独行法反対首都圏ネットワーク

我々の目指す大学像: 文科省『大学構造改革計画』による大学破壊に対抗して 
2001.9.8 [he-forum 2518] 我々の目指す大学像: 文科省『大学構造改革計画』による大学破壊に対抗して

独行法反対首都圏ネット事務局です。

下記の文章(配信の了解をえましたので、投稿します。

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我々の目指す大学像: 文科省『大学構造改革計画』による大学破壊に対抗して

独立行政法人問題千葉大学情報センター事務局
東職改革問題特別委員会
独法化反対宮崎大学実行委員会

  国立大学独法化問題は、文科省による『大学構造改革計画』(遠山プラン)によって新たな局面にはいった。すなわち、小泉改革という新自由主義改革の一翼を担うものとなったのである。この局面においては、独法化問題を新自由主義改革全体の中で捉え直し、位置づけるとともに、われわれの目指す大学像を積極的に提示することがいっそう重要になってくる。本分科会においては、対置すべき大学像について議論する。詳細な報告は当日までに準備するが、さしあたり、以下の4つの視点を提起しておきたい。

1. “まず法人化”という議論からの離脱が必要である
  「通則法による独法化には反対だが、法人化=法的人格の獲得そのものはよいことである」という議論があるが、これには重大な陥穽がある。大学自治とは大学という組織に独立な人格を認めることと対応しており、東大の東経懇報告書が指摘するとおり、現在でも大学は実質的に法人といってもよいのである。従って、法人化のためには、慣習を含めて存在する大学自治の実定法化という作業が必要となるが、「慣習も法である」ということからして、そうした作業は本来不要なのである。それにも関わらず、まず法人化が提起されているのは、大学自治の慣行を破壊することが目的であるからである。そのことを忘れて、法人化の技術的問題の検討にあれやこれやとふけってはならない。今、必要なことは、大学が抱えている諸問題を具体的に分析し、新たな大学像について社会全体の議論を巻き起こし、合意をつくりあげることである。そのためには、法人化議論先行の現状から離脱せねばならない。

2. 分権的大学システムの構築が構想されなければならない

  トップ30体制への統合再編こそ、硬直化したピラミッド体制の構築であり、教育の機会均等を破壊し、教育研究の発展を阻害することは既に多くの人々が指摘しているとおりである。我々はこれに対して、1県1国立総合大学と多様な単科大学を軸とする分権的大学システムを提示する。巨大大学については適正規模まで分散化することも検討されてよい。こうして、明治以来主として設立順によって形成された現在の大学序列(前近代的な格付け)を解体することが必要である。また、公立大学、私立大学という設置目的、建学の理念に応じた形態の大学との連携のあり方についても、分権化という観点から検討しなければならない。

  これと同時に、共同性を保障する大学システムが構想されねばならない。自由な科学研究は、研究者の自由な協力と相互批判をとおして発展する。そのために、若手研究者を広く含む研究者の共同体を形成し、それとともに、大学間の共同性を促進する仕組みを作らねばならない。つまり、競争原理に代わる分権と共同性が大学システムの基本原理となる。

3.大学自治の再建策が具体的に提示されねばならない
  (1)自治には、(a)自治が可能な規模(数的だけでなく地理的にも)、(b)重層的な自治を保証する機構、(c)自治を支える組織的内実、(d)自治をチェックする機構、が必要である。現在の大学自治においては、既にこの4要素とも不全となっていることを自覚しなければならない。即ち、大学自治の再建が必要なのである。(a)多くのところで既に適正規模を越え、近年の統合路線(例えば、理+工=理工学部、総合大学院、連合大学院など.)が拍車をかけている。(b)例えば部局と評議会、学長などの組織関係は現実と乖離した不合理な状態に放置されて来たが、そこに近年の強権的運営が接ぎ木されているために、機能不全となっている。(c)事務機構の脆弱性と文科省への隷属性、財政的従属性のために自治を物質的に支えることができない。(d)大学自治は、諸階層の自治の緊張関係(相互批判)のうえに成り立つ。職員の自治機能は労働組合運動によって代行されてきた面があるが、組合活動の停滞によって皆無となりつつある。学生の自治と、それに基づく異議申し立ては、大学に対する社会からの要求をも反映したものであったが、これも殆ど機能していない。

  (2)具体的には、まず、教育研究の基礎組織を適正規模で再度設定し直す。すべての教員は、いずれかの基礎組織に所属する。ここは、平等な権利を有する教員によって構成され、企画(立案)・執行(教育研究)・評価が一体的にすすめられる自治基礎単位である。予算や人事の基礎単位でもある。同時に、ここは事務・技術等のいわゆる支援機構の基礎組織となる。なお、自治単位の適正規模とは直接民主主義が機能する範囲であるが、概ね学科/学部であろう。

  (3)全学運営機構を、基礎組織における自治権限の合理的委譲形態として構築する。全学運営機構では、意思決定組織と執行組織の分立体制をとる。このさい、執行組織に対してチェック・アンド・バランスの機能を埋め込むことが必要である。執行組織の強化のためには、大学固有の職員人事制の確立が不可欠である。また、職員層、学生層における固有の意思形成システムについても検討されなければならない。

4.自治を保証し、十全に機能させる大学財政が不可欠である

  (1)経費は、経常経費(積算制)、基盤拡充経費(概算要求制)、研究教育経費(公募制)の3種類によって、構成される。経常経費は、日常的教育研究、各機関の運営に必要な経費を具体的かつ合理的に積算したものである。基盤拡充経費は、新組織の設立、設備の新・改築等にあてるものであり、概算要求されるものである。研究教育経費は、日常的のもの以外の計画的な教育研究活動経費であり、基本的には各種科研費のように公募制とする。

  (2)予算決定システムとしては、経常経費については、大学間の格差なしに合理的に積算する。基盤拡充経費については、文科省から独立した透明性の高い審査機関で決定する。研究教育経費は、公募制を原則として、教員(個人、グループ)、基礎組織、各機関が申請する。これについても、文科省から独立した透明性の高い審査機関で決定する。

  (3)審査機関としては、大学政策委員会(仮称、ある種の独立した行政委員会のひとつ、高等教育政策全般を扱う。後述)の機能の一部をあてる。これにともない、大学評価・学位授与機構のなかの評価部門を廃止し、学位授与機構にもどる。本来の評価は、大学基準協会での検討に委ね、その場合の評価はいわゆる資源配分とは結合させない。

  (4)大学政策委員会(仮称)は、文科省からは独立した機関とし、高等教育政策全般を立案・調整する機関とする。同委員会は、大学管理者による学問研究の内容への容喙の禁止、研究内容による解雇等の不利益取り扱いの禁止、高等教育への普遍的アクセスの保障、適正な研究条件(財政)の保障、等を機能とする。


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