独行法情報速報 No.7 特集:学内評価規定.
2001.8.1 [he-forum 2340] 独行法情報速報 No.7 特集:学内評価規定
[he-forum 2340] 独行法情報速報 No.7 特集:学内評価規定
2001.8.2 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
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強まる「遠山プラン」への批判.今こそ21世紀を切り拓く大学像の提示を!
特定の経済政策に大学を従属させる「遠山プラン」
「遠山プラン」(6月11日)は、経済財政諮問会議に提出するために、わずか一週間でまとめられたことが明らかとなっている。このような拙速で、かつ経済改革に特化したプランは、しかし、大学政策が政府内部の経済政策の一環として捉えられていることを表現したものにすぎない。産業構造改革・雇用対策本部の「中間とりまとめ」(6月26日)では、「戦略基盤・融合技術分野」に資源を重点投入するための、「産官学総力戦」という用語が使用されている(
http://www.kantei.go.jp/sangyoukouzou/tyuukan/honbun.html)。また、総合規制改革会議「重点6分野に関する中間とりまとめ(案)」(2001年7月24日、
http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/006/index.html)は、教育分野を重点6分野に加え、規制改革を通じて、大学の知的資源を経済改革に転用することを訴えている。こうした産業競争力優先の「改革」を目指して、文科省と経産省は産学連携に関する報告書をまとめ、政府の総合科学技術会議は、8月3日にも「産学官連携ワーキンググループ」を発足させる予定である。こうした「改革」は、大学の組織や税制、公務員制度の改変を含む包括的な政策を目指しており、大学改革問題は質的に変化し、「構造改革」全般と関連する問題になったことを示している。
このような経過からも明らかなように、「遠山プラン」は『小泉改革』という特定の経済政策に“百年の計”ともいわれる大学政策を従属させようとするものである。だが、『小泉改革』の背骨をなす新自由主義的潮流が世界を席巻し始めて20年になるも、人類に明るい未来をもたらすものでないことは、あのジェノバサミットのすべてが示しているではないか。贔屓目に見ても一試行錯誤に過ぎない『小泉改革』に大学を従属させることは、様々な失敗から教訓を学びつつ21世紀の世界を構築する知的な力形成の場=大学を社会が失うことを意味する。
統廃合の脅しに対して各方面から批判の声
文科省は7月3日に高等教育局大学課長名で、各国立大学事務局長に、「平成14年度概算要求ヒアリングについて」という文書を送付し、7月上旬にヒアリングを開始した。そこでは、概算要求問題は実質的に、「遠山プラン」に沿った統廃合問題にすりかえられている。このヒアリングの内容は、「文科省国立大「脅し」の全容
統廃合プランで事務局長からヒアリング」(『週刊朝日』2001年8月3日号、pp.136-137.)と題する記事に記されている通りである。統廃合、地方移管を自己目的化した文科省の路線へは、マスコミからも強い批判が湧き起こっている。
「遠山プラン」の問題点については、『東京新聞』社説2001年7月23日付「すそ野あっての高峰」が、「トップ30」育成の方針に疑問を投げかけており、より全面的な批判として、『毎日新聞』社説2001年7月29日付「大学の視点から練り直せ
遠山プラン」がある。『毎日』社説で、「何より唐突であり、強圧的であり、そして財政経済面の視点に偏りすぎている」と批判し、「外部から強いられる形で出された」このプランは、「国立大学の独立行政法人化論議と同じテツを踏んでいると言わざるを得ない」「これまでの政策に対する評価、反省のないまま、大学側にのみ負担を強いる文科省の姿勢も気になる」と鋭い批判を行っている。また、総合科学技術会議の資源配分方針が7月11日に出されたが、これに対して、即日18名の大学共同利用機関所長有志や前・元所長有志が、「要望書
わが国の最近の科学技術政策について 基礎的科学研究の推進の必要性」と題する文書を記者会見で発表した
(
ttp://www.nao.ac.jp/20010711_youbousyo.txt)。 そこでは、基礎研究を軽視する政府方針に対して根源的な批判が行われている。「科学技術政策 基礎研究を軽んじないで」と題する『毎日新聞』社説2001年7月28日付においても、「いま大学は批判にさらされ、日本学術会議もその在り方が総合科技会議で検討されており、研究者は自由にものを言いづらい。それでも声を上げないと科学技術が変な方向に進む可能性がある」と述べている。
厳密な議論とそれに基づく明確な意思表明を
これほど批判が強まっているのに、大学内部における各教授会、各大学、国大協の対応はあまりに鈍い。独立行政法人化問題と「遠山プラン」に対処するため、国大協は臨時理事会(7月5日)を開催し、理事会内部に「将来構想ワーキング・グループ」を設置した。しかし、国大協理事会は、磯野理事(千葉大学長)等から出された臨時総会の開催要求を拒否し、対症療法的にしか対処しないというあいまいな態度に終始している。こうした状況に対し、7月15日には地方国立大学学長有志による「第4回学長研修会」が開催され(28大学)、臨時国大協総会の開催要求が行われている。各教授会、評議会、そして国大協は「遠山プラン」を明確に拒否するとともに、21世紀を真に切り拓く大学像について積極的に議論し、その大学像を社会に向かって提起していかねばならない。
