☆社会人大学院―もっと工夫を凝らして
2001.9.5 [he-forum 2479] 社会人大学院―もっと工夫を凝らして(朝日新聞)
社会人大学院―もっと工夫を凝らして
朝日新聞ニュース速報
夏が去り学びの季節が戻ってきた。
このところ、大学院を新設する大学が増え、社会人の再教育に力を入れている。入試は今月中旬から始まる。
社会人特別枠の志願者は主婦のほか、会社員、公務員が多い。夜間開講するところも増え、210校を超える。講義を土曜日に集中させたり、単位を半年で取れるようにしたりと、工夫を凝らしている。
今年度の社会人大学院生は、博士課程を含めると前年度より4千人増え、3万人弱にのぼる。全大学院生のうち、14%近くを占めるまでになった。
志願者側では、年功序列制が崩れたり、リストラの不安にさらされたりして、実力を磨かねばとの思いが切実になってきた。大学側にとっては、学生が減る少子化時代を迎えて、知名度を高める必要がある。どちらも自衛の側面が強い。大学院の設置基準が緩和されたことも手伝った。
大学院の教師も試練に立たされる。ノートを読むだけの講義は通らない。受講生の方が教壇に立ち、実体験を踏まえた問題提起をして、逆に教師が刺激を受けることもしばしばのようだ。安易な取り組みでは教師も大学院も生き残れまい。
新たに「アフター5」の学びの場となってきたのが、サテライト大学院だ。駅近くや都心に進出して通いやすい。4年前には5校しかなかったが、46校に増えた。
好ましい傾向である。だが、受講者の便を考えるともっと工夫が必要だ。
例えば大阪市では、郊外に移転した大学が都心にサテライト校をつくった。これから開校するのも含めて7校あるが、梅田、中之島、難波などに散らばっている。
いくつかが同じビルに入ったり、近接したりすれば、忙しい社会人にとって受講の選択肢が広がる。単位の互換もしやすくなる。大学間の協力が求められる。
小中高の教師のリフレッシュのための大学院の活用も検討すべきだ。教育学者の佐藤学・東大教授は、教職10年目の教師の希望者全員に1年間、大学院で学ぶ機会を与えることを提案している(『教育改革をデザインする』)。傾聴に値する。
教育に必要なのは、情熱だけではない。技術や見識も求められる。佐藤教授によれば、米国では終身雇用契約を結ぶ7年目に修士の学位が要求される。だが日本で修士の資格をもつ教師は、小学校で1%、中学校で2%、高校でも8%に過ぎない。
児童・生徒数の減少に伴い、新規の教員採用数は減っており、教師の高齢化が進んでいる。少子化に合わせた教員定数の削減をやめれば、希望者への1年間のスクーリング程度は難しくあるまい。
昨年度から修士課程の1年制コースが正規に認められるようになった。運用次第だが、教え、教わることの相互交流は、大学院教育だけではなく、教育そのものを活性化させる可能性を秘めている。
[2001-09-05-00:34]
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