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☆国立大改革 法人化へ規制緩和 文科省に中間報告 交付金業績で配分 
20019.28 . [he-forum 2608] 西日本新聞09/28

『西日本新聞』2001年9月28日付

国立大改革 法人化へ規制緩和 文科省に中間報告 交付金業績で配分

 国立大学の法人化の枠組みを検討していた文部科学省の調査検討会議(主査・長尾真京都大学長)は二十七日、国立大を大学ごとに法人化し、競争原理を導入することで活性化を図る中間報告を同省に提出した。国立大をめぐる規制を大幅に緩和し、民間的な経営手法を取り入れることを盛り込んでいる。これにより国立大は、国の直轄運営を離れ、独立行政法人の一形態である「国立大学法人」に移行することが固まった。 文科省は年度内にまとまる最終報告を受け、法人化のための法案を作成する。実際に法人への移行が始まるのは二〇〇四年度からの見通し。
 中間報告は「個性豊かで活力に富み、国際競争力のある大学づくり」が法人化の基本としている。国立大学法人には国から運営費交付金を支給するが、大学の提案に沿って文科相が中期目標(期間六年)を策定。これに基づいて第三者機関が業績を評価し、評価結果によって次期の交付金の額を増減させる。
 具体的な規制緩和策として(1)学科は大学の判断で新設が可能(2)教育・研究に関連する場合は収益事業を認める(3)教職員の兼職・兼業を条件付きで認める(4)企業や自治体からの外部資金・寄付金を受け入れやすくする―などを挙げた。また副学長や監事に学外者を登用するよう求めている。
 教職員の身分については決着がつかず、意思決定機関のあり方についても複数の案を併記。最終報告に持ち越した。

大学が安泰とは限らぬ 工藤智規・文科省高等教育局長の話

 十八歳人口の減少を考えると、国公私立を問わず大学経営は大変厳しい。国立大はこれまで教育研究などの役割を果たし信頼も得てきたが、大学の努力が足りず、教育姿勢のアピールが受験生に届かなくては、存亡を考えなければならないことになるだろう。国立に限らず、大学は未来永劫(えいごう)安泰とは限らない。大学の特色をどう出すか、これから腕の見せどころではないか。

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「自主性保障見えず」 国立大法人化中間報告 九州の大学に戸惑い

 文部科学省の調査検討会議が二十七日まとめた国立大学の法人化に関する中間報告に対し、九州の国立大では戸惑いや不満が渦巻いた。各大学は、改革の重要性を認めつつも、改革の「理念」が示されていない点や、小さな地方大学に不利に作用しかねない「競争原理」の導入を不安視する声が相次いだ。
 同省によると、法人化の動きに対応し、経営基盤を強化しようと、九州では十五の国立大のうち四組・八大学が、再編・統合で合意、または協議中。
 中間報告を「改革ありきでビジョンが示されていない」と批判するのは、宮崎大との統合に向け協議中の宮崎医科大・森満保学長。「明確な理念なしに、改革の道筋が先に提示されるのは矛盾している」と指摘。各大学の中期計画を文科相が認可し、目標達成度を国からの資金配分に反映する方針が打ち出されたことについては「実際には大学の創造性をしぼませ、管理を強めようとしている。大学の取り組みは、研究結果によって評価すべきだ」と注文した。
 各分野で競争原理を導入する点について、鹿児島大の田中弘允学長は「既に資産、人的資源が集まる都会の大学と、比較的小さい地方の大学が同じ土俵に立って競争はできない」と批判。「地方大学の衰退は、地域の衰退、ひいては国力の衰退につながる。大学改革は必要だが、改革の道筋は別にあるはずだ」と強調した。

 熊本大の江口吾朗学長も「法人の自主性・自律性を保障する国の財政支援が得られるのか、中間報告では見えない」と懸念した。
 一方、中間報告に理解を示したのは、九州芸工大と統合することで合意した九州大。「(産学連携など)産業界から大学への厳しい要請を考えれば、改革に抵抗はできない」と矢田俊文副学長。九大はキャンパス移転事業を推進中だが、巨額の資金が必要な移転や付属病院整備は国の責任で整備することが盛り込まれ「移転をスムーズに進められる」と歓迎している。

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国立大法人化報告 大学間競争の時代へ 国の管理強化の側面も

 【解説】文部科学省の調査検討会議の中間報告で示された国立大法人化と、それに伴う大学の規制緩和は、これまで窮屈ではあるが居心地のいい“ぬるま湯”にいたともいわれる全国九十九の国立大学を競争の荒海に押し出すことになる。
 文科省が描く国立大の未来像は、競争によって生じる各大学の個性化だ。大学に学科改編や人事・財政面での裁量権を与えることで、画一的で変化に乏しい教育から、各大学の特徴を生かした研究・教育に脱皮し、産業界が求める「国際競争力の向上」につながることを期待している。文科省は、業績評価によって交付金に差を付ける“信賞必罰”で、大学のしりをたたく構えだ。
 しかし、最先端の科学研究なら評価しやすいだろうが、時間のかかる基礎研究や、教員養成など地域の「人づくり」といった地味な役割が、正当に位置づけられ評価されるか、中間報告でははっきりしない。
 企業からの研究委託費や寄付金が都市部の有名大学に集中し、経営基盤に格差が出ることも予想される。地方の大学関係者は「競争の結果、地方国立大が淘汰(とうた)されるのでは」との危ぐを抱いている。
 また、規制緩和の陰で、文科省が大学への管理を強めようとしているのも気がかりだ。交付金の格差付けは大学をコントロールする道具になりうる。国が不適任と認める学長に対しては、文科相が大学に解任審査を求める権限まで盛り込んでいる。大学の自治、学問の自由が侵されないか、不安が残る。
 ただ、これまで自分たちの研究・教育が税金を使っていることに無自覚で、その目的や成果について国民への説明責任を果たしてこなかった国立大も多いのではないか。法人化を契機に、すべての国立大が「自分たちはこの地域で何をすべきか」という“存在意義”を問い直すこと。それが国立大学改革の出発点だ。 (東京報道部・永田 健)


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