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県内国立大再編/地域に根差した将来構想を 
20019.5 [he-forum 2485] 北日本新聞社説09/05

『北日本新聞』社説 2001年9月5日付

県内国立大再編/地域に根差した将来構想を

 国立大学再編の動きが富山県内でも始まった。富山大、富山医科薬科大、高岡短大が、二〇〇三年度をめどに一校に再編・統合する方向で合意、今後基本構想を検討し、年内にも結論を出すという。
 国立大の大幅削減をうたう「大学の構造改革方針」(遠山プラン)への、県内からの回答である。富山大の入試合否判定ミスという事情も重なり、三大学・短大がそれぞれの思いで、再編・統合による生き残りを目指そうという判断だろう。
 経済効率に偏った遠山プランには、さまざまな疑問がある。しかし、「聖域なき構造改革」の抗しがたい現実や、少子化時代、研究、教育の将来を考えれば、国立大が新しい生き方を迫られていることは間違いない。いかに主体的に将来像を描けるかが問われる。
 「県域を超える」ことも辞さないとの文部科学省の強い姿勢の中で、県内三大学・短大が、近隣県の大学・学部との再編・統合ではなく、「一県一国立大」の方向で一致したことは、県民にとってまだしも救いなのかもしれない。地域に根差して、どんな特色ある国立大を目指すのか、県内の大学人はこれからが正念場である。
 遠山プランで多くの国立大が恐れるのは、文科省が研究分野ごとに資金を重点配分する「トップ30構想」もさることながら、大学数そのものの大幅削減である。特に教員養成系や単科大、県域を超えた再編・統合も押し付けられかねない地方大で危機感が強い。
 地方について言えば、戦後の新制大学創設以来「一県一国立大」の原則が堅持され、さらに医科大などの整備が図られてきた。それぞれ都道府県に根を下ろし、地域の文化、産業を支えてきた。遠山プランは、こうした地方大学の役割を否定することになる。
 ただ、国立大の自己改革が微温的で、時代に合わなくなってきたことは否定できない。民間企業からの研究資金が日本の大学ではなく海外の研究機関に多く注ぎ込まれたり、優秀な学生が日本の大学を素通りして米国などに向かっている現実がある。大衆化時代に、教育機能も依然として不十分である。
 「富山県内一国立大」が実現するかどうかは、今後の検討にかかっている。厳しい現実を直視して、新しい大学像を模索しなければならない。


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