独行法反対首都圏ネットワーク


☆国立大学法人化 ゴールではなく出発点だ
2001. 9.29 [he-forum 2619]2001年09月29日 毎日新聞 社説

2001年09月29日 毎日新聞 社説
 
 国立大学法人化 ゴールではなく出発点だ


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 文部科学省の「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」が出した中間報告は、「国立大学に法人格を与え、自主性・自律性を尊重しつつ、説明責任と競争原理の視点から教育研究の世界に第三者評価システムを確立、機動的・戦略的大学運営の実現を図る」というものだ。
 独立行政法人とは異質の「国立大学法人」に向け、一歩踏み出したと言っていいだろう。高等教育政策の重要な転換である。しかしいくつかの点でグレーゾーンを残し、運用によっては右にも左にも行くあいまいさを包含している。先送りした課題も少なくない。さらなる吟味、検討が必要だ。
 検討会議の議論は、初めから困難を抱えていた。新しい国立大学像を目指すにあたり、政府が導入を決めた「独立行政法人」制度を前提とすることを余儀なくされたからである。独立行政法人は行政改革の一環として持ち出された。その通則法は、主務大臣による機関の長の任命、中期目標の指示、目標達成度の評価を通じて、基本的に、独立行政法人が政府の指揮命令下にあることをうたう。
国立大学がそれになじまないことは、明らかだろう。国が大学に直接干渉して、服従させることも可能な関係にしている先進国は、どこにもない。いかに国の関与を限定して、自主性・自律性を基本とする大学にふさわしい法人を作り上げるかが課題となった。
 だが、一方で大学の特性にこだわりすぎると、従来の閉鎖的な居眠り大学を温存することにもつながる。国費を投入する以上、大学側には国民に対する説明責任があり、いかに効果的に使われたかのチェックも不可欠だ。その点での新たな制度設計も必要になる。
 中間報告は、国との関係では、まず法人の長である学長を、学内の選考機関の選考を経たあとに文部科学相が任命する手続きを取ることにした。妥当である。
 中期目標の設定を、通則法での文科相による一方的指示から、各大学の提案をもとに策定するとしたのも一歩前進だ。が、大学の自主性・自律性を尊重する観点を貫くならば、大学が作成し、文科相が認可する方式が望ましい。
 大学に第三者評価システムを導入した意義は大きい。現実にどれだけ機能するかは分からないが、通則法によらずとも、これからの時代には専門機関による事後チェックが必要だ。時間をかけて、周到に準備を進めてほしい。
 大学のマネジメントシステムや、公務員か否かの教職員の身分などは先送りとなった。評価結果を国費配分にどう具体的に反映させるかなど関心の高い問題も不透明で、詰めなければならない。
 独立行政法人のもとでの論議にはやはり限界がある。報告は過渡的なもので、改革のゴールではなく出発点と考えるべきだろう。検討会議とは別に、21世紀の高等教育(私立も含む)をどうするのかの視点から、グローバルプランを作り上げるための議論を深めていく必要がある。大学人は今こそ、積極的に声を上げてほしい。
(毎日新聞 09-28-23:25)


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