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高知大と高知医大統合へ 15年10月めど 
2001.9.5 [he-forum 2488] 高知新聞09/05

『高知新聞』2001年9月5日付

高知大と高知医大統合へ 15年10月めど

 高知大(高知市曙町二丁目、山本晋平学長)と高知医大(南国市岡豊町、池田久男学長)は四日までに、平成十五年十月にも統合する方針を固めた。六日に統合の正式協議に移るための合意書を締結。組織体制や新大学の名称、本部所在地など枠組みづくりに向けた具体的な協議に入る。全国各地で進む国立大の統合が、本県でも現実化。生き残りをかけた両大学の動きは、県内の他大学にも大きな影響を与えそうだ。
 両大学はこれまで、学長レベルで統合問題について意見交換してきたが、八月に入って、両学長が統合に向けた取り組みを進めることを確認するなど急展開。高知大は八月二十二日の評議会で、高知医大も四日の教授会で、両大学間での正式な協議に入ることを了承した。
 統合には、その前年度の夏に予算の概算要求が必要で、文部科学省との折衝期間も考慮すると、準備期間に二年は要する。このため、両大学は十五年十月の統合をめどに協議を進める。
 六日には、対等の立場で統合について協議を始める合意書を締結。月内にも統合の具体的な枠組みを決める協議に入る。高知医大の付属病院は新大学で維持する方針。
 文部科学省は統合に際して、個性的で競争力がある大学を求めており、統合新大学も、双方の専門分野を生かした新たな研究機関や研究テーマを創設するなど、特色を打ち出すものとみられる。
 今後の協議では、新大学の名称や学部構成、管理運営体制、教員配置、学長の選考方法などをめぐり、両大学の“攻防”も予想される。文部科学省は教員養成学部の縮小・再編の方針を打ち出しており、高知大教育学部の行方も注目される。
 国立大学でこれまでに統合を決めたのは、山梨大と山梨医科大、筑波大と図書館情報大。いずれも十四年十月に統合し、それぞれ山梨総合大、筑波大となる見通し。また東京水産大と東京商船大、九州大と九州芸術工科大、神戸大と神戸商船大などが、十五年十月の統合をめどに正式協議に入っている。

 競争力ある大学を

 山本晋平・高知大学長の話 統合により、両大学の得意分野を生かした新しい教育研究分野を構築し、国際競争力のある大学を目指したい。本県の中核大学がさらに大きくなり、幅広い教育研究を展開することで、本県の教育力アップにもつながる。新大学づくりは県民の意見も参考にして進めていきたい。
 行革を逆に利用

 池田久男・高知医大学長の話 最初の入学生を迎えてから23年で新しい環境に突入することはつらいが、統合の動機が行革であっても、この機会を逆にうまく利用し、大学改革を進めていきたい。両大学が自らの損得勘定のみで協議を進めてはいい大学はできないことを肝に銘じ、話し合いに入りたい。
 【解説】迫る国立大削減の波 生き残りかけて選択

 高知大と高知医大の統合が急展開した背景には、政府が強力に推進する構造改革の動きがある。「聖域なき構造改革」―。その大波は国立大にも押し寄せている。
 文部科学省は六月、「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)を発表。国立大学の再編統合を大胆に進める方針を明確に打ち出した。
 それは小泉内閣や経済財政諮問会議が強く迫る「国立大の民営化論」に対抗するため、これまでに同省が示していた独立行政法人化方針に加えて、全国九十九の国立大学を大幅に削減する姿勢を表明したものだった。
 確かに遠山プランは、同省にとって国立大を守るための“防衛線”だが、地方大学の切り捨てにもつながりかねず、地方にとっては容認し難い方針と言える。
 しかし同省の動きは早く、遠山プランが打ち出された直後の国立大学長会議では、同省の幹部が「努力が見られないと取り残さざるを得ない」「一県一大学は未来永劫(えいごう)の原則ではない」と、これまでにない強いトーンで再編の必要性を強調。地方大学は統合の道を選択せざるを得ない状況に追い込まれる格好となった。
 この遠山プランが発表されるまで、国立大学に統合の動きがなかったわけではない。国の動きからすれば、独立行政法人化の状況下でも生き残りは極めて厳しい状況になるとみられていたからだ。
 高知大は一年以上も前から、高知医大との統合を軸に学内で論議を進めていた。一方、高知医大では、国立医科大同士で統合する「医大連合構想」への参加などが浮上したが、最終的には最も現実的な路線である高知大との統合を選択した。
 こうした経緯をたどって高知大と高知医大は統合方針を固めたが、国立大の統合問題はまだ序章の段階と言える。
 遠山プランは、県域を超えた大学・学部間の再編統合も指摘。国公私立を問わず「トップ三十大学」を世界最高水準に育成する考えも打ち出している。同省には「四国は(国立大は)一つでいい」という声すらある。
 同一県内での統合の次には、より広域的な統合や新たな形態の大学づくり、さらには公立や私立との統合の動きも出てくる可能性もある。
 大学の存廃は教育ばかりでなく、地域の産業や文化の活力を大きく左右する。統合問題は単に大学間の問題ではない。地域の大きな課題であることを忘れてはならない。
 高知大と高知医大の統合について、県民はさまざまな角度から活発に提言し、大学側もその意見を積極的に集約する姿勢が求められる。県全体の英知を集め、新生大学の青写真を描きたい。(社会部・高橋誠)

 高知大 昭和二十四年、旧制高知高校、高知師範学校、高知青年師範学校が母体となって発足。平成十三年五月現在、人文、教育、理、農の四学部と大学院人文社会科学、教育学、理学、農学の四研究科(いずれも修士課程)、愛媛大学大学院連合農学研究科(博士課程)がある。学生数約四千六百人、教職員数約六百人。同年度の学部一年次入学生のうち本県出身者の占める割合は22%。
 高知医大 「一県一医大構想」のもと、昭和五十一年に開学。五十三年に初の入学式。平成十三年五月現在、医学部(医学科、看護学科)と大学院医学研究科(博士課程)、付属病院などを持つ。学生数約九百四十人、教職員数約九百人。同年度の学部一年次入学生のうち、本県出身者の占める割合は18%。


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