法科大学院構想 広く機運を盛り上げよ
2001.8.20 [he-forum 2407] 沖縄タイムス社説08/20.
『沖縄タイムス』社説2001年8月20日付
法科大学院構想 広く機運を盛り上げよ
沖縄の大学事情がこの数年の間に大きく変わるかもしれない。そういう予感を抱かせる構想が二つ、別々に進行している。
一つは、尾身幸次沖縄担当相が打ち出した科学技術系の大学院大学構想。もう一つは、司法制度改革との関連で琉球大学が名乗りを上げている法科大学院(ロースクール)構想である。
大学院大学構想ほどの強烈なインパクトはないが、法科大学院構想も、県内における法律教育と沖縄法曹界の将来にとって重要な意味を持つ。
政府の司法制度改革審議会は六月、法曹(裁判官、検事、弁護士)人口の増員や裁判の迅速化など、司法全般の改革を目指した最終意見を小泉純一郎首相に提出した。その中の一つが法科大学院構想である。
法科大学院は「法曹養成に特化した実践的な教育を行う大学院」のことで、既存の法律専攻の大学院とは、その性格が異なる。
将来的には、法科大学院を修了した者が原則として新司法試験の受験資格を持ち、法科大学院を修了した者の七、八割が新司法試験に合格するような制度を目指している。
法科大学院に進学しなければ、事実上、弁護士や裁判官になれないような仕組みをつくろう、というわけだ(ただし、例外規定についても検討中)。
これは大きな変化である。現在の司法試験制度からの一大転換といっていい。だが、法科大学院は、法学系の学部を抱える大学すべてに設置されるわけではない。
県内の大学で学んで司法試験を受け、合格後、法律家として県内で働く。そういう人たちが復帰後増えた。もし県内に法科大学院ができなければ、この構図が崩れ、県内の法曹界は将来、県外の法科大学院出身者だけで占められることになる。
どこの出身であれ、県内の法曹人口を確保できれば何も問題ない、という見方もあるだろう。だが、県内に法科大学院があるのとないのとでは、法曹人口の確保に影響が出てくるのは避けられない。
離島県であることに加え、歴史事情や文化背景などを考え合わせれば、県内に法科大学院を設置したほうが絶対にいい。
問題は条件整備である。
法科大学院を設置するためのハードルは高い。必要な教官数の確保など、琉大が独力で法科大学院を設置するのは相当厳しいと言われているだけに、沖縄弁護士会や他大学の協力が欠かせない。
そのための機運づくりが必要だ。
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