☆「中間報告」に対するパブリックコメント
200110.30 京都大学職員組合
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1. 氏 名:京都大学職員組中央執行委員会委員長
堀 和生
2. 会社名/部署名又は学校名:京都大学経済学部
3. 住 所: 京都市左京区吉田本町
京都大学職員組合内
4. 電話番号: 075−761−8916
5. 意 見:
文部科学省調査検討会議「中間報告」に対するパブリックコメント
2001.10.29 京都大学職員組合
このたびまとめられた中間報告「新しい『国立大学法人』像について」に求められ
ている意見募集に対して以下の通り意見を述べます。
貴組織が中間報告を発表して以来1ヶ月、私たちは組合組織のさまざまなところで
読み、討議してきました。
中間報告では基本的な問題として、戦前の軍国主義的教育、戦争に従属させられた
学問研究・大学の歴史の反省の上に成立した憲法、教育基本法、学校教育法に明記さ
れた【学問の自由】、【教育の使命】、【大学の使命】がことごとく放擲され、将来
の日本の建設に資する高邁な理想もなく、今日の日本がおかれた経済事情に短絡的に
左右されそうな大学をめざす内容になっています。最終報告では戦前、戦後を通し
て、長年積み上げられてきた日本の英知の共同体にふさわしい大学を展望していただ
きたいと切に願うものです。
1.「前提3:『自主性・自律性』」に関して。大学については憲法23条の『学問
の自由』に基づいて確立された制度的慣行である『大学の自治』を土台にすべきで
す。閣議決定を振りかざさず、憲法を土台に議論を展開していただきたいと思いま
す。自主性や自律性は大学の自治という言葉を媒介にしなければ、大学に関しては何
の意味も持ちえません。大学の自治を排除するためにもうけた概念と疑われても仕方
がないのではないでしょうか。IV人事制度2.制度設計(2)選考・任免(大学における
人事の自主性・自律性)の中で「憲法上保障されている学問の自由に由来する『大学
の自治』の基本は……」と学問の自由・大学の自治に言及されていますが、これは当
然「基本的考え方・検討の前提」の中心に据えられるべきでしょう。これと関連し
て、9月初めの「未定稿」のときにはあった「教員の採用・昇任等は、教育公務員特
例法の精神を踏まえつつ」の重要な記述が雲散霧消してしまっていますが、特別な意
図を感じさせます。
2.学外の方々の意見を採り入れる方途を制度的に組み込むことに異存はありません
が、1の趣旨からして、大学の自治を生かすよう、学外者は非常勤的な役割にとどめ
るべきだと考えます。学外者が常勤である必要は全くありません。「軍人」、中央官
僚、警察、経済団体、学識者と学外者にはいろいろ考えられますが、いずれにも自由
な学問の発展に寄与される方々はおられそうもありません。
3.学外者に広く門戸を開放するわりに、内部の構成員の民主主義的な活力へは挑戦
的かつ高圧的な記述に満ちています。「トップダウンによる意志決定の仕組みを確立
する」、「学部長等の部局長は、学長が任免すること」、「監事は大学の業務の適切
な執行を担保するという業務の性質上、文部科学大臣が任命、解任する」等々。学問
・研究に「支配・被支配」の機能を持ち込むことは自殺行為というべきではないで
しょうか。
4.大学の中には、さまざまな組織、京都大学であれば、附属図書館、学部附属の病
院、各研究機関があります。それらの中には、民間に似たようなものがあってアウト
ソーシングが一見可能であるような組織がありますが、それらには大学の教育・研究
・医療に固有の働きがあり、収支を越えた機能を持つなど、利用料などを主な収入源
とするような民間化や外注化にはなじみません。しかし中間報告ではそれらがどうな
るかについて基本的なところさえも言及されておらず(病院、図書館、博物館な
ど)、それらに所属する職員は不安を感じています。最終報告では、それらの果たす
役割や、研究・教育の機能と調和する収入のあり方について詳しく展開していただき
たい。
5.国立大学法人の根拠法について従来、通則法にはなじまないという批判があっ
て、国立大学法人が構想されてきました。最終報告では「国立大学法人法」、「国立
大学法」は「通則法」の下にはない別個の法律であることを明記すべきです。
6.以下に京大職組の構成員で作っている階層・職層部会で検討された個別の問題点
の指摘や要望などを列挙します。是非ご検討下さい。
【事務職員に関して】
1.事務職員を企画立案に参画させるという方向は、事務職員の大学における位置づ
けの明確化として一定の評価はできる。しかし、学問の自由を支える大学の自治への
参加の具体的な方向はいっこうに見えてこない。大学の自治機構(組織)への参加に
