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☆大学再編始動= 私立大 破綻回避へ経営者交代 国立大
思惑の違い表面化
2001.[he-forum 2585] 日本経済新聞09/2
『日本経済新聞』2001年9月23日付
大学再編始動
大学の統廃合が現実のものになってきた。私立大学では、四年制大学同士の統合が注目を浴び、赤字経営の責任をとって開校からわずか二年目で経営陣が交代した大学に関係者はショックを受けた。再編・統合ムードが支配する国立大では流れに乗り遅れまいと激震が続くが、協議を続けてきた二校による主導権争いが表面化するなど、大学間、学部間の思惑の違いが目立つ。大学再編の現場を追った。
私立大 破綻回避へ経営者交代
二〇〇二年四月に予定する大阪国際大学(大阪府枚方市)と大阪国際女子大学(同・守口市)の統合が私大関係者の関心を集めている。
両校は学校法人・大阪国際学園が経営する兄弟校だが、女子大の人間科学部を国際大学に新設する形で一本化。数年後に現在の在籍学生が卒業した時点で女子大を廃止する。キャンパスなどは現状通りとはいえ、私立大学同士が統合し、一方を廃止するのは極めてまれな事態だ。
「女子大は学生確保が困難。統合して共学化するとともに、教育内容も大幅に見直して統合の実をあげたい」。金子敦郎・大阪国際大学学長は、背景には十八歳人口の現象と女子大離れがあることを認める。
九月初め、私立大学関係者に衝撃が走った。広島安芸女子大学(広島県・坂町)を経営する学校法人・広島女子商学園が、福島県の専門学校経営者を新理事長に迎え入れ、この経営者の資金支援で再建を目指すと発表したが、同女子大は二〇〇〇年四月に短大から四年制に転換したばかりの新設大学だったからだ。
安芸女子大は、定員百九十五人に対し、入学者は初年度三十二人、今春も三十八人にすぎず、赤字経営に陥っていた。
「夏ごろ支援要請が来たが断った。こんなに早く事態が進むとは思わなかった」と、ある私立大学学長は驚く。「文部科学省が認可した大学がわずか二年でこんなことになるとは・・・。大学破綻時代の幕開けと受け止めている」と大手予備校幹部。
文部科学省の小野元之次官は「四年制に転換してすぐ経営が苦しいというのは困る。審査が甘すぎたと言う批判はあるかもしれない」と話しており、同省の設置認可の姿勢も問われそうだ。
環境が厳しさを増す中、有力私大百二十一校が加盟する私立大学連盟は、大学の破綻処理のルール作りの真っ最中。原案文書では、「合併を目指すときに前説明は理事会、評議会、学校の役職者、組合、同窓会、学生・父母の順」「倒産処理は再建をめざすならば民事再生法」といった文言が並ぶが、関係者は「まだ内容は流動的」としており、最終報告の内容に関心が集まる。
国立大 思惑の違い表面化
「これでは宮崎医科大学による宮崎大学の丸のみだ!」。宮崎大の教員から不満の声が上がった。九月五日、宮崎医科大学の森満保学長が私案と断りながらも、一九九九年から宮崎大学、宮崎医科大学が続けてきた統合問題の検討内容を、「本学のメリットはほとんど見当たらない」と一蹴、両大学は生命科学に特化した国内唯一の総合医科大学に再編・統合すべきだと提案したのだ。
私案は、宮崎大学の農学部を食資源学部、工学部を医療工学・人間工学部に移行させるなど、医科大主導の大胆な内容。医科大を、農、工、教育文化に次ぐ第四の学部として受け入れようとしていた宮崎大には寝耳に水だった。
二神光次宮崎大学長は「これまでの協議をベースに議論を続ける」と不快感を隠さないが、森満学長は「もっと良い案があれば宮崎大は提示してほしい」と意欲十分で、今後の統合協議は波乱含みだ。
文部科学省によると、再編・統合で合意、または協議中の国立大学は二十五校。全国立大の四分の一に達する。同省が六月の「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)で「国立大学の再編・統合を大胆に進める」と宣言、来年度概算要求ヒアリングで、個別大学に再編・統合に対する方針をただしたこともあって、国立大学には再編・統合なしに生き残れないというムードが一気に広まった。
だが、統合問題が現実味を増すと共に、大学間、学部間の様々な思惑の違いが表面化している。再編統合に向けた検討開始で合意している富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学の場合でも、医薬大内部には慎重論が残る。文部科学省は「数合わせの統合は意味がない。それぞれの持ち味を生かした将来計画を考えてほしい」(小野次官)と強調するが、統合の「理念」が問われている。
国立大学の統合・再編へ向けた取り組み状況 (文部科学省調べ、9月21日現在)
▽統合に向けて合意