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「千葉大学学内評価規程」の問題点
6月28日に「学内評価規程」が評議会で決定され、それに基づく「平成13年度学内評価実施要項」も7月に提示された。この「規程」「実施要項」は、昨年12月の学内評価検討委員会報告を改善し規定化したもののはずであるが、なお不備・不明確な点が多々ある。
【開示1】
「学内評価規程」 第1条 千葉大学(以下「本学」という。)の学内評価は、各部局における教育研究活動等の現状を客観的に評価することにより、本学における教育研究活動等の改善を図ることを目的とする。(中略)第4条 委員会は、5人の委員で組織する。/ 2 委員長1人及び委員4人は、学長が指名する。(中略)第6条 (略)/ 2 委員会が評価報告書を作成するに当たっては、事前に当該部局の意見を聴取し、その意見を参考にするものとする。「実施要項」 (略) 6.学内評価委員会は、学内評価報告書(案)を作成後ただちに各部局に提示して、1ヶ月を目途として意見を求める。/ 7.学内評価委員会は、各部局からの意見を勘案して、学内評価報告書を作成して学長に提出し、当該年度の任務を終える。
【開示2】 「大学評価・学位授与機構」における評価結果確定方法(「評価のプロセス」より抜粋)
(3)機構は、評価結果を確定する前に評価結果案を当該大学等に通知。大学等はこれに対する意見の申立てが可能。意見の申立てがあった場合、大学評価委員会において再審議を行った上で、最終的な評価結果を確定。
【分析】
1.この評価の目的は、あくまで「教育研究活動等の改善を図ること」とされている。しかし学内評価検討委員会報告書(以下「報告書」。「速報」No.1参照)が、学長裁量経費の配分根拠とすることを提言していたこと、批判があるにもかかわらず「教育研究高度化経費」の創設がなされ、競争的資金配分が始まろうとしている学内状況からすると、この評価結果が資金配分の基準に「目的外転用」される危険性がある。
今回の学内評価の評価項目は資金配分まで考えて検討・設定されたものではないことを考慮すれば、この「転用」はますます不合理性を拡大することになる。また今回の学内評価が、教育研究活動等の改善に資する有意義なものであるためにも、資金配分の基準と今回の評価は別のものであること、「転用」は行わないことが明確にされね
ばならない。
2.「報告書」でも「委員は学長が指名し、評議会の承認を得るものとする」とされていたのに、「学内評価規程」では、「評議会の承認」もない。「報告書」で「学長の補佐機関」としていた位置付けを今回、「学内評価規程」では明文上は避けながら、実際には踏襲したのであろうか。位置付けが明文的に示されないのは甚だよろしくない。すでに「報告書」への分析と提言(「速報」No.1)で指摘したように、評価への信頼性を高めるには、評価委員会は学内の執行機関から独立した組織であるべきである。委員会を「学長の補佐機関」とするならば、学長の恣意性を云々されるような可能性が発生し、評価の信頼性が揺らぎかねない。従って、最終的にどこに設置するべきかはなお検討の余地があるが、当面、委員会は評議会のもとの機関とすることを明記すべきである。なお、「学内評価規程」は、委員会が“だれから委嘱をうけ、誰に報告を行うのか”、“報告公表の権限と責任は、委員会にあるのか、学長にあるのか”、を明確に規定していない点でも不備なものである。
3.評価の実施方法での最大の問題点は、評価報告書(案)への各部局の意見を求め、その「意見を勘案」して委員会が報告書を作成する、としていることである。このやりかたでは評価は、委員会と各部局の意見の折衷・なれあいになるか、もしくは委員会の評価の押し付けになるか、のどちらかとなることが懸念される。評価についての意見の相違が存在する場合、双方の評価意見が公表されて、第三者による評価に委ねられるというのが、評価結果を公開する意義のひとつである。大学評価機構の評価確定・公開方法が、当該大学の「申立て」を報告書に掲載し、それへの機構の対応も載せるとしていることが(【開示2】)参照されるべきである。“評価者も評価にさらされる”システムの構築が構想されねばならない。
4.最初の試みとしてやむをえない面があるとはいえ、全部で32項目にわたる評価項目の評価を、一時に、しかも年度内に実施するという今回の計画は、作業量の点だけからみても過重である。各部局での十分な調査、慎重な評価作業という点で、欠けることがないか懸念される。評価のための評価にならないためには、どのようにするのが合理的か、あらためて検討されねばならない。
【提言】
1.各教授会、評議会で、今回の評価は、競争的資金配分の基準の作成とは別の作業であること、今回の評価結果の目的外「転用」はおこなわず、資金配分の基準の検討は別にあらためて行うことを、評価開始前に確認・決議すべきである。
2.委員会が評議会のもとにある組織であることを明確にするために、「委員は学長が指名し評議会の承認を得る」、「当該年度の評価課題は評議会が定める」、「委員会は評議会の委嘱をうけ評価の手順・評価項目等具体的事項を定める」、「委員会は評議会に報告を行う、報告をうけ学長が報告書を公開する」、などの規定を入れるという「学内評価規程」の修正を検討すべきである。