ついてもシステムとして明らかにしていただきたい。
2.企画立案への参画と同時に、それ以上に充実すべき課題として、学生・患者等へ
の利用者サービス業務を充実すべきだと思うが、そのことへの言及が全くないという
のはどういうことか。
3.大学生の不登校、閉じこもり等が社会問題ともなっている現実がある。そのよう
な学生への対応は、本来専門職的な知識を有したものが、丁寧に対応すべきことであ
り、企画立案への職員の参画と同時にそのような職員の専門性についても言及すべき
ではないか。
4.職員の給与について、成果、業績が反映されるような制度の導入を述べている
が、本来身分が安定的に保障されてこそ、落ち着いて仕事が継続できるのである。競
争よりもむしろ、研修による力量の向上をこそ図るべきであり、それこそが大学にふ
さわしいやり方ではないか。
大学の特性を生かした研修を、事務システムの中で提案すべきではないか。
5.大学間の異動等、職員の交流、及び現行の身分の保障原則を踏まえ、職員の身分
としては、公務員型を確保すべきである。
6.全体として、職員が、大学運営に参画するという積極的部分も見いだされるが、
一方では、大学運営に拘わらない職種について、見直しによる、アウトソーシングの
方向が見られるように思える。教育研究に直接関わる、学生窓口業務、図書業務、教
室事務等の充実についても言及すべきである。
【技術職員に関して】
以下の原則を明確にしていただきたい。
○教職員の構成は、教員・事務・技術の3つが協業と分業の体制で職種を構成するべ
きである。
○科学技術基本計画でも謳われている、技術職員を計画的に確保充実するべきであ
る。
○省令による技術部の設置及び職務内容等の整備と処遇の改善を追求するべきであ
る。
○人事制度の独立及び研修実施体制の整備並びに予算措置を講じるべきである。
○大学の技術の専門性・高度性に応じた評価システムを構築するべきである。
【定員外職員に関して】
貴報告中では、日々雇用の定員外職員の処遇が不明であり、定員外職員の中に強い
雇用不安(雇用継続問題)がある。法人化に際しては、長期にわたり恒常的業務に従
事してきた日々雇用定員外職員の実態を正当に評価し、正規職員(常勤職員)化で抜
本的な解決(解消)の方向を打ち出すことが必要であり、決して「新たな定員外」の
ような職員枠を作らないようにしてほしい。正規職員化のための人件費の財源確保と
身分保障を図ることを是非明記していただきたい。
【時間雇用職員に関して】
過去・現在・未来にわたり国立大学の担っている役割は大きく、経済性・効率性の
み
で評価されるものではないと思います。
「中間報告」では、大学の教育・研究・医療を支えている教員以外の職員についての
認識が少なく、特に定員外職員については一切触れられていません。「教員以外の職
員等」に含まれているのでしょうか。法人化を機に切捨てられるのではないかと多く
の定員外職員が不安を訴えています。大学は定員削減により、合理化・効率化してき
ました。そしてその穴を埋めるべく増えつづけた定員外職員は既に必要不可欠な職員
となっています。
京都大学には1700人あまりの時間雇用職員(全国では約15,000人)が2−4頭打ち、
ボーナス・退職金なし、病休・夏季休暇・諸手当もない劣悪な条件で働いています。
毎年更新を繰り返し10年、20年を越える職員が存在しているのですから「臨時的・季
節的」な雇用ではないことを認め、法人化にあたっては定員内職員と同様に処遇し人
件費の確保と身分保障を盛り込んでください。アウトソーシングや業務委託では業務
の混乱やサービスの低下が問題になっており、大学の使命に支障が出ることは想像に
難くありません。必要な労働力は削るべきではなく、たとえ短時間の雇用であっても
欧米のような「同一労働・同一賃金」の原則に沿った制度で責任を持った雇用をする
べきです。
今回の法人化で今まで切り捨てられてきた「定員外職員(日々雇用・時間雇用職
員)」問題の解決と雇用制度の充実をはかるべきではないでしょうか。そこに働く教
職員が大切にされてこそ、教育・研究・医療が充実発展し、「新しい国立大学」が実
現するのではないでしょうか。
【女性部会】
以下の原則を明確にしていただきたい。
1) 法人移行にあたっては、現在の職員全員(非常勤職員も含めて)の雇用を確保す
る。
2) 法人移行にあたっては、労働条件の切り下げを行わない。
3) 給与に関して
使用者、労組、従事者による職務評価委員会を設置するなどをして、「同一価値労働
同一賃金(=ペイエクイティ)」の原則に則って教員以外の大学事務職員の職務を評
価する職務評価システムすなわち、人物評価でなく、職の評価システムを確立し、
それにしたがって、報酬を決めるシステムを確立する。