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☆「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」に対する意見(東京大学)
  200110.30東京大学21世紀学術経営戦略会議
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   「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」
    に対する意見の提出について(報告)



 このことについて、過日開催のUT21会議での議論を踏まえ,総
長室において修文の上,10月26日付けで、下記のとおり文部科
学省大学改革推進室へ提出いたしましたので、ご報告いたします。



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   「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」に対する意見


                      東京大学21世紀学術経営戦略会議
                         座長  佐々木 毅


東京大学は大学院に重点を置いた「総合研究教育大学」として、世界の代表的
な大学とインターラクティブな関係を保ちつつ、未来を切り開く卓越した研究を行
い、これを反映した教育により社会をリードする優秀な人材を育成することを目
指している。そのためには、自らの果な改革によって自主性・自律性を高め、教
育研究の一層の高度化・活性化を図ることが不可欠であり、法人化が、そのた
めに検討すべき有力な選択肢の一つと考えて、本学ではこの間、望ましい法人
像について慎重に検討を進める一方、 文部科学省の国立大学等の独立行政法
人化に関する調査検討会議における議論等に、本学の意見が採り入れられるよ
う努力してきた。
 今般文部科学省より出された「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」
は、独立行政法人通則法を国立大学にそのまま適用することを避ける基本的立
場において評価できるものであり、大学の役割・立場を考慮したものであることが
うかがわれる。しかしながら、大学の自主性・自律性を高め、教育研究の一層の
高度化・活性化を図るための枠組みとしては、なお問題としなければならない点
が多く認められ、少なくとも以下のような修正が行われることが望まれる。


1. 大学は、他から与えられた業務を執行するというのではなく、自らの意思決定
を自律的に行うという意味で、立法的権能を含むものでなければならない。した
がって、新しい国立大学法人において、少なくとも法人の最も基本的な事項につ
いて決定する機関は、その執行機関から分離されるべきである。さもなければ、
意思決定と執行の緊張関係が失われ、独裁的な大学運営に陥る恐れがある。
学長の解任権を文部科学大臣が持つものとされているが(「中間報告」32頁)、
それは上記の恐れなしに大学を適切に運営することついて十分な機能を果た
すものではない。したがって、法人の最も基本的な事項についての決定(大学の
基本理念・目的を定める「憲章」の制定及び改正、ならびに学長の選考および解
任請求など)を行う機関を、執行機関の長から分離された法人の機関として設け、
大学の適切な運営が自律的に確保される制度の設計を目指すべきである。


2. 運営組織としてはB案を基本として検討すべきであると考えるが、その場合1.
に記した法人の最も基本的な事項について決定を行う機関は、評議会とするのが
適切である。


3. 「中間報告」30頁において、「憲法上保障されている学問の自由に由来する「大
学の自治」の基本は、学長、役員、部局長、教員(以下「教員等」という)の人事を
大学自身が自主的・自律的に行うことである。」と明記している。この精神を十分
生かすためには、選考に当たって外部の意見を聴取し、より総合的な判断を可能
とする仕組みを設けるとしても(「中間報告」33頁)、部局長ならびに部局教員の選
考など、部局にとって重要な人事は、部局教授会の審議を経ることを明確にすべ
きである。


4. 「中間報告」では、教職員の身分を公務員型にすべきか、非公務員型にすべき
かについては、結論が得られていない。いずれの形が取られるとしても、長期的
視野に立った自由な研究教育活動ならびに国立大学法人の安定した活動を保障
するために、現行の教育公務員特例法が認めているような大学教員の任用等の
手続きに関して十分な配慮をした制度設計が必要である。また事務組織の活性化
とともに職員の雇用の安定について配慮した制度を設計すべきである。


5. 学長の選考方法については、法制度上の手続としては、社会の意見を反映さ
せることを要件とするほかは、現行の教育公務員特例法第4条と同様の緩やかな
規制にとどめ、具体的実施方法については各大学の多様性を認めるべきである。


6. 「中間報告」22頁には、「大学の教育研究の自主性・自律性をできるだけ尊重
する観点から、中期目標についても、各大学が作成し、文部科学大臣が認可す
るなどとすべき、との一部の意見もある」と記載されているが、中期目標・中期計
画とも、各大学が作成し、文部科学大臣が認可する制度とすべきである。


7. 国立大学評価委員会(仮称)については、「中間報告」中ではその性格付けが
明確になっていない。この委員会が評価システムにおいて極めて重要な位置を
占めることに鑑み、本委員会の任務、権限等について、今後さらに詳しい検討を
すべきである。特に評価結果を運営費交付金等に反映させる仕組みについては、
慎重な議論が必要であり、透明性の高い制度の設計が肝要である。


8. 「中間報告」では競争原理の導入に第三者評価を考えているが、教育研究分
野における自由な競争は限られた評価機関の評価だけでなく、大学相互及び社
会との情報交換によって形成されるべきであり、「競争原理は自己評価を経た積
極的な情報公開によって促進される」という視点を重要なものとして追加すべき
である。こうした情報公開は、社会と大学の協調関係を促進し、自己の個性を生
かした大学選択の機会を学生に与える意味でも重要である。


9. 「中間報告」39頁に運営費交付金の算出方法に関する記述があるが、運営
費交付金は、言うまでもなく大学の活動の基盤を支える資金であり、高等教育
及び学術研究を担う大学の安定的活動を保証するために最低限必要な基盤経
費については、「競争的」観点とは別に、安定的に交付される仕組みが不可欠
である。


10. 附置研究所・センターは、国全体の学術推進の戦略に基づき、それらの目的
の達成に最適な大学に附置されたものであり、役割、性格にふさわしい安定的
な基盤経費が確保されるような制度設計がなされるべきである