独行法反対首都圏ネットワーク


☆大学の法人化―これが規制緩和なのか 
200110.1 [he-forum 2630] 大学の法人化―これが規制緩和なのか(10/1朝日新聞社説)

大学の法人化―これが規制緩和なのか

朝日新聞ニュース速報

 国立大学を国の行政組織から切り離し、独立の法人にする。新制大学の発足以来、50余年ぶりの大改革だ。
 その制度設計にあたる文部科学省の調査検討会議が、中間報告をまとめた。
 規制を緩めるかわりに、民間企業のように目標と計画を立て、成果を評価する。
 行政改革から生まれた独立行政法人の制度をそのまま大学にあてはめることはしない。大学の自主性・自律性を尊重し、大学の改革と新生を目指すという。
 その言葉通りなら賛成だ。学科の新設さえ文科省の許しが必要な現状を変え、人事や予算、組織などの面で大学の裁量を広げる。それは今度の改革の大前提である。
 しかし、自主性・自律性は十分に尊重されているだろうか。報告を読むと首をかしげたくなる。まず、大学を社会に開くための学外者の参画制度である。
 閉鎖的な大学に外の意見を反映させることは必要だ。しかし、役員会や評議会などの運営組織に入れる学外者を「相当程度」とするか「若干名」とするか、といったことまで文科省があらかじめ決めようとするのはおかしい。各大学に任せるべきだ。
 大切なのは人選だ。学外者といっても、他大学の関係者、自治体の首長、企業経営者、卒業生などさまざまである。その具体像について報告は書いていない。「国民や社会の意見の反映」を目指すというなら、その検討こそ先ではないか。
 法人化により大学は、中期目標とその達成に向けた中期計画を立てることになる。 ところが報告によると、目標は、大学が提案するものの、文科相が策定する。計画を認可するのも文科相だ。これでは独立行政法人の枠組みを、なお超えていない。政府と一線を画して真理を探究する大学にはふさわしくない。再考を求めたい。
 中期目標・計画の達成度を総合的に評価するのは、有識者からなる国立大学評価委員会だ。委員会は大きな権限を持つ。評価は予算の配分に反映されるし、委員会は実際の配分についても意見を述べられる。
 委員会は文科省に置かれる。委員を選ぶのも文科省だという。しかも、どんな手続きで選ぶのか、委員会の評価をもとに配分する資金はどのくらいかも明らかでない。
 運営組織の型を決め、目標と予算配分を文科省が押さえる。運用次第では規制緩和どころか規制強化になりかねない。
 国立大学制度をどう考えるかは、専門的で難しい。大学の中でさえ関心を持たない人が多いときく。研究室にこもり、社会の中の大学の役割を考えずにいることが、現在の沈滞を生んだのではないか。
 法人化は大学の体質を変える転機だ。それは好機にもなれば危機にもなる。
 文科省は国立大の再編・統合を大胆に進める「遠山プラン」を掲げている。大学の存在意義を訴えようとするなら、まず学内での検討と活発な議論が必要だ。
[2001-10-01-00:25]


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