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2001年9月27日付「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)
              への私たちの意見
                           2001年10月29日

              千葉大学文学部・文学研究科 将来構想委員会
              千葉大学理学部 教育・研究体制検討委員会

1.意見発表に至る経過
 千葉大学文学部教授会は、1999年7月22日に「国立大学の独立行政法人化に反対する」声明(http://www.l.chiba-u.ac.jp/jp/agency.html)を発して以来、同法人化が日本の高等教育の将来に憂慮すべき事態を招く可能性を強調し、翌2000年6月8日付で国立大学協会への意見書を提出するなど、関係各機関への働きかけを進めてきた。さらに2001年7月26日付で「大学の『構造改革』に関する文学部の見解」(http://www.l.chiba-u.ac.jp/jp/communique01jul26.html)を教授会名で公表し、文部科学省による「大学(国立大学)の構造改革の方針」(いわゆる「遠山プラン」)ならびに「国立大学等独立行政法人化調査検討会議中間報告事務局原案」(「中間報告のとりまとめの方向(案)」)への具体的な危惧を表明した。
 また千葉大学理学部教授会においても、1999年以降、国立大学の独立行政法人化問題について議論を進め、時宜に応じてその見解を公表してきた。即ち、199年9月24日に「国立大学の独立行政法人化問題に関する文部省案と国大協案の比較・検討と千葉大学理学部有志の見解」(http://www.s.chiba-u.ac.jp/dokuho2/bunsho1.html)を発表した。さらに2001年6月11日には教授会名により、「国立大学の独立行政法人化問題に関する千葉大学理学部の見解」(http://www.s.chiba-u.ac.jp/dokuho4/kenkai.htmlを示し、それぞれ深い懸念を表明した。そして、「国立大学等独立行政法人化調査検討会議中間報告事務局原案」に対しても、その分析・検討を継続してきた。

 今回2001年9月27日付で文部科学省の国立大学等独立行政法人化調査検討会議が「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)[以下、『中間報告』と略す]を公表するという事態に対して、千葉大学文学部教授会と同理学部教授会は、それぞれの下部機関である文学部・文学研究科将来構想委員会と理学部教育・研究体制検討委員会において、『中間報告』に対する検討を慎重に行った。その結果、『中間報告』の示す内容は、「大学の特性に配慮しつつ国立大学を法人化する」とはいうものの、基本的には独立行政法人通則法に基づく独立行政法人のしくみを大学に適用するものに他ならず、従来から私たちが指摘してきた疑問や問題点に応えるものとは言い難いという認識で両委員会は一致するに至った。
 独立行政法人化問題は個別部局の問題ではなく、文科系、理科系を超えた全大学の問題であることに鑑み、千葉大学文学部と理学部は、共同して『中間報告』に対する見解を表明することが時宜に適うと判断したのである。

2.基本的見解
 大学における教育研究を発展させる基礎には、「学問の自由」とそれを保証する「大学の自治」がなければならない。ところが『中間報告』が示す方向は、(1)政府の求める経済的利益に大学を従属させるおそれがぬぐい去れない、(2)各大学の中期目標を文部科学大臣が策定し、同省の評価委員会が達成度を評価し、運営交付金の配分に反映させる仕組であるなど、文部科学省による大学への統制強化ではないか、と危惧される。さらに(3)学長権限が強大化する一方で教授会の権限は縮小され限定されるなど、「学問の自由」の尊重と「学術の中心」としての大学という位置づけから見て、問題点が多いと言わざるを得ない。加えて、大学の効率的運営、経営努力を強く求める一方で、公立・私立大学を含めて国の財政負担責任が不明確になっている点も問題である。
 国立大学協会会長が『中間報告』公表後の2001年10月1日付の談話において、『中間報告』を「更に検討を要する」ものとされていることは、私達の認識と一致している。新聞各紙も、“独立行政法人の仕組は、時々の政府と一線を画して真理を探求する大学にはふさわしくない”との報道・評論を行なっていることに、文部科学省は耳を傾けるべきであると考える。

3.具体的な意見
@「中間報告」20頁には国が策定する「グランドデザインや政策目標」をふまえて各大学が理念や目標を策定するとあるが、「グランドデザインや政策目標」自体が具体的ではなく不明瞭であり、また「国策大学」に堕さないようにするための歯止めが不可欠である。
A「中間報告」22頁には文部科学大臣が各大学の「中期目標を策定する」とあるが、他方で「中期目標についても、各大学が作成し、文部科学大臣が認可するなどとすべき、との一部の意見もある」とされている。大学が業務の「執行」だけでなく目標の「策定」をも自律的に行うという趣旨からして、中期目標・計画とも各大学が作成し、文部科学大臣が認可する制度にすべきである。
B「中間報告」24頁には、各大学の評価を行うため文部科学省内に国立大学評価委員会(仮称)を設け、この機関が運営費交付金算定等について評価を行うこととされているが、この委員会の責任と権限について具体的に明確にすべきである。
C「中間報告」25頁には、運営費交付金等の算定にあたっては評価結果を反映させると書かれている。さらに、参考資料として添付された「中期目標・中期計画の記載実例」では、数値目標が多数例示されており、評価が数値目標を中心に行われる可能性がある。これは長期的見地から基礎科学を推進させることを著しく 困難にする危険がある。運営費交付金は、評価結果とは独立に、基礎科学の推進や高等教育機関の安定的活動の保障として準備されるべきである。とりわけ基礎的実験装置の維持・管理等については、この点は重視されなければならない。
D組織業務に関して、法人の基本的事項に関する方針を決定する機関は、執行機関である法人の長から分離すべきである。そうでなければ、学長による意志決定と執行が恣意的に行われるおそれがある。両者を分離することにより執行機関に対するチェック機能がはじめて働くことになる。
E「中間報告」9頁にある「監事」については、その監査業務は教育研究には関与することなくあくまでも「経営面」の業務に限るべきであり、またその任免には大学の意見が取り入れられるべきである。
F「中間報告」31ー32頁にある学長選考方法については、外部の意見を聴取するなどの仕組を設けるとしても、選考は大学内部での投票を経ることを原則として考えるべきである。構成員によって信任されない者は「学術の中心」の長にはふさわしいとは言えない。この点については教育公務員特例法4条と同様に緩やかな規定とし、大学の多様性を認めるべきである。
G部局長や部局教員の選考などに関しては、「中間報告」30頁に記された「大学の自治」の精神を生かして、部局教授会の審議を経ることを明確にするべきである。これら教員の任免に関して学長の恣意性が入る可能性は排除すべきである。
H教員の身分保障については、ユネスコの「教員の地位に関する勧告」にも示されるように、学問の自由との関連で十分な配慮が必要である。教育公務員特例法で認められている保障は、引き続き法的根拠を与えられなければならない。
I「中間報告」40頁にある学生納付金については、それが不当に高くなったり、不均等になったりすることのないように配慮することが必要であり、そのための具体的な歯止めを設けるべきである。


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独行法反対首都圏ネットワーク                               

☆2001年9月27日付「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告) への私たちの意見(千葉大文学部・理学部)
                200.1030 千葉大大学文学部・理学部.
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