新鮮に響くのは、教育と研究という大学の原点に立 ち返った真摯(しんし)な姿勢がうかがえるからだろう。功名心に駆られたり 権力におもねたり、体のいい物分かりのよさを諫(いさ)めているようにも感 じられる。
 ハッパをかけられた政府や産業界だけでなく大学も含めて、それぞれの立場と本来の役割を顧みることを忘れるべきではないだろう。象牙(ぞうげ)の塔 にこもってはならないが、真理を追求する学問への情熱が果実となり、結果と して産業界や私たちの暮らしに生かされることになる。

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☆<射程> 学問への情熱
  2001.10.19  [he-forum 2718] 熊本日日新聞10/18
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