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☆島大と島根医大統合/地域での存在感が大切だ
2001.9.24 [he-forum 2588] 山陰中央新報社説09/24.
『山陰中央新報』社説 2001年9月24日付
島大と島根医大統合/地域での存在感が大切だ
島根大学と島根医科大学が統合に向けた協議を開始する。国立大学の再編・統合を促す文部科学省の方針に沿ったもので、二〇〇三年十月に統合を実現した上、〇四年四月から新大学の第一期生受け入れを目指す。
国立大学の独立行政法人化をにらんだ再編統合の動きが出る中で、中国地方の国立大学では両大学が初めて統合に向けた協議に乗り出す。
国立大学を含め、大学を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。少子化で大学受験人口が減少する中で国の財政も危機的状況に直面している。その一方で高校卒業後二人に一人近くが大学に進学する大衆化も進んでいる。
そうした中で文部科学省は、国立大学の削減を内容とする大学の構造改革を打ち出した。遠山文部科学相の名前を取って遠山プランと呼ばれている。
その中では、一県一大学にこだわらず広域化を含めた国立大学の再編統合を大胆に進め、特に単科大学についてはその必要性を強調している。その一方では世界水準に対応できる大学として国公私立トップ三〇の選定を急ぐなど、大学間の選別姿勢を強めている。
大学の在り方が見直される中でその考え方は、市場主義に基づいている。市場主義は競争によって効率性を高めようとする考え方であり、それが大学の構造改革に適用された場合、教育研究の充実という本来の目的より経営の効率性が優先される可能性が強い。
島根大と島根医科大の統合機運は、今年六月に遠山プランが公表されてから一気に高まった。特に単科大学については現在のままの存続が難しくなったことから「来るべきものが来た」(下山誠・島根医大学長)と受け止められている。
同じ島根県内にあり一方は総合大学、もう一方は単科大学という相互に補完し合える立場も文部科学省の指導方針と合致した。
統合は、両大学が対等の立場で一緒になる新設校方式。統合後の新大学の名称や本部所在地、カリキュラムなどは今後の協議で決めるが、キャンパスや学部構成は現状のまま引き継がれる。
統合のメリットとして島大側は「教育研究の基盤が強化される」(吉川通彦学長)とし、島根医大の下山学長は「医学部教育だけではできない心理学や倫理学を修得することで、医療人として視野を広げることができる」と期待している。
しかし、これらはどちらかというと、表向きのエール交換という気がしないでもない。内実は「島大のある松江市と島根医大がある出雲市では距離がある」(下山学長)と統合後の一体性に疑問を投げ掛ける。島大の吉川学長も「新しい大学の理念が遠山プランには欠けている」と不満を漏らす。
遠山プランには大学側に有無を言わせず統合を迫る強い姿勢が込められている。その圧力が両大学を接近させたと言えるが、問題はその圧力をどう受け止めるかである。
国の財政負担を軽減するための経営効率化だけでは、大学を荒廃させるのではないか。その地域で本当に必要とされ、地域に貢献できる地方大学像をどう描いていくか。大学の統合を推進する市場主義は、地域ニーズにこたえるため、大学の知的資源を競わせるものでなければならない。
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