『読売新聞』(Yomiuri On-Line)2001年10月16日付
野依さん痛烈、国の教育・産学協同バッサリ
「科学技術創造立国のために理科を学べ、というのはおかしい」「大学はもっ
と産業界に貢献せよ、というが間違っている」――ノーベル化学賞の受賞が決
まった名古屋大大学院の野依(のより)良治教授(63)が16日、日本化学会の次期会長として東京・神田駿河台の同学会本部内で記者会見し、国の教育、
産業行政を痛烈に批判した。
会見に現れた野依教授は、「受賞決定後、あらゆる質問を受け、あらゆるこ とを暴露された」と周囲を笑わせた。だが、昨今の「理科離れ」や「産学協同」 について質問が飛ぶと、とたんに厳しい表情に。
理科離れの風潮については、「われわれ研究者はもちろん、マスコミや行政
も、一般の人が理科に興味を持つよう努力してこなかったのが原因。理科は国
のために学ぶのではなく、自然や宇宙の仕組みに興味を持ち、それを知ること
で、人間が幸せに生きていくために学ぶもの」と述べた。
政府の総合科学技術会議が設けた「50年間でノーベル賞30人」の目標に
ついては、「国がそんなことを言うのは不見識きわまりない」と強く批判。 「ノーベル賞はオリンピックの金メダルとは違う。選考機関がどの分野を重要
と認めるかはきわめて主観的なことで、研究者の努力だけではどうにもならな
い」とした。
必要性が叫ばれている産学協同についても、「大学が何か隠し球を持ってい て、それを産業界に渡せば一気に事業化できる、と思ったら大間違いだ。日本 の産業に元気がないのは、創造力が足りないからだ」とバッサリ切り捨てた。
野依教授は今年3月、日本化学会の次期会長に選出され、来年3月から1年 間、会長を務める。 -- 教育や産業行政に対し苦言を述べるノーベル化学賞の受賞が決まった野依良 治・名古屋大大学院教授
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