独行法反対首都圏ネットワーク


産学官で「シリコンバレー」を 特別シンポジウムで尾身科技相が講演

2001.8.31 [he-forum 2457] 日本工業新聞08/31

『日本工業新聞』2001年8月31日付


産学官で「シリコンバレー」を 特別シンポジウムで尾身科技相が講演


 尾身幸次・科学技術政策担当相は30日、日本工業新聞社主催の特別シンポジウム「進めよう産学連携」(後援・経済団体連合会、経済広報センター)で講演し、「現下の経済情勢では補正予算の編成は避けられない」との認識を示したうえで、地域の科学技術振興を予算の柱とする方針を明らかにした。来年度予算については「地域ブロックごとに産学連携サミットを開催する予算を盛り込む」と明言、産学官協同プロジェクトに予算を重点配分し、科学技術による“地域間競争”を促進する考えを表明した。
 講演のなかで、尾身科技相は「シリコンバレーのような産業クラスターづくりが不可欠」とし、大学の学長・総長と企業の社長・会長を交えた「産学官連携サミット」を11月19日に東京で開催するのに続き、来年度から地域ブロック単位でも展開する。
 さらに「地域科学技術の振興」を具体的に進めるため、今年度の補正予算では地域の産学官協同で行う研究プロジェクトを柱とし、これらによって「知恵を出し、工夫をした地域が伸びる。地域のベンチャー企業も創出できる」と指摘、産学連携の効果が地域経済活性化に寄与するとの見方を示した。
 シンポジウムでは講演に続いて、秋元勇巳・三菱マテリアル会長、亀井俊郎・川崎重工業相談役、阿部博之・東北大学総長、柳田博明・名古屋工業大学長によるパネルディスカッションを展開。5年間で総額24兆円規模の政府開発研究投資の使い道や、産業界と大学・研究機関の連携のあり方などについて活発に討論した。


 今回のシンポジウムには企業の研究開発者や学識経験者、政府関係者など約300人が参加。会場からも質問や意見が相次ぐなど、産学連携による“科学技術創造立国”の実現に向け、最後まで熱気に包まれた。

特別シンポジウム「進めよう産学連携」

企業に生かせ大学の頭脳−尾身科技担当相の講演要旨


 尾身幸次・科学技術担当相は30日の特別シンポジウム「進めよう 産学連携」での講演で、補正予算で地方における産学連携への研究資金投入、来年度予算でのブロックごとの産学連携サミット開催などを打ち出したほか、産学連携には企業側の弾力的な対応が不可欠と訴えた。また、企業からの受託研究での研究費への免税に関する税制を来年度から導入する考えを明らかにした。尾身・担当相講演の要旨は次の通り。
 

 【第2期科学技術基本計画】今年が初年度の第2期科学技術基本計画では立国理念として「科学技術創造立国」の実現を掲げた。そのために、5年間で第1期の36%増となる24兆円という研究開発資金を投入する。その具体的数値目標は今後50年間でノーベル賞受賞者30人。これが国家の目標だ。
 戦略的な重点分野はライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料。伸ばすところは伸ばし、抑えるところは抑える。


 【大学活性化】資金を投入すればいいというものではない。今の大学の講座制で若手研究者が能力を発揮しているか。そうではない。優秀な人は米国に行って帰ってこない。そこに問題がある。若手が最大限に能力を発揮できるものとして競争的資金制度が挙げられる。自分で研究を提案し、いいものに研究資金を出す。現在、科学技術関連予算3兆円のうち、1割の3000億円規模だが、これを5年間でさらに6000億円に拡大する。
 大学の研究が企業と結びついていないと考える人が多く、スイスの研究機関の産学連携に関する調査でも日本は49カ国中49番目だ。米国では研究成果を企業に売ってその資金をまた研究に充てている。産学で成果を拡大させる競争を行っている。それに比べると日本はものすごく遅れている。総合科学技術会議ではプロジェクトチームを作って、どうすれば産学連携が進むかを検討している。

 ここで国立大学の硬直性が問題となる。民間から資金を受けると収賄になりかねない。大学教授の兼業も人事院の許可がいるなど煩雑な手続きが必要。だから、大学が独立行政法人化するときには非公務員型にしなければならない。大学で有能な人たちもそう言っている。文部科学省は反対しており、そういう壁を破らねばならない。

 【産学連携サミット】米国には大学の特許のセールスマンが3000人いるが、日本には1人もいない。企業ももっと弾力的に大学に研究資金を投じてほしい。今、企業が出している資金は非常に少ない。これからは大学の頭脳を入れて企業も大学も両方にプラスになるに変えていかねばならない。そこで11月19日にここ経団連で、大学の学長・総長120人、企業の社長・会長120人が参加する産学連携サミットを開催する。大学側代表が吉川弘之・前日本学術会議会長、企業側が今井敬・経団連会長、仲人を私が務め、産学連携を促進させる。お互い
が顔見知りになる機会をつくるとともに、トップが号令をかけなければ、ものごとが進まない。
 【地域間競争】これを今後は全国で展開する。経済産業省の各経済産業局長をコーディネーターとして地域ブロックごとに行い、小泉内閣のいう「地域間競争」を促進させる。こうしたことで、シリコンバレーのようなクラスターをつくり、大学の水準も上げたい。来年度の予算に盛り込むことを考えている。
 地域科学技術の振興を図るために、大学発ベンチャー1000社という計画もあるが、具体的な政策として、地域の産学連携プロジェクト推進を補正予算の柱にしたい。例えば、1つのプロジェクトに1億円出すとして、さあどう対応する
このなかから、連携が生まれ、全体として日本の水準が上がる。産学の連携という鉄砲に予算という弾を込める。ぜひ大いに頑張ってほしい。
 【沖縄大学院大学】私が沖縄担当ということもあり、沖縄に日本最高、世界でも最高水準の大学院大学をつくる。教授100人に学生400人。いずれも半分が外国人。そして講義も打ち合わせもすべて英語で行う。日本で一番いい大学をつくる。


 【パネルへの期待】産学の連携を日本中に広め、経済活性化にもつながるようにする。そのための政策をいろいろと考えている。きょうのこのパネルディスカッションで出た意見も政策の中に取り入れていきたい。この1〜2年くらいの間に科学技術分野の体制を変える運動をしたい。


目次に戻る

東職ホームページに戻る