国立大改革「遠山プラン」の波紋/地方危機感、生き残り模索.
2001.7.31 [he-forum 2328] 東奥日報07/07
『東奥日報』2001年7月7日付
特集 断面2001
国立大改革「遠山プラン」の波紋/地方危機感、生き残り模索
地方の国立大学に淘汰(とうた)の波がやってきた。「国立大の大幅削減」を旗印に、小泉純一郎首相の指示で遠山敦子文部科学相が先頭に立ってまとめられたため「遠山プラン」と呼ばれる大学改革案。各分野のトップ三十大学に予算を重点配分し、「一県一国立大」の原則にもこだわらないという。地方国立大は危機感を深め、大学統合など生き残りを模索する動きが始まっている。
▽大幅削減
五月十八日、首相官邸。国立大の民営化に積極的な小泉首相に、遠山文科相と小野元之事務次官が大学教育に国が関与する必要性を説明していた。首相が口を挟んだ。「それじゃ現状維持だ。小泉内閣は改革断行内閣なんだ」。
さらに「こんなに国立大はいるのか」「遠山さんは内閣の目玉。改革への気迫を押し出すようなプランを作ってほしい」と畳みかけた。この時、初めて遠山文科相は首相が求める改革は全国に九十九ある国立大の大幅削減なのだと悟った。
二週間後。国立大を国の直轄から切り離す法人化が大学の抵抗でなかなか進まない中、一足飛びに削減を突きつけた改革案に首相は満足げで「よくこんな短時間でまとめてくれた」。
文科省幹部も「これまでも削減したかったが、大学には物が言いづらかった。小泉改革にはだれも反対できず、大きな追い風だ」と表情は明るい。
▽過激な発言
六月中旬に東京都内で開かれた国立大学長会議の場でプランを説明した文科省の工藤智規高等教育局長は「大学の努力がない場合は見捨てざるを得ない」と突き放した。
地方大の学長たちの胸には、都市重視の小泉改革が「大都市対地方」の対立の形で表れ、地方に痛みが押し付けられるのではないかとの疑念が渦巻いた。
「一県一国立大の原則が崩れ、国立大がなくなる県も出るのか。地方が切り捨てられるのではないか」
田中弘允鹿児島大学長の質問に、工藤局長は「原則が金科玉条とされるのはおかしい。安泰ではない可能性もあると脅させていただく」とこれまでになく過激な発言で応じた。
文科省は現在の大学がなくなっても他大学の分校の形でキャンパスは残す方針だが、危機感から、地方大には早くも県内や他県の大学との自主的な統合など、生き残りを模索する動きが出始めている。
「秋までに『地方大かくあるべし』との像を示した対案を検討したい」と九州のある学長。
▽トップ30
一方、旧帝国大を中心に、研究・教育面で国公私立のトップ三十入りが確実な大学関係者の表情は対照的。国立大学長会議でも、中嶋嶺雄東京外大学長は「革命的転換と評価したい」と述べ、地方大との温度差を印象づけた。
それにしてもなぜトップ「三十」なのか。華々しく打ち上げられたものの、その中身には首をひねる関係者も多い。作成にかかわった文科省幹部は「全国の大学の5%ぐらいという感覚。10%では多いし、3%では競争にならない」
と、明確な基準があったわけではない舞台裏を明かした。
ある私大関係者は「私大は早慶など一部が入るだけだろう。基準が不明確で、文科省がアドバルーンを揚げたにすぎないのではないか」と疑問を示した。
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