『南日本新聞』社説 2001年10月6日付

【国立大法人化】国の関与が見え隠れ

 国立大学を法人化した場合の機構・運営の骨格を検討していた文部科学省の 調査検討会議が中間報告をまとめた。遠山敦子文科相の「構造改革の方針」 (遠山プラン)と合わせ、これで大学改革に関する国の基本的な枠組みが固まっ た。
 予算や組織などに関する国の規制を緩め、大学の裁量を大幅に拡大する。一 方で各大学に対する第三者機関の評価によって運営交付金など国からの資源配 分を増減し、大学間の競争を促す。このふたつを柱にしている。
 国が大学をあらゆる面で縛り付けていた規制を緩和し、日常の運営は大学に 任せようという大学の自主性、自律性を広げるものなら歓迎したい。しかし、 中間報告では自主性、自律性を具体的に保証するかは、いまひとつ明確でない。
 今回の改革論議は、行革論議で浮上した「独立行政法人」に大学もはめ込も うとしたところから始まった。独法化を、公務員定数削減の数あわせに使おう という考えが根底にあった。  だが、行政の企画立案機能と実施機能を分離し、企画立案を文科省が、実施 を独立行政法人が担当して効率化を図るという枠組みは、自ら企画立案する大 学になじむはずがない。
 中間報告は「基本的考え」のなかで「行革の視点を超えて検討した」と言っ ている。修正を加えて一定の前進も見せている。しかし、部分的、中途半端の 印象はぬぐえない。
 例えば、大臣が各大学の中期目標を策定するとしたり、中期計画を認可する など、独立行政法人の大枠がはまっていることに変わりはなかろう。
 評価結果の資源配分への反映も気になる。大学の中期目標・計画の目標達成 度で国が予算を配分する方式だが、各大学の運営交付金に評価結果をどう反映 するかは、文科相が任命する委員で構成する国立大学評価委員会の判断による。
 文科相による中期計画の承認制にせよ資源配分と評価制度のリンクにせよ、 運用しだいでは逆に文科省(国)の管理を強めることになりかねない。
 中間報告はあらゆる分野で、競争原理を導入することが柱となっており、教 育研究環境が十分でない地方の大学や小規模な大学の関係者を中心に、なお強 い反発が残っている。
 検討会議は来春に最終報告をまとめるが、制度運用の中身にまで踏み込んだ 結論を求めたい



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2001..10.6 [he-forum 2667] 南日本新聞社説10/06