独行法反対首都圏ネットワーク

日本科学者会議の『「遠山プラン」に対する見解』
2001 .7.31 [he-forum 2334]  日本科学者会議の『「遠山プラン」に対する見解』.

独行政反対首都圏ネット事務局です。

日本科学者会議事務局から、『「遠山プラン」に対する見解』を発表したこと、その 全文がホームページ(http://www.jsa.gr.jp)に掲載してあること、首都圏ネットHP とのリンク依頼そしてhe-forumへの配信の連絡と依頼を受けました。

「見解」の全文を以下に貼り付けます。ご参照下さい。

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「遠山プラン」に対する見解
                      
                   2001年7月30日
                           日 本 科 学 者 会 議


 去る6月11日、経済財政諮問会議において遠山文部科学相は、「大学(国立大 学)の構造改革の方針−活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくりの一環とし て−」および「大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プラン−大学が変 わる、日本を変える−」(いわゆる「遠山プラン」)を提出した。内容は短いもので あるが、今後の大学の在り方について言及したものとして極めて重大な内容を含んで おり、看過することはできない。
 問題点の一つは、行政改革の真のねらいである強力な中央集権化による強大な国家 づくりの中心的な役割を果たす内閣府につくられた経済財政諮問会議において、これ までの文部科学省の議論の枠を超えたわが国の国・公・私立を含む全大学の在りよう が、大学改革の基本方針として出されていることである。
 二つは、今世紀最初の国政選挙である参議院選挙を前にして、小泉政権の異常人気 を背景に、短期的な視野で考えられているにすぎない経済活性化策に直接役に立つこ とを大学に要求し、大学が本来持っている経済や産業の活性化に果たしうる真の可能 性を奪い去る再編計画を強引に推し進めようとしていることである。これはわが国の 教育・学術・文化、産業・経済、医療・福祉等を支えてきた国民的財産である大学に 対して、経済が困難な状況の中で国民がもつ期待にまったく逆行するものである。
 その三つは、格差・選別によってまともな教育もできない貧困な環境を多くの大学 に押し付け、先進資本主義諸国ではまれにみる高学費を学生に課してきた責任には全 く触れないだけでなく、わが国の大学の拡充発展を願う真摯な大学人による改革論議 を無視し、経営的発想によるスクラップ・アンド・ビルトにもとづく大学の統廃合、 独立採算性を前提にした法人化に加えて、第三者機関による評価や財政誘導による競 争によって、国公私上位30大学(5%)のみを重点化し、残りの95パーセントの 圧倒的多数の大学を淘汰するという計画を具体的に示したことである。
 ここには、憲法が保障する学問の自由、教育基本法が示す教育の目的を実現するた めに大学が高等教育機関として果たしてきた役割、世界の平和と人類の福祉のための 貢献を前進させるという姿勢が全く欠如している。単なる目先の国策遂行のための新 産業創出および人材育成機関としてしか大学を位置付けていない。「大学が変わる、 日本を変える」と言うが、真意は「大学を変えて、日本を変える」ことにあるのであ ろう。まさに、「遠山プラン」は「改革」の名のもとに国民に「痛み」を強いる政策 と軌を一にしたものである。
 国立大学の独立行政法人化の問題が「行政改革」による公務員削減の数合わせとし て出され、それが大学人による真摯な大学改革の願いとも、国民の大学に対する期待 とも無縁であったように、この「遠山プラン」も国民の求める高等教育への要求とは 逆行しており、その行き先は「大学の破壊」につながり、国民の高等教育を受ける権 利と機会を奪いかねないものである。この意味では、「遠山プラン」は大学のみでは なく国民全体にかけられた攻撃でもある。
 1998年のユネスコ「高等教育世界宣言」などに見られるように、世界的に見て も高等教育の重要性が改めて問われ、その充実が求められている。わが国で今必要な ことは、政府の示している、いわゆる「骨太」な構造改革の方向ではなく、管理統 制、格差分断、貧困放置の教育行政を改め、教育・研究環境を飛躍的に整備拡充する ことが可能な大学財政を保障することである。特に高等教育においては、文化の拠点 として、将来の発展を展望し、大学の全ての面にわたっての拡充を図ることである。
いまこそ、例の「百俵の米」が教育に対して投じられたものであったことを思い起こ すべきであろう。


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