北海道新聞社説10/5「国立大法人化*地方切り捨ての不安」

http://www.hokkaido-np.co.jp/News/general/0032/0032.article.shtml#200110053408

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北海道新聞社説 10月05日

「国立大法人化*地方切り捨ての不安」

国立大の法人化に向けて、組織や人事制度などを検討している文 部科学省の調査検討会議が、中間報告をまとめた。 大学の裁量を拡大する半面、評価などを通じて、逆に文部科学省 の管理が強まる余地を残している。
競争原理の導入で、地方の大学が不利になりそうな面も心配だ。
中間報告は、新しい「国立大学法人」像のポイントとして、▽民 間的発想の経営手法▽学外有識者の役員登用▽教員らの能力主義人 事▽第三者評価−などを挙げている。
大学がそれぞれ特色ある理念と目標を掲げ、国の規制に縛られず に、自主的な運営、研究、教育活動が確保できるとすれば、望まし いことだ。 例えば、単年度で費目も指定されている予算は、使途を特定せず に年度間の繰り越しを可能にする。 特許の取得・管理や研究成果の民間移転事業などを認め、外部資 金や寄付も受け入れやすくなる。
教員の公募制や年俸制が導入されれば、人材の交流から研究の活 性化につながる期待もある。 こうした規制緩和の一方で、気になるのは評価の仕組みだ。 各大学は、原則六年間の中期目標と中期計画を作成し、その達成 度が予算の配分に反映される。達成度を評価する役割は、文部科学 省の「国立大学評価委員会」が担うという。
予算配分の権限を持つ官庁が関与するのでは、客観的で公正な評 価が保障されるとは言い難い。 また、短期間で成果が上がりそうな応用研究が優遇され、基礎科 学や文化・芸術といった分野の研究がおろそかになる恐れも指摘さ れる。
中間報告で貫かれる狙いは、大学経営への競争原理の導入といえ る。そこには、地方の大学や小規模な大学への配慮が感じられない。 地方は、都市部に比べ人的資源に乏しく、産業基盤も弱い状況に 置かれている。企業や自治体の資金を得たり、収益事業を起こすの は困難だろう。 まして、地方の大学にはこれまでも、教育や研究環境の整備に十 分な投資が行われてこなかった。 文部科学省は先に、「大学の構造改革の方針」を唐突に公表し、 国立大の再編・統合や「トップ30」大学の育成を打ち出して地方の 大学や単科大にショックを与えた。 国が、高等教育の将来像を示さないまま、競争や効率化の視点の みで「改革」を図るのは容認できない。
人材育成や、地域の文化、産業活動の拠点として、地方の大学が 果たしてきた役割は小さくない。 大学側も、法人化による功罪を検証して中間報告についての意見 を述べるとともに、地元に対し自らの使命をアピールするときでは ないか。
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「国立大法人化*地方切り捨ての不安」
2001.10.5 [he-forum 2665] 北海道新聞社説10/5