独行法反対首都圏ネットワーク

河合塾シンポ、一傍聴者のメモ.
2001.8.24 [he-forum 2431] 河合塾シンポ傍聴者のメモ.

河合塾シンポ、一傍聴者のメモ

日時    2001年8月23日15時30分〜17時30分
場所    河合塾名古屋スタジオ
出席者  奈良国立博物館館長 杉長敬治氏
        経済産業研究所 澤昭裕氏
        文部科学省 杉野剛氏
        河合塾文化教育研究所所長 丹羽健夫氏
司会    河合塾国語科教師 牧野剛氏


司会: まず独立行政法人化された奈良国立博物館から現状についてのお話を。

杉長: 現在は収入を得ることに時間を取られている。職員の間でも「今日の客の入りは」といった話が大きなウエイトを占めている。国立博物館全体としての予算は三館あわせても50数億、人件費が20億、事業費が残りの30数億。そのなかで奈良向けの予算は8億、そのうちの2億を自力で稼ぐことになった。これまでは「2億稼ぐ」といったことを考える必要はなく、8億円自由に使えた。が、現在は6億しか来ない。いかにこの2億を稼ぐか、が重要である。寄付金をとったり、新聞社と協力しあったりしている。中期目標というのもかなり詳細なもので、経費節減、財務内容の明確化など。例えてみれば私はスーパーの店長で全く客商売をやっているのと同じである。中期目標のなかには、公開講座を開いた場合、客の8割が喜ぶように、というのもある。つまりトイレはきれいか、案内係りがちゃんとお辞儀をするか、といったことまで気を配らなければならなくなった。ただし、人件費はきちんとくるので給料といった点では問題ない。しかし、これでは親方日の丸といわれても仕方がなく、また他方で人件費は削れないという弱味ある。職員は公務員型で、211名削減なく5年間はいける様子である。しかし、たくさん稼いだ場合でも―まったく奈良の場合にはありそうにないが―人件費には回せず、コレクションの購入や展覧会をもう一回やる、といったことになる。しかし、現況ではマスコミ等で宣伝は行うが、東京のデパートでも常設展示室を撤廃するなど展覧会の方面を拡大する方向で考えるのは難しいだろう。
  平成14年度予算の削減がありそうだが、それで仕事の量がどうなるのかは問題だ。仕事が減らないで運営費交付金だけ減らされたらどうなるか。2億円稼ぐというのもこれまで平成7年度からの平均値で決定されている。博物館の収入は「みずもの」で、多く稼いだ年もあるし、そうでない時もある。昨年は1億4千万。理念の自由度と運営の難しさの狭間にたっている。
杉野: (遠山プランについて)―唐突にだしちゃったかなあ、と思うが、これまで各種の審議会でいろいろ考えてきたものの集約点である。科学立国のための構造改革であり、文部科学省も聖域ではない。(後は遠山プランの説明)

澤: ・・・そもそも私が大学改革の問題に係わったのは工業技術院の人事課で研究員の審査をした際に、日本の大学の博士課程をでた若い人々がアメリカの大学を卒業した人々に比べて質が悪いということが判明し、こちらから大学に注文をだした、ということからです。日本のとりわけ工学系の大学院生・研究者は末端の話ばかりをやっていて大きな問題が見えていない。それが示されているのが国際競争力といった点でのレベルの低さ。また日本の企業の資金あるいは人材が外国に流れてるといった点を危惧した。  ・・・文部科学省はこれまで私たちのやっていたことについては全く無視していたが、ここにきてこっちを見るようになった。これは文部科学省のコペルニクス的転回である。(後は『大学改革 課題と争点』の第17章の話をかいつまんで行った)

