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10月19日の国立大学理学部長会議において決議されたパブリックコメントは以下
の通りです。このコメントは、25日、文部科学省に送付されています。

<新しい「国立大学法人」像について>(中間報告)についての見解

国立大学理学部長会議

 文部科学省は、9月、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議の中間報告<新しい「国立大学法人」像について>を発表しました。国立大学理学部長会議は、平成11年11月に声明「危うし!日本の基礎科学 −国立大学の独立行政法人化を憂う−」を公表して以来、国立大学の法人化問題について事態の推移を見守るとともに
、この声明の立場から検討を重ねてきました。
 今回の中間報告書は、国立大学の法人化にとって重要な契機となるものであるにも係わらず、大学における教育の理念について十分に語られることはなく、研究においても科学の実利的成果のみに重点が置かれています。この立場は、「基礎科学は、息の長い研究の推進が可能な環境下で、自由な発想のもとで自律的に追求されることによってのみ大きな成果が期待できる学問領域であり、その成果は数十年後あるいはもっと後の社会を支える中核技術を生み出す可能性を持つものです」(声明)という理学の教育と研究に携わる私たちの立場と大きな隔たりがあります。
   以下の3点は、中間報告の中で私たちが理学の教育研究の発展を阻害する可能性があると最も懸念している点です。

 1. 中期目標は、教育研究の具体的方向性を定め、大学の業績を評価する際の主な基準とされているものですが、中間報告では「文部科学大臣が策定する」とされています。これにより、大学における教育研究の方向付けが、その時々の政府の方針に左右されるおそれがあります。これは、すでに昨今の研究資金の特定分野への集中的投資にも現れています。本来、大学における教育や研究は、政府の政策的サイクルよりも長い時間をかけて行われるべきものです。特に、息の長い研究の推進が必要な理学のような基礎科学にとっては、研究政策の変更により長期的な進歩が阻害されるおそれがあると言えます。中期目標の策定に当たっては、教育研究者の自由な発想や、大学人自身による企画立案を尊重して「各大学自身が作成する」とすべきと考えます。

 2. 基礎科学の長期的な進歩のためには、基盤的な研究資金が保証されることが不可欠です。しかし、中間報告では、大学評価委員会が大学に対する評価を行い、「評価結果は次期以降の中期目標期間における運営交付金の算定に反映させる」となっています。大学における教育と研究の評価の方法は、我が国においてはまだ確立しておらず、試行錯誤の段階であると言っても過言ではありません。このような状況下で、特に研究者あるいは研究機関の間に競争原理が持ち込まれ、短期間における論文数などといった数値的基準のみに依存した評価が行われるならば、研究が短期的な視野に偏り、基礎科学の研究にとって大きな弊害が起こり得ます。これは、我が国の科学・技術の発展を長期的な視野に立って見た場合、大きな損失であると言えます。
   私たちは、研究者が息の長い基礎研究を持続することができる資金を運営交付金で保証されることを強く要望します。競争的な研究資金としては、科学研究費補助金などの制度が、現在、確立しており、これらを充実させることが最も大事であると考えています。

3. 大学の附置研究所は、本来、それが設置されている大学の直接の目的、目標に基づいたものではなく、学術会議などの答申に基づき国全体の学術の推進のため設置されたものであり、全国の理学の研究者にとって共同研究の拠点として大きな役割を果たしています。しかし、中間報告では、附置研究所のそのような役割は十分評価されず、本来の使命とは乖離した扱いがなされています。附置研究所に対しては、国全体の学術の推進のために設置されたことを明確にし、個別の大学の基盤的経費とは別の経費の配分システムをつくる必要があると考えます。また、大学や研究科に設置されている研究センターなどについても、国の学術推進の方策として設置されているものについては、附置研と同様の予算的措置がとられるべきであると考えます。

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独行法反対首都圏ネットワーク                               

☆<新しい「国立大学法人」像について>(中間報告)についての見解(国立大学理学部長会議)
  200110.26 独行法反対首都圏ネット事務局
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