独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学法人化 成否のカギは何?学長の権限強化学外人材の登
2001.10.2 [he-forum 2638] 読売新聞09/29

『読売新聞』2001年9月29日付

国立大学法人化 成否のカギは何?
学長の権限強化学外人材の登用

 国立大学の法人化に向けて文部科学省の調査検討会議(座長・長尾真京大学長)が中間報告をまとめた。

政治部 赤津 良太

 中間報告が示した「新しい国立大学法人」の姿は、一言で表すと、教育・研究両面で国際競争力を回復するため、従来の護送船団方式による横並び意識を脱して、自己責任に基づいた運営を目指すことにある。具体的には、民間的発想の経営手法、能力・業績に応じた給与システム、教育・研究実績の第三者評価の導入などだ。
 だが、大学側の意識改革を促す最大のポイントは、学長権限の強化と、学外有識者らの役員登用を制度化することだ。
 国立大学は現在、運営上の最高意思決定機関として評議会を置いているが、学部ごとの教授会の発言力が強く、評議会の意思決定を左右していると言われる。学長の権限は、かなり限定されているのが実情だ。
 そこで中間報告は、学長を経営、教育・研究双方の最終責任者と位置付け、強いリーダーシップと経営手腕の発揮を求めている。さらに、副学長を「学術研究」「財務会計」などの重要テーマごとに置き、事務組織には企画立案に参画する専門職能集団としての役割を新たに期待するなど、学長補佐機能の強化も併せて図ることにした。
 また、厳しい財政下で公的支援を得るには、納税者である国民の理解が不可欠だとして、学外の有識者らを役員などの運営組織に迎え、「社会に開かれた大学」の実現に取り組むことを示した。大学運営に新風を吹き込むと同時に、法人化で役割が増大する経営管理に通じた人材を確保する狙いからだ。
 だが、調査検討会議では、学長中心の運営組織に異論は少なかったものの、組織の具体論に入ると意見が分かれ、3案を併記するにとどまった。
 焦点は、大学運営の両輪となる経営と教育・研究を審議する組織形態の在り方だ。国立大学法人では、戦略的な予算配分、外部資金の活用、研究成果の移転事業など、経営面での裁量が大幅に拡大する。これに伴い、新たに経営責任の問題が浮上した。
 これまでの議論では、役員と学外有識者らが経営面、各部局代表者らが教育・研究面の責任を負う「分離」案が有力だ。両者の「一体化」案は、「教育や研究に学外者が介入すべきでない」「教員が経営責任を負うのはおかしい」など、国立大学協会関係者を中心に抵抗が強い。
 ただ、分離案も両者の意見が対立した場合に、学内が混乱に陥る懸念がある。
 公務員型を前提にしてきた教職員の身分も、非公務員型を求める意見が巻き返し、具体論には踏み込めていない。
 背景には、法律による身分保障と年功序列を基本とする公務員制度が、大学から競争意識と活力を奪ったとの見方がある。実際、産学連携で設立したベンチャー企業にさえ、兼職・兼業の制約から大学研究者を派遣するのは難しい。非公務員型であれば、研究者個人が特許料などの収益を得ることも容易で、研究開発の活性化を促す起爆剤として期待が大きい。
 国立大学法人化の成否は、まさに人事、組織の制度設計にかかっている。調査検討会議は、今年度中に最終報告をまとめる。国立大学にとっては痛みの伴う厳しい改革を迫られることになりそうだが、新たな大学像を築く好機として、前向きな取り組みを期待したい。


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