3.直ちに、委員会は「実施要項」を修正し、当該部局の「意見」・「申立て」を報告書に掲載し、それにたいする委員会の措置も載せる手続に変更すべきである。さらにこうした手続を、「実施要項」ではなく「学内評価規程」に規定するべきである。
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「重点配分委員会」設置さる
本速報で校費の重点配分に反対することを提言し続けて来たが、6月28日の評議会において「研究教育高度化経費」と言う名の10%重点配分が決定された。これに伴い、評議会のもとに重点配分委員会が発足し、7月19日第1回委員会が開催された。これについては次号で詳細な分析・検討を加えるが、当面、資料のみ開示する。
【開示3】重点配分委員会
◎ 目的:本委員会は、教育研究基盤校費における教育研究高度化経費の重点投資及び競争的環境の醸成のための経費及び間接経費の学内共通分に係る配分方針について検討し、学長に報告するものとする。
◎ 委員:伊東副学長(委員長)、南塚文学部長、松田法経学部長、田栗理学部長、福田医学研究院長、事務局長、経理部長
◎ 進め方:8月中旬 配分方針(案)作成、 8月中・下旬 学長に報告、 9月18日部局長会議で配分方針説明、 9月20日 評議会で配分方針説明・決定
【開示4】経費配分(素案)第1回委員会提出(抜粋)
◎ 当初保留額=150,755千円
◎ 配分事項 *=学長が全学に公募し、運営会議で選考
(1) 教育の活性化
学生の教育環境改善/普遍教育推進助成/ベストティチャー賞の創設/普遍教育教材(マルチメディア教材)、バーチャルユニバーシティ用教材作成助成/エリート教育等特色ある教育方法の開発助成/FD推進プロジェクト実施*
(2) 研究の活性化
若手研究者(院生含む)に対する研究助成*/共同研究推進=他機関(民間含む)との共同研究計画について*/研究高度化プロジェクト推進=特色ある研究プロジェクトについて*/レフェリージャーナル論文掲載研究者への研究助成/千葉大学研究者データベース作成・維持
(3) その他の経費:高等学校との連携推進=高校への出張講義補助/山中湖ロッジの維持・管理
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投 稿:教養教育改組問題
コア科目導入を軸とする「教養教育改組」方針が、疑問を出されながらも6月26日の大学教育委員会を経て6月28日評議会で承認された。その後、コア科目に関する二つの文書が多賀谷委員長名で各学部にだされ、各学部・学科・専攻などは10のコア科目のうちから学生に履修させたい必要単位数とコア科目を指定するという作業を行っている。このコア科目の導入とは、教養教育における一定の単位数については学生にあらかじめ学部や学科が指定したいくつかのコア科目を義務的に履修させるというシステムであって、この方式では学部や学科はサプライ側と調整してクラスごとに学生に履修すべき時間割を指定することになる。
しかし、評議会を経た7月24日開催の大学教育委員会でもコア科目の履修方法に関する「選択必修」の可能性についての質問が出るなど、依然として学内にコア科目導入をめぐって疑問があるのも事実である。9月6日・7日には、「サプライ側」と「デマンド側」の調整会議が予定され、「コア科目の内容」と「時間帯の設定」の具体化が始まる。この具体化をめぐってもさまざまな議論が予想される。コア科目の設定、その講義内容についても講義を実際に行っている教官集団・学部の意見を取り入れ、専門基礎科目との整合性など、全体的な教育システムの構築を目指して、全学的な討議と合意への努力を行うことが重要であることを強調しておきたい。
さて今回の教養教育改組計画が出された背景の一つとして、1994年教養部廃止後、専門学部・学科は自分の専門に関係した科目に偏重する傾向が強く、教養教育が弱体化していることが論じられている。現代の課題に敏感で人間性豊かな学生を育成するという普遍教育の理念に逆行し、専門分野に閉じこもった視野の狭い学生を育てているのが現状ではないかという懸念が各方面から指摘されている。このような状況を打開するためには、まず1994年以来の普遍教育を総括し、問題点を明らかにし、問題意識を全学的に共有し、改革の方向を議論する必要があるのではないか。しかし、大学教育委員会において、このような原理的な検討が殆どなされず、「普遍教育」という用語もいつの間にかうやむやのうちに用いられなくなった。その一方で改組のスケジュールのみが強調され、各学部からの疑問や意見が十分にはとりあげられなかった嫌いがある。その結果として、多くの各学部・学科では疑問や危惧が解消されず、混乱と無力感が深まっているかに見える。これは由々しき事態ではなかろうか。教育を実施するのは千葉大学教員全員なのである。実施する側に確信が乏しければ、現代の課題に敏感で人間性豊かな学生を育てる教育が可能であろうか。これからでも遅くはない。今回のコア科目導入過程で起る諸問題への柔軟な対処を行ないつつ、この数年間の普遍教育の分析と総括、教養教育はどうあるべきについて原理的な議論を、大学教育委員会が率先して行なって欲しい。(N&K)
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