『東京新聞』2001年10月8日付  

「一県一大学」こだわらず 『改革方針』遠山文科相に聞く

 生き残りへ役割を精査

 文部科学省が今年六月に経済財政諮問会議に出した「大学(国立大学)の構造 改革の方針」が大学関係者に波紋を広げている。「再編・統合を大胆に進める」 「国公私トップ30を世界最高水準に育成」などの表現から、少数の大学以外は 切り捨てられるのでは、という不安の声も。改革を急ぐ文科省の「真意」はど こにあるのか、遠山敦子文科相に聞いた。
 (加古陽治)

 ――今、なぜ国立大の構造改革が必要なのか
 「暗礁に乗り上げた産業界から"突破口"をつくるには大学だということで、 期待が高まっている。そこに(聖域なき)構造改革という大きな動きが出てきた。 経済財政諮問会議が骨太の方針をつくることになり、同時並行的に、大学を構 造改革の一つとして考えざるを得なかった」  ――小泉首相の指示は  「民営化という議論があったので、国立の重要性を申し上げたところ、『今 のまま全部残るのはどうか。個性がある所だけ残るべきでは』と言われた。そ こで国民が望む改革という角度で考え、方針ができた。総理には『大変いい。 頑張ってくれ』と言われた」

 ――大胆な再編や統合はなぜ必要なのか
 「九十九国立大はそれなりの役割を果たしてきたが、例えば、単科の医科大 学や教員養成系の大学が、本当に国際競争力を持つ大学なのか。統合・再編で 足腰の強い大学になる方が、生き残れる時代になった」

 ――「一県一国立大」「一県一医学部」の政策を転換するのか
 「一県一大学にこだわる必要のない地域もあるかもしれないし、分野によっ は県域を超えて合体してもいい。大原則を変えたというより、あるべき方向に 踏み出すということだ。地方から国立大がなくなると、短絡的に考えないでほ しい」

 ――トップ30は重点投資を進めるという趣旨か
 「そこよりも『第三者評価による競争原理の導入』という部分を読んでほし い。トップ30は象徴的な意味で、大学ではなく分野別に評価する。優れた教育 をしているところにも光を当てる必要がある。外国のランキングには無責任な ものがある。IMD(国際経営開発研究所)のランキング(四十九カ国中『大学教育』 で日本が最下位)なんかむちゃくちゃだ」

 ――なぜ国立だけに多額の国費を投入するのか  「日本の高等教育への支出は非常に少ない。私学助成も増やさないと。ただ (教員や医師などの)計画的な人材養成、先端的な学術研究、地域での高等教育 機会の提供などは国立大の使命。大学は国の骨格を築く存在だから、どの国の 設置形態も国公立が主体だ。果たすべき役割を精選し、力を強化する必要があ る。(方針は)厳しく響いたかもしれないが、今の日本は大きな構造改革を迫ら れている。大学だけが旧来のままでいいということはない」

 「大学の生き残りには統合・再編で足腰を強くする必要がある」と語る遠山 文科相=東京・霞が関の文科省で


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☆「一県一大学」こだわらず 『改革方針』遠山文科相に聞く
2001. 10.8 [he-forum 2669] 東京新聞10/08