<ニュース展望>現場では当分、試行錯誤か 教育改革関連3法.
2001.7.14 [he-forum 2274] <ニュース展望>現場では当分、試行錯誤か 教育改革関連3法(毎日新聞).
<ニュース展望>現場では当分、試行錯誤か 教育改革関連3法
毎日新聞ニュース速報
学校教育への奉仕活動の導入などが盛り込まれた教育改革関連3法が、先月閉会した通常国会で成立した。小中高校で通学路の清掃や花壇造りなどの社会奉仕体験活動が評価の対象となり、来春から高校2年修了時点で大学に「飛び入学」もできるようになる。ただ、教育現場からは、奉仕活動について「生徒が嫌がった時にどうするのか」など素朴な疑問があがったり、飛び入学も「生徒の資質の判断方法が難しい」との指摘が出ている。しばらく試行錯誤が続きそうだ。
改正されたのは、学校教育法、社会教育法、地方教育行政法の3法。内容は、昨年12月、教育改革国民会議がまとめた最終報告に基づいている。
焦点の社会奉仕体験活動は、児童や生徒の社会性や豊かな人間性を育むことを目的に、学校教育法に「小中高校では、児童生徒の体験的な活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動の充実に努める」と記された。当初の政府案には「ボランティア活動」の言葉はなかったが、民主党が「自発的という意味を込めるべきだ」と修正を要求、与党が応じた。
学校現場への導入時期は、多くの小中高校が既に授業の年間スケジュールを決めており、来春になりそうだ。活動に対する児童・生徒の評価について、文部科学省は「安易な点数化はしないが、指導要録に特記事項として書くようになる」と説明。一方、学校現場は総論賛成各論反対の様相だ。奉仕の心を養うことは良いが、いつどんな方法で行うかが不透明なためだ。東京都内の公立校教諭は「受験に有利という理由で参加する生徒ばかりになる」と話す。長期休暇の利用など家庭や地域の協力をいかに得るかが課題だろう。
飛び入学は、政府案では大学に加え、短大と専門学校も対象だったが、民主党が「飛び入学を材料に、短大などが生徒の青田買いに走らないか」と大学に限定するよう求め、与党が受け入れた。これまで千葉大学(物理)と名城大学(数学)だけだった飛び入学が、大学院のある全分野で認められ、同省は来春にも、適切な入試のあり方などを示す方針だ。
ところが、「パイオニア」の千葉大学も合否判定には頭を悩ませている。同大はこれまで小論文と面接、実験の3分野で判定していたが、来年度入試からは実験を廃止する。実験の経験者と未経験者では著しく結果が異なるうえ、その結果自体も生徒の資質に必ずしも直結しないからだという。資質の判定は簡単ではない。同省は「来年度から導入する大学はまだ未知数」と話し、多くの大学に普及するには時間がかかりそうだ。
問題行動を起こす児童生徒の出席停止の要件も、改正学校教育法で明確化された。要件は(1)他の児童生徒に傷害、心身の苦痛や財産上の損失を与える(2)職員に傷害または心身の苦痛を与える(3)施設や設備を損壊する(4)授業などを妨害する――の4点。今までは、同省の局長通知で要件を示していたが、法制化で適用しやすくした。
このほか、専門知識の不足や、児童や生徒とコミュニケーションを取らないなどの「不適切」な教員を、都道府県教育委員会が教員以外の職に配転させることも可能になった。同省は近く、し意的な運用を防ぐため、「判定委員会の設置」「校長や教員本人から話を聞く」などの適用条件を各教委に通知する。
今後、国会では、国立大学の独立行政法人化や、政治性を一段と帯びる教育基本法改正などが議論となる。独立行政法人化には大学側に慎重論が強く、基本法改正には公明党が反対するなど与党内でも意見が分かれている。今回の3法以上に紆余曲折がありそうだ。
[2001-07-14-00:20]
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