丹羽: 高校教師や生徒を大学に送りだす方からの関心は1.「トップ30大学」が一体どこになるのかということと、2.再編統合で国立大学の地図がどうかわるのか、ということだ。
  1.については、科研費配分、論文引用数、河合塾編『わかる学問最先端』などから総合トップ30をつくってみた。すると(日本地図に記す)北海道に一つ、東北大、日本海側にわずか二つ、四国に一つ、後は大都会、東海道メガロポリス〜九州までに26校といった図になる。
  2.については、国立大学が99校になったなったのは1950年前後であり、昭和35年の進学率は10%以下、現在では約50%になっている。これは昔は勉強が好きじゃなければ別に取るべき道があった、しかし、今は勉強好きじゃなくとも中卒や高卒では職もない、仕方ないから大学へいく、という状況になっているからである。この責任は国にもある。地方では一番できる子は東大や京大にいく、その次にできるやつが「おらが地方大学」へ行き、そこを卒業して、地方に就職していくのだ。地方大学の存在意義はそこにある。それを研究者養成といった点からのみ大学を切り捨てるというのはいかがなものか。

ここで学長インタヴュー

新潟大学の荒川正昭学長と鹿児島大学の田中弘允学長登場

荒川: 独法化は大学改革として前向きに捉える。評価は必要だが多元的であるべき。教育に対する評価は慎重にすべき。単科大学の再編は行われるべき。とりわけ医者や教師の養成は広い総合大学で行われるべき。

田中: 大学改革は必要だが、中央政府の支配下でおこなわれるべきではない。教育研究は自主自律でやるべきだ。(後は『文部科学教育通信』と同じ話)

ディスカッション

司会: 国立大学の独法化は行政改革、国家公務員のリストラではないか、学問や研究を無視しているのではないか、という意見がありますが、いかがですか。

杉野: 心配もしていたが、2年前に大学改革という観点から行われるということになって安心した。

澤: 行革の流れが大学改革の動きを加速した。改革は行われているのだろうが、外からは全くみえない。世界ランキングも10年前と比べて変わっていない。それゆえ何かショックを与える必要があるのではないか。

杉長: わたしたちは今、江戸末期や明治維新の時代の頃と同じ状況にあるような気がする。何もなくなってしまった、が、同時に解放された、という感じである。文部科学省や文化庁に行かなくてもよくなった。東京にいっても次に何
をやるのかを考えるためにあちこち見た方がいい、ということになった。国立大学が独法化される際にはやはり理念が必要だろう。99もあるのだから、どう言う生き残りをするのかが重要。中期目標をしっかりしないと現場が困る。

丹羽: 再び、「トップ30」とは分野別か、大学別か、理系のみか、文系もか。さらに、国立大は研究者養成大学になるのか、そういう大学が生き残ればよく、他はどうでもいいのか。

杉野: 国公私各大学が申請をして、分野別に評価するということです。透明性高く、クリアに。政府が「トップ30」を選ぶということではない。いろいろな
分野があってはじめて大学といえる。基礎・応用、文・理問わず、バランスをとって重点配分を行うということです。

丹羽: そうすると、大学がバラバラに解体されるということか。結果として大学別になるのでは?

杉野: あくまで各大学の分野別に評価ということです。複数の分野があり、そこにでこぼこがある、ということを学長、学部長、各教員が「わかる」ことを狙っています。あくまで改革のため。

丹羽: 残りの分野は?

杉野: 各大学で、いけそうだと思う分野に大学自身で重点化していくということはありえる。資金の戦略的発想をする。  後は評価の問題、地方国立大学の生き残りなど。

丹羽: 国立大学は減るのか。

杉野: 始めからいくつにしたい、といっているのではない。再編統合はしなければならず、その結果として減るのである。国立大学としての役割を果たす、その上での減少である。

杉長: 三つの博物館が一つになったわけだが、あまり状況がかわったという感じはしない。最初からゆるやかな連合体で、ということだったので。逆に三館一緒になった強みをこれから考えていくというのが現在です。

澤: 現在の地方大と医科単科大学の統合はあまりにも安易ではないか。それぞれの大学が明確なヴィジョンをもっていないことが問題。

杉野: 両者の統合はあるべき姿である。もともと医科大学ができたのは大学紛争のなか、政策的判断で、荒れている大学に医学部をおくのは良くないというところから生まれた。それゆえ自然な形での統合である。
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