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「痛み」の実像 小泉「改革」を問う
2001..8.22 [he-forum 2419] 2001年8月22日(水)「しんぶん赤旗」

2001年8月22日(水)「しんぶん赤旗」

「痛み」の実像 小泉「改革」を問う
大学教育 過度の重点化で基礎研究荒廃-「トップ30」育成、大学を選別

 「科学者が基礎研究の窒息を危ぐしている」。イギリスの科学誌『ネイチャー』(七月二十六日号)は、小泉「改革」への批判の声が日本の科学者からあがっていると報じました。
 小泉内閣が「骨太方針」を受けて決めた「科学技術に関する予算、人材の資源配分の方針」(「方針」)に対し、国立天文台や国立遺伝学研究所など先端的研究をになう大学共同利用機関の所長ら十八氏が、小泉首相に要望書を提出した(七月十一日)ことを紹介したのです。
科学の力量弱める方針

 要望書は、「方針」が、ライフサイエンス、IT、環境、ナノテクノロジー(極微小な領域をあつかう技術)の四分野を戦略的に重点化し、それ以外の広範な研究分野の「整理、合理化、削減を図る」としたことを強く批判。「過度な重点化によって、未来を作る基礎研究や広い分野の科学と人材とが荒廃してしまったら、わが国が立ち直るのは容易ではない」として、「基礎的研究の推進に充分な配慮」を求めています。
 小泉「改革」に関連して、遠山敦子文部科学相が六月に発表した「遠山プラン」で、「国公私立『トップ30』を世界最高水準に育成する」としたことについても、「ナショナリズムに根ざした近視眼的な科学研究の構造改革は、かえって日本の科学の力量を弱める」(池内了・名古屋大学教授、朝日新聞八月八日付)などの批判がでています。
 小泉「改革」は、大学教育や科学研究の予算全体を抑えながら、「産業競争力の強化」などにかなう分野の研究開発だけに予算を重点配分し、四年制大学全体の5%に満たない三十大学だけを優遇する方針をうちだしました。
 そのため、広い分野の研究や大学教育に対する国の支援が弱まることや、大多数の大学で予算が減らされることへの危ぐが、大学関係者にひろがっているのです。
 私学助成についても、「骨太方針」をうけて政府の行革推進事務局が八月十日報告した特殊法人の事業見直し案のなかで、「個人支援を重視する方向」に「あり方を見直す」とし、削減する可能性を示唆しています。
 少子化や深刻な不況のなかで、「定員割れ」による経営難にあえぐ私立大学がふえています。大学生の七割以上が学び、高等教育の重要な役割をになっている私立大学に対する国の助成を弱めることは、国民の大学教育への期待に反するもので、学費のいっそうの値上げや大学の「倒産」をもたらしかねません。
 他方で「遠山プラン」は、国立大学について、「民間的発想の経営手法の新しい法人にする」とし、「大胆な再編・統合で大幅に削減する」としています。「国立大学でも民営化できるところは民営化する」という小泉首相の国会答弁(五月)を受けて具体化されました。国立大学を民営化の方向でつくりかえ、財政基盤の弱い地方大学の多くは切り捨てられてしまいます。
金もうけを尺度にする

 六月二十七日の衆院文部科学委員会で日本共産党の石井郁子議員は、「民営化すれば大学教育を根本から変えることになる」と批判しました。これに対し、遠山文科相は「はじめに民営化ありきではない」としつつも、「国立大学の機能を民営的な視点で考えることもありうる」と答弁。
 大学の再編・統合についても、工藤智規文科省高等教育局長は、「一県に一国立大学を保障する」という戦後の新制大学発足以来の原則に「こだわらず再編・統合する」と答弁し、地方大学切り捨てを否定しませんでした。
 こうした動きに対して、国立大学長からは、「地方切り捨てでいいのか。プランには学術文化の発展を考えた部分が見えない」(愛知教育大・仲井豊学長、朝日新聞六月二十一日付)、「ある知識がどれだけお金をもうけたかを尺度にする方法だ。…教育の場に同じ(市場の競争)原理を適用していいのか」(鹿児島大・田中弘允学長、福島民報七月二十七日付)など、きびしい批判があがっています。
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